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七人の勇者  作者: 白夜
2/16

試験

「──試験開始。」


試験官の声が響き渡る。


満十三歳の子供は、魔術学校に通う権利が与えられる。


現在、少年《アプリス=アバリシア》はその、魔術学校の一つ。《国立魔術学校エフティヒア》の試験を受けている。


「(まずは第一試験。エフティヒアが保有する樹海に設けられた、第二試験場(ゴール)へと向かうこと。ここでは毎年、受験者の半分が落ちている。今年も同じだろうが、気になるのは到着順位。一位から五十位までは、基本その後の試験も落ちることはない。だがそこではない。私が一番気になっているのは、一位から五位。つまりは、首席合格者候補となる者達だ。歴代の第一試験一位通過者の中には、圧倒的な速さで通過し、次席と大差をつけて合格した者もいる。それを超える者は、今年もなしか。)」


「一分経過。やはり今年も勇者様の記録を超える方はいませんでしたね。」


中老の第一試験官の長考に、水を差すように、女性の試験補佐官が声をかける。


「ああ。そうだな。」


試験官は低い声でそう返した。



「ああ。いってー。」


アプリスは樹海の木の魔物の蔦に足を巻かれて、逆さにぶら下がっている。


「急がないと。」


アプリスは腰に携えている短剣を抜くと、蔦を切り裂き着地する。


「うーん。逃げよ。」


アプリスは木の魔物に背を向けると、ゴールに向かって走った。



「残り一分です。」


補佐官は名簿に通過者を記入する。


「残り三十秒。」


補佐官はカウントダウンを開始する。


その時だった。


「うわー!」


空から少年が降ってきたのだ。


「風よ。」


少年が詠唱すると、風がクッションとなり、少年は地面に着地する。


「受験番号1057番。アプリス=アバリシアです。」


「君で最後だね。残り三十秒で到着したのは、君が初めてだよ。」


アプリスは敬礼すると、補佐官は名簿にアプリスの名を記入し、試験官に渡した。


「(残ったのは629名。予想通りだ。)お前らは第一試験を通過した。それを誇ると良い。そして、是非、全試験を通過し、合格してくれたまえ。私からは以上だ。健闘を祈る。」


試験官が第二試験場の道を開ける。


地下へ続く階段を下りると、そこには巨大な水晶が大量に置かれた部屋に着いた。


「私が第二試験官だ。お前らにはここで、魔力測定を行ってもらう。魔力量が千にも満たないものは、不合格だ。じゃあ行え。」


女性の第二試験官は手短に説明すると、受験生達は自分の番号の水晶に向かった。


「(速く終わらせよう。)」


アプリスが、水晶に手を当てると、水晶の上に数字が表れる。


数字は0から上げって行き、1347で止まった。


「(まぁ、こんなものだろ。)」


アプリスは手を放すと、受験番号バッジが白から赤に変わった。


「バッジの色の会場に入れ、そこが第三試験場だ。」


試験官の言葉通り、アプリスは赤の旗が垂れる会場に向かった。


会場に入ると、すでに三十人程到着しており、最終的に五十人になった。


「第三試験官は俺だ。第三試験は其々の会場の試験官と試合し、認められることだ。ルールは二つ。武器は何を使っても良い。死ぬな。以上。一人ずつでも、多人数でも良いぞ。それじゃあ開始だ。」


第三試験官の男は拳を作り説明する。


「(最後の方にしよう。)」


アプリスは壁に寄りかかると、試合を観戦した。


七分経過し、アプリスの番に成った頃、既に四十人が不合格となっていた。


「君が最後だ。」


アプリスは、試験官の言葉と同時に近づくと──



「こいつらは落ちるな。」


第二試験官は受験生の魔力量一覧を見ながら、アプリスを含む五十名を補佐官に言った。


「基本的に、剣術が得意などの特徴がなければ、魔力量が1500以下の者は次の試験で落ちる。通過できるのが1000以上からなのは、剣術をある程度極めていれば、魔力量は最低でも1000にはなるからだ。」


「1000以下は論外。ということですね。」


試験官の説明に補佐官は質問する。


「その通りだ。」


試験官は一覧を置くと、第三試験通過者を確認した。


「!?」


試験官はそれを見て驚愕した。



「俺の負けだ。」


アプリスに転ばされた第三試験官は、手を挙げて降参した。


「受験番号1057番。合格。」


アプリスは短剣を収め、試験官の背後のある、最終試験場へ向かった。


「ふふ。面白い物を見せてもらったよ。受験番号1057番。アプリス=アバリシア君。」


金髪に赤目の少女は第三試験場の二階ギャラリーから、アプリスの試合を見て、そう呟いた。



「最終試験は筆記。ペーパーテストです。自分の受験番号の椅子に座ってください。」


最終試験官の女性は全員が椅子に座ったのを確認すると、テストを配り始めた。



「ふぅ。」


アプリスはテストを記入し終えると、溜め息をついた。


「(ムズすぎだろ。一部、賢者級の問題があったぞ。まぁ、七十点ぐらいだろ。)」


アプリスはテスト終了の合図と共に、会場を出た。


「(合否の結果は十日後にこの学校の広報板に合格者の受験番号が書かれる。それまで特訓を続けよう。)」


アプリスは学校を後にし、帰路につくのであった。



少し遡り。


「なんて強さ。」


第二試験官は魔動端末で第三試験通過者の試合映像を見ている。


「試験番号1057番も驚きだが、試験番号13番。第一試験一位通過。記録五分三十二秒。第二試験一位通過。記録10984。そして、我が校の教師で賢者級の三人の中の一人。彼が戦地に赴けば、敵陣が血の海となるという逸話を持つ、《血剣鬼》ルドロウフ卿を善戦し勝利。確実に首席合格は彼女で間違いない。」


第二試験官の予想は的中した。


十日後。発表された合否。首席合格者の欄に記された受験番号は、13番であった。


「当然の結果ね。何故なら私は、天才だから。」


その名は《フィア=ウェンディオ》。彼女が勇者を目指す理由は。


「天才だから。」


で、ある。

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