138帰り道
これは、ガーデンからの帰り道の会話である。
「なんか、最後、ちょっと納得いかないんだけど、まぁ、モルトをぼこしたからいいか。」
三人は並んで坂道を下っていく。ガーデンは小高い山の上にある。下り坂からはバランタインの街並みが一望でき、その奥には水平線が見えた。
もう、太陽が水平線に沈む時間だ。海も、街並みもすべて鮮やかな赤色に染まっている。
「なぁ、葵、モルトと戦ったわけだけど、これって完全に葵の私怨じゃないのか?」
その言葉に反応するようにタリスカーがキリッと竜真を睨みつける。
「竜真さん、あなたには記憶がなかったのかもしれませんが、私たちは何度も同じことを繰り返してきたんですよ。あいつのせいで。」
「まぁ、それは確かに・・・。」
そう、タリスカーもまた、ご主人様と一緒に歴史を何度もループしてきた。
「まぁ、いいじゃないの。ほら、食べる?」
葵が懐から取り出したのは橙色の果物。ミカンだ。ちなみにバランタインにはミカンに似た果物はあっても、ミカンはない。一体どこから持ってきたのか。
葵は、ミカンを竜真と、タリスカーに手渡す。
「まぁ、これで、少しは腹の虫も収まったから、いいってことよ。」
葵は、ミカンをほおばりながらも、手をあげた。
やはり、葵はミカンを食べ歩いてる姿がしっくりくる。たとえ、姿はおばあちゃんでも、その姿は昔の葵と何ら変わらない。
「なんか、葵に振り回されてる気がするな。」
竜真は、手をあげた葵の手にハイタッチをした。
「ご主人様についてきます。」
タリスカーもハイタッチする。
三人はそのまま、宿屋ブルーに戻っていく。夕日に照らされるバランタインの街並みが徐々に近づいてきた。
ここは、花と音楽と華の町、バランタイン。
三人の歩く道の両脇には、たくさんの花が咲き、街が近づくにつれて、音楽が徐々に聞こえ、人々が談笑して笑っている声が聞こえるのだ。