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10逃走 牢屋敷の攻略

 一人で薄暗い通路をズンズン進んでいく彼女に、竜真は小走りで追い付く。


 階段のすぐ裏側に倉庫があり、そこに没収された武器や持ち物などが保管されていた。竜真はここで、武器と荷物を回収しつつ、上の階の攻略について話をすすめていた。


「あんた、剣が使えるなら、剣術は少しはできるんでしょうね?」

「まぁ、そこそこは・・・。」

「なら、接近戦についてはあなたに任せるわ。あたしは、魔銃で遠方の敵を仕留める。近場の敵はお願いね。」

「わかった。」


 そう言うと、彼女はそそくさと倉庫を出ていき、身を低くして階段の途中まで昇り詰める。


「ほら、なにやってるの。行くわよ!」


 えっ、もう行くの、と心の中で思いながら、竜真も階段を昇り詰めると、そこからは彼女は一気に突進する。

 竜真も後を追いかけて、突進し、地下二階へと出る。


 竜真はまずは敵の配置状況を確認しようと、周囲の状況把握から始めようとするが、彼女はそのまま突進をやめない。手には淡い光が灯り、魔銃が出現する。魔銃からは青い光線を残像に残しながら、突進をしつつ、見事に、そして速やかに遠方にいる兵を仕留めていく。


 竜真は、状況把握に数秒の時間を要したが、敵の配置状況を確認した。兵士たちはいずれも、突然現れた彼女の突進の姿にあっけにとられ、何が起きたのわからないという状況だ。


 竜真は、この隙を見逃さない。手前にいる兵士から攻撃をしかけ、確実に仕留める。状況に気づいた兵士が、竜真を仕留めようとする。だが、地元の道場でも成績優秀な竜真のこと、さっと攻撃をかわし、その背後からカウンターで胴斬り、続く二人目の攻撃も刀で受け流し、あいた隙を狙って袈裟斬りにする。

 初めての実戦としては順調だ。


 近くにいる兵士たちが、一斉に竜真めがけて攻撃を仕掛けてくるが、受け流してカウンター攻撃で制圧していく。

 そんな中、一人の兵士が、竜真ではなく、彼女の背後を攻撃しようとするのを竜真は見逃さなかった。


(しまった。とどかない。)


 竜真は彼女に危険を知らせようと、声を出そうとするが、それより早く、彼女は行動にでた。

 まるで、背中に目でもあるかのように、監獄の格子に足をかけて、三角飛びの要領で空中に飛び上がり、背後からの兵士の攻撃をかわす。

 そのまま、空中で宙返りとなり、逆さの状態で、背後の兵士をめがけて魔銃の銃弾を放つ。魔銃から放たれた銃弾は、青い光線の残像を残しながら、兵士の胸に貫いた。

 見事に兵士に的中し仕留め、彼女はそのまま一回転してきれいに着地を決める。


 その見事なまでの一連の攻撃は、華麗、という言葉につきた。

 まるで、スローモーションのように一つ一つの動きがはっきりと見え、それぞれの動きがあまりにも華麗。

 敵への攻撃でもありながら、その所作はあまりにも美しい。そして、その美しさを際立てるように、魔銃の青い光線の残像が目の奥に残った。


 本来ならば、その華麗な攻撃に見惚れるところだが、いまだ、敵と交戦中、竜真めがけて攻撃するので、とにかく、目の前の敵の殲滅に注力する。


 そのままの攻防が時間にして一刻程、同じように兵士との戦いを続け、ついに地下二階を制圧した。


 竜真が投獄されるとき地下二階を通ったが、この階は囚人からの野次がすごかった。「死ね」だとか、「殺すぞー」といった野次が飛び交う地下二階だった。だが、制圧された今、地下二階で聞こえるのは竜真の息切れの音だけ。


 囚人たちは、二人の攻防をみていて、皆、無言になっていた。初めて見る魔銃、そして、彼女が見せる華麗なまでの動き、それらが荒ぶる囚人たちですら魅了させてしまった。


 今、二人がいるのは地下一階へ通じる階段の前。彼女は、そのまま、地下一階へ突進するようなそぶりを見せたが、竜真が彼女の袖口をつかみ、息を切らしながら静止する。


「はぁ。はぁ。はぁ・・・ちょっと待って。」

「なによ。だらしないわね。」

「そうじゃないって・・・。はぁ、はぁ、はぁ、この階の囚人を解放して先に行かせよう。上の階を混乱させて、そのうちに逃げよう。」

「確かに、一理あるわね。」


 そう言うと、彼女は、制圧した地下二階の通路を少し戻り、中央に立って魔銃を構えた。そこから何発かの銃弾を連射すると、青い光線の残像は、牢獄の入り口にかかっている鍵をすべて破壊したのだ。


 突然のことに、囚人同士が互いに顔を見合わせ、えっ、脱走してもいいの、という雰囲気になるが、続々と囚人たちが脱走を始め、地下一階に通じる階段を昇り始める。


 大体無言で、こちらを睨みながら、上の階へ脱走する囚人たちがほとんどだが、たまに「ありがとよ。」とか、「恩に着るぜ。」と声をかけてくる囚人もいる。相変わらず「殺してやろうかー。」と叫んでいる謎の囚人もまぎれていたが気にしない、気にしない。


 大体の囚人たちが脱走しきったところで、二人も地下一階へと昇り詰める。

 階段を登った先は、先行した囚人たちによって制圧されていた。奥からは扉から外の光が差し込んでいる。ついに数日ぶりに外に出られるのだ。

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