表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/11

第6話 死の魔女(後編)

ちょっと間が空きました、すみません……!


 帰り道。複雑そうな顔で紙を見るしえんさんに、苦笑してしまう。


「まあいいじゃん、チートには変わりないんだし」

「こうなったら魔法を極めるしかない……」

「訓練場所もできたしね」


 収穫の多い一日だった。特に、心強い協力者を得られたのが嬉しい。

 さっきまでの、魔女さんとのやりとりを思い出す。



 しえんさんとお姉さんが向かい合って座る。鑑定するためには、お互いが了承している、という状況が必要らしい。この場合、体のどこかが触れていること、その状態で名乗りをあげること、だそうだ。

 二人が握手をすると、輪郭を包むように、光の粒子が漂い始める。うわあ、ファンタジーっぽい、テンション上がる。


「えっと、シェリル・アッカーソンです」

「じゃ、鑑定するよ。すぐ終わるからね」


 お姉さんが、空いているほうの手を、机の上にある紙にかざす。すると、紙に文字が、焼かれるように浮き上がってくる。日本の字ではないけど、今世の記憶のおかげで読める。この国の識字率が高くて助かった。

 続いて俺も、同じように鑑定してもらい、紙を受け取ってしえんさんと見せあう。


名前:シェリル・アッカーソン

年齢:15

性別:女

種族:人間

Level:3

HP:30/30

MP:1990/2000

パラメーター:

STR 25(+30)

ATK 30(+30)

VIT 100(+30)

MND 900(+30)

DEX 1(+30)

AGI 1(+30)

INT 500(+30)

備考:

特殊スキル<神の祝福>


名前:ナディヤ・コールリッジ

年齢:15

性別:女

種族:人間

Level:5

HP:3000/3000

MP:20/20

パラメーター:

STR 300

ATK 800

VIT 500

MND 10

DEX 80

AGI 150

INT 10

備考:

特殊スキル<天使の歌声>


 突っ込みたいところは色々あるが、一番に目が行ったのは。


「DEXとAGI……」

「1」

「え、俺呪われてんの?」


 しえんさんには悪いが、お姉さんと一緒に、思いきり噴き出してしまった。


「それも変わってるけどね。他にもっと、注目すべきところがあるんじゃないのかな?」


 しえんさんなら、MPと謎のパラメーター補正、特殊スキル。俺なら、HPと全体的なパラメーターの高さ、そして特殊スキルだろう。

 お姉さんいわく、パラメーターというのは基本2桁で、どれも3桁を超えれば達人と呼ばれる域らしい。HPやMPも、4桁はごく稀。それを踏まえて俺たちのステータスを見ると、異常というほかない。明らかなチートだ。チート転生だ。


「やったじゃん、しえんさん! 冒険者なれるでしょ、これは!」

「いや、嬉しいけどさ……なんか……素直に喜べない……」

「貴女たち、冒険者になりたいの?」

「あ、実は……」


 一瞬、どこまで話すか迷った。

 しえんさんに視線で問いかけると、俺の考えてることが分かったみたいで、サムズアップしてくれた。任せた、という意味だろう。なので、全部話すことにした。

 俺たちが転生者であること。バッドエンドフラグ(仮)のこと。国から出たいこと。冒険者になりたいこと。

 まだお姉さんのことを信用しきれていない俺は、用心深く様子を窺いながら話した。お姉さんも、俺の心情には気づいているだろうに、最後まで態度を変えることなく、きちんと聞いてくれた。それにほっとすると同時に、余計に不安にもなる。読めない相手は怖い。こんな情報、話したところでどうにかなるとは思えないけど、一応警戒心は持っておきたい。


「なるほどね。じゃあ、協力者が必要なんじゃない?」

「例えば?」

「あたしとか?」


 即座に、しえんさんと脳内クラウドで相談する。


(どうする? 協力してもらっちゃう?)

(怪しくね? ボッタだったりしたら、むしろマイナスだよね)

(でも今んとこ、この人以外に頼れそうな人っていないし。虎穴に入らずんばってやつじゃない?)

(こっちのが死亡フラグ臭いけど?)

(お姉さんの目的とか分かればなー)

(俺聞いてみようか?)

(やっこさんメンタルのHPも高いよね。俺無理だから頼む)


 この間、僅か二秒。お姉さんに視線を戻す。


「お姉さんの目的は何ですか? お金ならないですよ」

「そんなのいらないわ。ただね、んー……」


 初めて、少しだけ困ったような表情を見せるお姉さん。そして、苦笑した。


「占いの結果に関係してる、とだけ言っておこうかな」

「占い……」

「あたしね、占いと幻術が得意なの。森にかかってるのもあたしの幻術。あたしが招いた人以外は、入ってこれないようにってね」


 話を逸らされた。これ以上は聞けなさそうだ。きちんとした情報は得られなかったけど、何かを対価に求められているわけではなさそうだ、ということが分かった。とりあえずは、それだけ分かればいいだろう。

 迷ったが、頼りになりそうなのは確かなので、力を借りることにした。お姉さんは何故かほっとしたように笑って、よろしくね、と言った。


「そういえば、お姉さんの名前聞いてませんでしたよね」

「ごめんね、教えられない。長く生きてると、名前と魂はくっつきすぎるから、知られるとちょっとマズいの。だから好きに呼んで」

「じゃあ魔女さんでいいですか?」

「それでいいよ。二人のことはどう呼べばいい? 中身は男性なんだよね」

「俺はしえんで」

「じゃあ俺はやっこで」

「しえん君に、やっこ君ね」


 この世界の人に、この名前で呼ばれるのはなんだかむず痒い。でも、悪い気はしない。

 そうして、訓練場所の提供や、訓練の指導、その他の協力者を探してもらうことなど、いろいろ相談することができた。最後に、森へ瞬間転移できる、ペンダント型の魔道具を一つずつ貰って森を出た。



「そういや、やっこさんの特殊スキルって、どんなんなん?」

「歌うと動物が寄ってくる」

「え、プリンセスじゃん」


 羨ましかろ? と笑った。これでも一応、ヒロインらしいんで。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ