115完全予知魔術、プレディクション その1
葵は、モノは試しにと、食べ物をつまみ食いするように、その場で完全予知を試してみる。
一応は、その魔導書に発動方法は書かれてるが、以前、魔女が説明したように、完全予知という魔術は理論上は可能なだけで、あまりにも多くの気を必要とするので不可能なのだ。
葵は、わかったうえで、モノは試しにと、完全予知魔術、プレディクションを発動させたつもりだった。
葵は、魔術師としては、天才だった。
だから、その魔術を発動するため、葵が気を錬成すると、葵から流れる気が滝のように漏れ出た。
その気は、禁書庫を満たし、魔導図書館を満たした。さらに、魔導図書館から漏れ出た気の流れは、ガーデンの宮殿を満たし、ガーデンを聳える山からはバランタインの街中へと気が漏れ出る。
「おい、何だこれ?」
「な、何が起きているんだ。」
ガーデンにいた魔術兵たちも、その様子には皆気づいた。
ここまで濃厚な気が漏れ出ているのだ。当然、気づくが、それがどこから漏れているかはわからない。
さらに、葵の気は海を超え、大京国を超えて、海洋の外国にまで届く。そして、地球を包み込み、宇宙までを包み、万物が葵の気で包まれる。
そして、葵は発動させた。完全予知、プレディクション。
葵の脳裏には、一秒先の世界が広がる。
が、突然、脳裏に広がる世界は真っ暗になり、葵は、その場に倒れた。
「はぁ、はぁ、はぁ・・・気が・・・気が・・・足りない・・・・・・腹減った。」
当然だ。
世界の未来を予知するなど、とんでもないほどの量の気を要する。
むしろ、一秒だけでも未来予知を発動させたことが、凄いのだ。
葵はその場にしばらくの間、倒れこんだ。
あくる日、葵は、再びガーデンの地下の広場に来ていた。
ここであれば、気の集中がしやすい。葵はまだ、あきらめてない。
葵は、びっくりするほどお腹を膨らませてやってきた。大量の気を消費するための対策だ。
葵は、大量の気を食べ物でカバーする気だった。
もう一つの対策は、葵が手に持つ魔法陣が書かれた紙だ。
先日、魔法陣について調べ、これを利用することで、大量の気を吸収できるのだ。利用しない手はない。
葵は一人、紙に書かれた魔法陣を地面に複写する。
とても繊細な作業で時間がかかる。いつもは、適当にごまかすが、今日だけは、真面目に複写した。
魔法陣の複写が終わると、葵は気の錬成をはじめる。
葵の中の豊富な気が、再び葵の体から滝のように漏れ出す。
同時に、魔法陣も発動させる。魔法陣は赤く光り、ガーデン内から気を吸収し始め、葵に供給される。
漏れ出した気は、地下の広場を埋め尽くし、ガーデンの宮殿を満たし、そして、ガーデンのある山の頂から、街中へと漏れ出ていく。さらに、漏れ出した気が、バランタインの街中へ侵入したところで、葵はグッと気をこらえた。
葵は、考えた。
これだけの気が必要となる。ならば、場所を限定すれば、現実的な気の消費量で済むのではと。
もし、時間遡行魔術を使った者がいれば、このガーデン周辺にいるのではないかと。
そう考えたからこそ、葵が漏れ出した気がバランタインの街まで進んだところで、グッと止めた。
天才、魔術師、葵だからこそ出来た芸当かもしれない。
そして、ついに完全予知、プレディクションを発動させた。
葵の、脳裏には徐々に一秒先、二秒先の未来が映る。
成功だ。