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98絶望と絶望と絶望に抗う街、バランタイン
例の事件から三十七日が経過した。
山のふもとには今日も男が佇んでいる。
男の脇には黒色の灰が残っていた。
バランタインは未だ一面が白と黒のモノトーンの世界。
今日も何も変わることはない。
だが、音がした。
足音だ。それは、徐々に大きくなり、男のほうへと近づいていく。
それは、一人の人間だった。
ボロボロで、真っ黒な灰まみれの服を着た人間。
髪はボサボサで性別不明。
そんな人間が下を向きながら歩いていく。ふと、佇む男に気づいたのか、ふと、チラッと山のふもとで佇む男を見るも、再び、下を向き、通過していった。
ただ、それだけのこと。
ただ、それだけのことかもしれないが、このバランタインに生きている人間がいた。