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136総力戦

 ガーデンの庭園である。

 バランタインの中心部、白を基調とした荘厳な宮殿が立てられ、その前には広い庭園が広がる。

 ガーデンには背の高い時計塔がある。尖塔の下には大きな鐘があり、正午になるとその鐘が時を知らせる。


 ゴーン、ゴーン、ゴーン


 すでに、伝令によって情報が伝えられていたのか、広いガーデンの庭園には、多数の兵たちが終結し、その集団の前には、奴が立っていた。


 モルトだ。


 モルトは三人の姿をみて、どうやら、すぐに先日の諜報員であることに気づいたようだ。

 頭には、目で見てわかるように、血管が浮き出ており、これまでの大海戦の失敗、絶魔終滅魔術の失敗と、怒りが頂点に来ている様子だ。


 モルトと葵が前に出る。


「ほう、貴様ら先日の大京国の犬だな。ずいぶんとやってくれたな。一応、聞いておこう。何しに来た。」

「モルトというクソ野郎を捕らえに来た。少しボコボコになってもらおうかしら。」

「ふ、ふ、ふ。は、は、は・・・、貴様は馬鹿か。はい、わかりました、とでもいうと思うたか。」

「ならば、戦って強引にでも、ボコボコにしてあげるわ。」


 モルトは、振り返り、全軍へ指示する。


「かかれ!、三人だからと侮るな。あの大海戦を敗戦に追い込んだ首謀者、そして、先日のパーティで我々の絶魔終滅魔術、神撃を阻んだ一味だ。心してかかれ!」


 敵兵が一斉に三人のほうへ向かってくる。


 一方で、葵が手を天へとかざすと、急に空が暗くなり始めた。それと同時に葵自身も淡い光を纏っていた。

 竜真は、似たような経験を何度か見た。このような天気が急変するような魔術は強力な魔術が発動する際の前兆であったりする。


 そして、予想は的中する。

 空が一瞬光ったと思うと、直後に空から一直線に閃く光が、敵兵士の中心部に直撃し、


 ドッカーン!!!


 とてつもない衝撃音が周囲に響き渡った。

 同時に衝撃波が発生し、皆、衝撃に耐える。目の前には、土煙が煙が舞い、目の前で何が起きたのかわからない。


「召喚魔術、コメット。小隕石を召喚する魔術よ。」


 隕石?と聞いて竜真は目の前を見る。徐々に土煙が収まると、ガーデンの庭園をまるごと打ちぬいたような巨大なクレーターができ、所々で地面が燃えている。敵兵たちの半分以上を吹き飛ばしたのではないか。


 モルトも健在だが怒りを露わにする。


「まったく、次から次へと。いいか、とにかく奴らを捕まえろ。生死は問わん。捕まえた奴は、一生遊んで暮らせる財宝を与えてやる。行け!」


 モルトの指示に合わせて、兵士たち全員が、三人をめがけて、一斉に進撃を開始した。


 葵は、得意の魔銃を展開し、遠方の兵士たちを狙う。タリスカーが接近戦、三人の近くまで近づいてきた兵士から剣戟を白刃取りで受け止め、力でねじ伏せる。


「葵、タリスカーの背後に敵兵、そのあと、前方から襲撃。」

「タリスカー、葵の右側面に敵、そのあと、背後から剣戟、あっ、跳んで、地面から火撃の魔術。」


 竜真は敵の行動を察知して指示を出す。自身も武士だ。指示と同時に、タリスカーの仕留め損ねた敵兵や、自身に向かってくる敵兵士を蹴散らしていく。


 葵たち三人、対、敵兵多数、数からすれば圧倒的に不利に見えるが、戦況は葵たち三人が優勢に見えた。

 だが、相手も応戦する。そして、バランタインの真髄は魔術だ。


 モルトは、ひそかに背後で魔術兵による集団魔術による魔術を発動させていた。

 だが、集団魔術を発動するとなれば、必要な気の量も尋常ではない。葵ぐらいの器量になれば、気づく。


「禁術、魔導砲ね。」

「魔導砲??、魔導砲ってあの大海戦のか?」

「このお師匠様に任せなさいな。あたしだって無駄に歴史をループしていたわけじゃないんだから。」


 敵戦力はるか向こうで淡い光が漏れている。魔術兵たちが気を錬成しているのだろう。葵は三人の前に、薄い透明な膜を魔術で展開した。


 気には、波がある。魔術を積んだ者であれば、この気が高まっていくのがわかる。気の高まりとともに、まわりに空には暗雲が立ち込める。


「そろそろね。これの後ろに隠れて。」

「おい、何だ、これ?」

「魔導鏡よ。『気』で出来たものを跳ね返すことができるのよ。いいから、見てて。」 


 敵戦力の背後のほうで何かが白く光った。魔術兵が魔導砲を放ったのだろう。

 直後、暗雲から落雷が落ちると同時に、目の前が真っ白になる。


 ズドーォーォーン!


 さらに、遅れて胸に振動が伝わるほどの轟音が襲う。

 目をゆっくりと開くと、目の前の膜につつまれて、白く輝く魔導砲が空中で止まっていた。

 ちょっと信じられないが、それが現実で起きている。


「このあと、この魔導砲を跳ね返すわ。タリスカー、そのあとは、ここ一体の敵勢力の一掃をお願い。竜真は、一緒に敵陣へ突っ込むわよ。」

「・・・。あっ、はい、わかりました。」

「・・・。あぁ。わかった。」


 タリスカーも、竜真も、目の前の光景に目を奪われていて、反応が遅れた。


 葵は、そんな竜真や、タリスカーをお構いなしに、目の前の魔導砲を跳ね返す。

 そう、跳ね返したのだ。

 跳ね返した魔導砲の軌跡が、ガーデンの庭園の地面をえぐるように、進み、目の前の兵士たちを吹っ飛ばしていく。


 直後に、竜真と葵が続き、葵は魔銃で遠方の敵を制圧、竜真が近傍の敵勢を一掃していく。


 そこに背後から別の敵兵が襲い掛かるが、竜真の研ぎ澄まされた察知能力ですでに把握済み。さっと避けると同時に蹴りで敵兵士を吹っ飛ばす。

 さらに、そこに敵兵士が襲い掛かるも、葵の放った魔銃の弾丸が直角に曲がって、敵兵士へと直撃する。


 この阿吽といもいえる呼吸、そう、なんだろうか。どこかに懐かしさを感じる。

 大京国で捕まり、初めて葵と脱走したときも、似たような感じだった。

 二人はそのままの勢いで敵中心部まで攻めていくのだ。


 そして、目の前にはモルト。今回の戦闘における総大将だ。

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