128あるループでの異変 絶魔終滅魔術、またの名を神撃
竜真は自身に二重の記憶があることを不審に思うも、モルトが神撃を発動させる時間にまで進む。
竜真と葵は、モルト主催のパーティ会場に任務で潜入していたが、諜報であることがバレ、ガーデンの外へと逃げ出していた。
二人が行きついたのは、パーティ会場から見えたガーデンの庭園だ。今もなお、多数の魔術兵たちがいる。
二人は、庭園の植え込みに隠れ、様子を見る。様子を見ていると、集まっていた魔術兵たちは、一人一人が淡い光に包まれている。気を錬成しているという証拠だ。
「ねぇ、竜真、これって、何かやばいんじゃない?」
「あぁ、わかってる。魔法陣は使えないことは分かっていたんだ。別の手段を考えていたのだろう。」
様子を見ていると、まだ背後からは衛兵が追ってきた。
「ちっ、もう来たか。」
「前進しましょう。前進あるのみよ!」
「前進って、あれだけの魔術兵がいるんだぞ。葵、やれるか?」
「当たり前じゃない。あたしの魔術の練習台にでもなってもらうわ。行くわよ。」
竜真と葵は、隠れていた植え込みから一斉に飛び出す。
が、そこに、一人の人影が見えた。そこにいたのは、どこか見覚えのある女性。バランタインには似つかわしくない大京国風の服装をしており、茶色の髪が美しく、緋色の髪飾りがそれを引き立てる。
「え、ちょっと、なんで?」
「う、うそでしょ。」
見間違うはずがない。その姿は天音だった。
「天音さん?なんでここに?」
「また同じ結末、もう飽きたから。」
「はい?結末?飽きた?」
天音は寡黙な人。質問には応えてくれるが、その意味の真意は竜真には理解できない。
少し前にも「飽きた」と言っていたが、何に飽きたのか、心あたりがない。
その間にも、異変に気づいた魔術兵たちが襲ってくる。
天音さんには色々聞きだしたいところだが、天音さんと会話するほど余裕がある状況ではない。
竜真は雷撃剣で、葵は自身の周囲に展開した多数の魔銃で、魔術兵たちを蹴散らしていく。
圧倒的に竜真と葵が優勢だ。
天音さんはといえば、その場に立ったまま、こちらの様子を見ているだけ。
だが、パーティ会場の方から声が聞こえた。それは時間切れを意味するものでもあった。
『我が、バランタインに栄光を!』
ガラスに挟まれているため、声は小さい。だが、庭園にいた竜真と葵にも確実に聞こえた。
その瞬間だ。
目の前にいた多くの魔術兵たちが一斉に強く光りはじめた。それは青黒い色へと急変し、気を錬成していた魔術兵一人一人から天へと向けて、バチバチと、音を立てながら、いくつもの青黒い光の球体が放たれた。
ここまでの展開であれば、登場人物に天音が加わっただけで、今までのループと大差はなかっただろう。
だが、ここから、この幾度となく繰り返された時間のループに新たな歴史を作りはじめた。