122竜真を救え 3~5回目
「はっ、ここは?」
ふと気がつき、葵は目を開ける。
「地下の広場か、ということは・・・。」
そこはいつものガーデンの地下の広場だった。
これで三回目だ。
同じ光景をみれば、説得は失敗したことは分かる。
そこからの流れも、これまでと何も変わらない。
地下道でグレンと出会うので、それをうまく切り抜けてガーデンを脱出する。
しばらくバランタインで待っていると、竜真たちがレストランでトラブルになるので、それを助けてやった。
三回目になると、やることが手早くなっている。
三回目の作戦はしつこく言うという作戦だ。
二回目までは、時間の流れに干渉してはいけないという思いがあった。
だが、それでは効果がないとわかった以上、しつこく言うことにした。
今日は二人を引き連れて、喫茶店に連れていき、
「竜真、あんたは時間遡行魔術を発動させるな。」
と言った。今日はそれで解散した。
そして、翌日も竜真が寝泊まりしている宿屋に現われては、
「竜真、あんたは時間遡行魔術を発動させるな。」
と言う。それを何度も何度も繰り返した。
それで一週間過ぎたあたりから、
「またか・・・。」
と言われ、この時代の葵からは、
「あたしと顔がそっくりだし、毎日毎日、ちょっとあの人やばいんじゃない?」
とまで言われた。
だが、葵は繰り返し繰り返し、呪いの呪文のように言い続けた。
当初は過度な干渉を気にして時間の流れが変わることを心配したが、結果、何も心配はいらなかった。
そこまでしても、これまでと時間の流れは変わらない。
二人は、ガーデンの兵の募集に申し込み、特別部隊に採用された。
グレン、魔女、バレルに出会い、修業し、大海戦に参戦し、敗戦する。
そして、例のパーティの日を迎え、ついに、モルトが絶魔終滅魔術、神撃を発動させてしまう。
・・・。
「はっ、ここは?」
ふと気がつき、葵は目を開ける。
そこは地下の広場だった。結局三回目も失敗したのだ。
葵は、諦めることなく、四回目、五回目と繰り返す。
四回目のときは、時間遡行魔術を使うな、ということがまずかったのだろうと想い、大海戦の際に、大京国へ帰れと言ったが、結果は変わらなかった。
五回目のときは、手紙を持たせた。百年のちに竜真が思い出せるようにと、時間遡行魔術を使うな、と書いた手紙を持たせた。だが、結果は変わることはなかった。
葵は、なおも諦めず、竜真を助けようと、あの手、この手でもがくのだった。