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第9話 彼の欲望

 私は、彼の命令に従って、馬車の荷台に仰向けに寝ました。

 ミーシャも同じように寝ます。


 彼は、私の身体を眺め、下品な笑みを浮かべながら手を伸ばしてきました。

 私は、感情を封印して、為されるままになります。


 彼は、このまま私を凌辱するでしょうか?

 そうなっても構わない、今は耐えるしかない。そう思いました。


 しかし、彼は、つまらなそうな顔をして、私にうつ伏せになるように命じます。

 私はそれに従いました。

 その後も、彼は私の身体を眺めて触りましたが、それ以上の行為には及びませんでした。


「……もういい。服を着て寝ろ」

「はい」


 終わった。

 そう思った途端に、今まで行われていたことが頭に蘇り、身体が震えます。


 気持ち悪い……早く身体を洗いたい……!

 込み上げてくる感情を必死に抑え込みます。


 私が下着を身に着けていると、すぐ傍で、苦悶する声が聞こえました。

 慌ててそちらを見ると、彼はミーシャに対して、私に対して行ったのと同じことをしていました。


 私の中の、ドス黒い感情が蘇りました。

 この男……今すぐ殺してやる!


 彼に飛びかかりそうになって、何とか自重しました。

 仮に彼を殺すことができたとしても、その後で、ミーシャがどうなってしまうのかが分からないからです。


 怒り狂って、私を殺すかもしれません。

 彼の後を追って、自殺するおそれもあります。

 そのようなことを考えてしまうと、すぐに行動を起こすことが出来ませんでした。


 しかし、妹が何をされても耐え続ける、というわけにはいきません。

 彼が、もしも下半身を露出したら……たとえどんなリスクがあっても、我慢することはできないでしょう。


 服を身に着けながら、彼のことを警戒します。

 その間も、彼は、とても直視できないような、おぞましい行為を継続していましたが……自身の局部を露わにすることはありませんでした。


 この男は、幼い少女の身体そのものに欲情するわけではないようです。

 ただ、見られたり触られたりして、ミーシャが嫌がるのを楽しんでいるようでした。


 信じられないほど気持ちの悪い男です。

 幼い女の子を苦しめて、楽しむなんて……。


 こんな男は、一刻も早く殺してしまった方が、世の中のためです。

 最低でも、二度と異性に欲情することができない身体にしておくべきでしょう。


 しかし、彼の最悪な行為によって、ミーシャについて分かったことがありました。

 彼の「奴隷」となった少女は、彼に対して完全に服従しています。

 それにもかかわらず、彼に何をされても平気というわけではなく、羞恥心があるようでした。


 ミーシャの身体には、彼によって「奴隷」の魂が与えられました。

 そして、彼は、女を苦しめることに喜びを見出す変態です。

 彼の理想である「奴隷」の少女は、主人に肌を晒したり触られたりすることを、苦痛だと感じるように作られている、ということなのでしょう。


 あまりにも強烈な嫌悪感に、吐き気がしました。

 彼は、女性を抵抗できない状態にして、苦しめて楽しみたい、という要望を抱いているようです。

 どこまで最低な男なのでしょう!


 こんな男に、少女達を支配させてはならない。

 そのことを改めて確信しました。

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