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101絶望と色と音の街、バランタイン
例の事件から五十日が経過した。
山のふもとに佇む男の前には、小さな広場があり、数人の人間が連日たき火をしていた。
広場に集まる人間も日がたつにつれて、また一人、また一人と増えているようだった。
たき火で何かを焼き、それを毎日、山のふもとに佇む男の前へも置かれるが、男は決して手をつけることなく、ただただ、佇むだけ。
今日は、ある人間が弦楽器と思われるものを持ち込んでいた。
ボロボロで真っ黒になり、弦は切れている。
とても音楽を奏でることはできないが、残った弦で音だけは出すことができた。
ひどい演奏だが、何ともポップな音。まるで、この絶望を皮肉っているようだ。
バランタインは未だ一面が白と黒のモノトーンの世界。
そこに赤色が色づき、音が広がった。