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p.1

 窓から差し込む日差しに瞼を刺激され、ゆっくりと目を覚ます。


 目覚めたばかりのぼんやりとした視界に広がる、薄い水色にうっすらとベールを広げたような、少しふわりとした印象を受ける天井は、随分と高くて、まるで、春の日差しに包まれて、日向ぼっこをしながら空を見上げているのではないかと錯覚してしまうほどに圧迫感がない。


 一人で寝るには少し広すぎるのではないかと感じる、真っ白なシーツに包まれたダブルベッドの上をゴロリと転がり、窓へ視線を向けると、光沢のあるレースのカーテンの隙間から、俺を優しく起こしてくれた柔らかな日差しが、幾筋もの光の道を作りながら、室内へと差し込んでいる。


 光をふんだんに取り込むための大きな窓には、レースのカーテンだけ。寝坊助な俺には、朝の陽ざしが天然目覚まし時計となってちょうど良いのだ。


 目覚めてから、ぼんやりとした時間を漂っていた俺は、ようやく重い体を起こす。真新しいベッドを軋ませながら降りると、吸い寄せられるようにそのまま、窓辺に立った。


 高層階のため、窓は開けられない。朝の清々しい空気を思う存分味わうことができないのは少し残念だが、まぁ、そんなことは気にしない。それよりも、眼下に広がる街並みを眺めることの方が、今の俺には価値がある。


 昨日、ここへ来たときには、この喜びを味わう間もなく眠りについてしまったが、こうして目の前に広がる景色を眺めていると、喜びがふつふつと湧いてくる。


 湧きあがった喜びは、やがて、俺の口からクククッと小さな笑い声となって溢れでると、間もなくして、ガハハハッと大きく下品な笑い声となって、室内に響き渡った。


「よく見ろ! 俺を馬鹿にした者どもめ。俺は、ここまで来たぞ! お前らが馬鹿にした俺の発明で、俺は、ここまで上り詰めたんだ。今日から俺は、勝ち組なんだ!」


 グフフ、ガハハと気の向くままに笑っていると、ピロリンと間の抜けた音がし、次いで、女性のような、子どものような機械的な声が天井から聞こえてきた。


「おはようございます! 祐司。昨晩はよく眠れましたか?」


 流暢に話す機械的な声に、俺は相手もいないのに、ニヤリと笑みを見せ、頷いた。


「ああ。レタリー。おはよう。よく眠れたよ。こんなに良く寝たのは、随分と久しぶりだ」

「そうですね。祐司は、発明と店舗経営がお忙しいですから。しかし、人間には、質の良い睡眠と、栄養バランスの取れた食事、それから、適度な運動が必要ですよ」

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