8異教信仰の罪での投獄
牢屋敷はその悍ましい広場のすぐ隣の地下にあった。
御用の人間に背中を押され、牢屋敷への階段を下ると、そこには想像を超えた世界だった。
階段を降りた先にあったのは薄暗い広間だ。洞窟のように縦に長く広がっているようで奥が暗く見えなかった。
御用の人間が竜真の縄を引っ張り奥へと連行するが、通路の両側の牢獄には今は人がいないようだ。だが、たまに人骨と思われるものが放置され、恐怖を与えた。
通路はさらに進む。
どれだけ歩き続けたか、それだけこの地下は広く作られている。最奥部にあったのはさらに地下へと下る階段。
地下二階、ここも地下一階同じ構造だが、雰囲気が違う。奥のほうから、雄たけびや、殺すぞー、というような叫びが聞こえてきた。同じく通路の両側に牢獄があるが、ここは人がいるようだ。
悪人面のような人や、全身に刺青を入れた人などが多数、ひしめき合うように投獄されていた。
竜真が通路を歩き、牢獄の前を通過するたびに、殺すぞー、などと叫び声が聞こえる。
「さっきの地下一階はよ、病気になって動けなくなったり、衰弱して動けないような安全な罪人を投獄するのさ。そんで、この地下二階は、殺人と強盗とかの凶悪犯を投獄するところ。そんで、貴様が投獄されるのは、地下三階の最深部、一番やべぇところだ。ちなみに、窃盗とかの軽犯罪者はここじゃなくて別の牢屋な。」
竜真を引きつれる御用の人がわざわざ説明してくれた。安全な罪人って何だよ、と思いつつも、この牢獄の異様さに何も返答はしなかった。
竜馬が連行されたのは地下三階の牢獄だった。
御用の人が扉の鍵を開けて、そこにボン、と投げれるように投獄された。
投獄するや否や、御用の人は「じゃぁな」と最期に言って、すぐに行ってしまった。後に残るのは、その牢獄を監視する兵士のみ。
竜真は縄が巻かれたままなので、うまく起き上がれない。何とかして起き上がって、周りの様子を見渡す。
地下三階の牢獄、かがり火はあるが、薄暗くジメジメした空気が陰湿な雰囲気を醸し出す。鉄格子から常に二,三名ほどの監視の兵士がずっと立っていた。
何よりも、牢獄には先客がいた。ざっと二十人ほど。いずれも異様な雰囲気を醸し出している。
例えば、おじさん、壁に向かって常に呪文のようなもの唱えている。
なるほど、この牢獄は異教徒専用の牢獄なのだろう。
他には、謎の魔法陣を床に描いているおばあちゃんであったり、とんがり帽子で杖を持ち、「ファイヤ」などと叫んでいるお姉さんなど、異様な雰囲気の人ばかりなのだ。
むしろ、まともそうな人がいない。しいて言えば、牢獄の端っこで座り込んでいる白いフード付きのローブの人。
珍しい服装で、下を向いていて性別は分からないが、無難に話しかけられそうな人は、そのぐらいだった。
竜真は、そんな人たちを横目に見ながらも、とりあえず起き上がり、壁にもたれかかる。縄でしばりつけれたままなので、両手が使えない。とにかく、これでは不便だ。
他の人たちは縄で縛られている様子はない。
「すいませーん、この縄何とかしてくれませんかー。」
「ダメだ。貴様は、魔術だとか呪術を信じているだけでなく、使えるのだろ?そんな危険な奴の縄はほどけぬ。」
ということは、このままですか?食事をするときも、用を足すときも・・・。不便なことこの上ない。
しばらく時間が経った。時間が経ったが、ヒマだ。
とにかくやることがない。牢獄の中に座っているか、立つか、歩くか、その程度ぐらいしかやることがない。
そんな時間が永遠に続いた。とくに何をやることもなく、時間になっては提供される飯を食べる。
縄で両手が使えないので、犬のようにして食べる。
ただ、その繰り返し。地下三階とあって今が夜なのか、昼なのかすらわからない。
ただ、眠くなれば寝て、時間が来れば提供される犬の餌のようなものをがっつき、ただ、時間経過するのを待つだけ。
一日中続いただけで発狂しそうだ。
そして、五日目になってようやく、新たな出来事が発生する。