126あるループでの異変 異変の始まり
人はループを〇回という形で数えることができる。
一回、十回、百回、千回、万回、と数字を添えて表現する。
数が多い数字には、万、億、兆と数の単位をつける。では、さらに大きい数の単位を知っているか。
京、垓、秄、穣、溝、澗、正、載、極、恒河沙、阿僧祇、那由他、不可思議、無量大数
と続くそうだ。
このお話は、ある世界の無量大数をも超える数をループした世界のお話である。
それまでも、ノイズの影響であるのか、いつもと違うループの世界が再現されることはあった。
ただ、このループの回だけは、何かが違っていた。
ある日、竜真は剣術修行のため、古京を目指す。主要街道を真っ直ぐに進めばいいわけなのだが、竜真は超がつくほどの方向音痴だった。
気づけば、街道はおろか、道すらなくなり、草藪の中をかき分けている。
だが、今回は、いつもとは違うイベントが起きた。
竜真は、草藪の中をかき分けながら謎の自信をもって進むと、視界が開け、川に出た。
比較的大きな川だが、河原に大きな岩があり、そことある女性がいたのだ。
うん?女性??
川底は浅瀬だったので、竜真は岩に近づき、声をかけてみる。
「おーい、古京は行くにはどこに行けばいいんだ!?」
「・・・。」
大きな声で呼びかけるが、反応がない。川の音にかき消さされてしまったのだろうか。
もう、少し近づいて、声をかける。
「おーい、古京は行くにはどこに行けばいいんだ!?」
「・・・。ここを下流にしばらく進めば、落人村があります。」
「はぁ、ありがとうございます。助かりました。」
岩の上の女性はタツヤをジーッと見つめ、少し回答が得られるまで、時間を要した。けど、案内してくれた。まぁ、案内してくれただけでもありがたい。
竜真は、川を下流に向かおうとしたところで、再び、声をかけられる。
「竜真さん、覚えてないですか?」
声をかけられたことで、振り返る。
「竜真さん」と名前で呼ばれた。どこかで会ったことがあるのかと、その女性の顔をまじまじと見てしまう。
はて、こんな女性とどこかで会っただろうか。
竜真は昔のことを振り返るが、心当たりはまったくなかった。
「あの・・・すいません。何のことだか・・・。なぜ、自分の名前をご存じなのでしょう?」
「・・・そう。」
「ど、ども・・・。」
少し変わった女性だなと思うも、会話それで終わってしまった。
一応、礼儀正しく頭を下げて、お礼を表現し、その場を離れた。
その後、大きな変化はなく、ループはいつものように進行し、結果として落人村で捕まり、古京の牢獄へ投獄されることになる。
竜真が大東道場に来た際に、目前に掃除している若い女性と出会う。
その人こそが、古京へ出向く際に道に迷ってところを助けてくれた女性、そう天音だった。
「あ、あのときは、どうも・・・。」
という感じで多少の変化はあったが、それ以降は、めぼしい変化は今のところない。
今までも、ノイズの影響か、いつもと異なるループになることはあった。
だが、こうも大きな変化は今までになかっただろう。