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人でなしと最強少女のサディスティックなハーレム生活  作者: たかまち ゆう


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第70話 私の「弟」

 私達は、ルナさんを加えて旅を始めました。


 目的はただ1つ。マニの駆除です。

 そのために、私達は一番近くのマニを目指して、町や村を次々と巡りました。


 作業としては、単純だと言えます。

 マニに取り憑かれた子供から、私の魔法でマニを剥がすのです。

 これ以上、子供を死なせない。その目的については、ルナさんも支持してくれました。


 実は、私にマニを剥がす能力が本当にあるのかについては半信半疑でした。

 しかし、最初に発見した子供で試すと、本当に剥がすことができたのです。

 これによって、深淵の魔女の言葉は信憑性を増してしまいました。


 さらに、そのマニをルナさんに取り憑かせることもできました。

 本人から提案されて実験したのですが、成功してしまった時には焦ってしまいました。

 ですが、マニは、すぐにルナさんから追い出されました。マニは、大人に取り憑いていることができないからです。

 そのマニは、マリーに撃たせて始末しました。


 私達を支配していた、あの人でなしは……本当に、ナナとミーシャを殺したのでしょう。

 疑っていた時期もありましたが、今ではそう考えています。

 彼を殺して本当に良かった。そう思いました。


 旅を続けるためには、お金が必要でしたが、あまり困ることはありませんでした。

 あの男が、多額のお金を残したからです。

 そのおかげで、生活費には困らずに済みましたが……とても不思議なことでした。

 彼には、仕事をしている様子など、全くなかったのですから……。


 その疑問についてルナさんに話すと、ルナさんは、1つの仮説を話してくれました。

 実は、マリーが住んでいた町の近くで、高利貸しの老人が失踪した事件があったそうなのです。

 その老人の家は、扉の鍵が乱暴に壊され、金品が持ち出されていたことから、強盗が押し入った可能性が高いと考えられたものの、老人が見つからなかったことなどから迷宮入りした……とのことでした。


 私は、少女達に、その件について尋ねてみました。

 しかし、誰一人として、その時の記憶を有している少女はいませんでした。


 今では私の「妹」や「娘」となっている少女達は、彼女達の支配者であった男のことを覚えていません。

 私との間の出来事は、矛盾が生じない部分だけを覚えている様子です。

 そのため、真相は分かりませんでした。


 個人的な感想としては、そんな老人など、死んでも構わないと思いました。

 有り余る財産を使って、さらに儲けようとする。そんな卑しい人は、殺されてしまっても、あまり同情できないからです。

 ただ、盗み出された金品が、あんな男が楽しむために浪費されたのだとすれば、とても勿体ないことだと思いました。

 これを話すと、ルナさんを怒らせてしまうので、何も言いませんでしたが……。


 私達は、次のマニを駆除するために、小さな村に辿り着きました。

 村人は、あまり旅人に慣れていない様子で、私とルナさんのことをジロジロと見てきます。

 居心地の悪い気分でしたが、私達は、マニがいる場所を目指して歩きました。


 マニを探して、発見したのは、緑色の髪の少年でした。


「……!」


 私は、叫びそうになって、無意識に口を両手で押さえていました。


 少年に取り憑いているマニは、既に、致死的な大きさに成長しています。

 このマニを、私の能力で剥がしたとしても……少年は死んでしまうでしょう。

 少年の魂は、事実上、既に食いつくされている状態なのです。


「スピーシャ……?」


 ルナさんは、心配そうな顔で、私の顔を覗き込んできました。


「……手遅れです。あの子は、もう……!」


 それ以上は、言うことができませんでした。


 ルナさんは、私の肩に、静かに手を置きました。

 そして、私を安心させるように抱き寄せてから、ゆっくりと話しました。


「……残念だが仕方ない。マニを野放しにすることはできないだろう? お前は、お前のやるべきことをやるんだ」


 こういう状況には、警備隊に所属していたルナさんの方が慣れています。

 私は、深呼吸を繰り返してから、少年に近付きました。


 そして、レベッカの時のことを思い出して、魔法をかけてから話しかけました。


「貴方……名前は?」

「……ダン」

「そう。ダン、今夜、こっそりと家を抜け出して、ここに来てくれないかしら?」

「……分かった」


 ダンは、頷いてから立ち去りました。


 自然と、目から涙が溢れてきました。

 いつかは、こういう日が来ると思っていましたが……またしても、何の罪もない子供が死んでしまったのです!


「……お前のせいではない。自分を責めるな」


 ルナさんは、穏やかな口調で言いました。


「ですが……もっと早く、この村に来ることができれば……!」

「マリーも、ミーシャも、他の子達も、まだ子供だ。無理をすれば、誰かが体調を崩すかもしれない。思いがけない事故だって起こる」

「それでも……!」

「これは、言うべきか迷ったが……お前も、既に、かなり無理をしている。その力を手に入れて、気負っているのは分かるが……私と違って、お前は訓練を受けたわけでもないだろう? 自分の限界を受け入れることも、必要な場合だってある」

「……」


 結局、私は、あの男と同じです。

 凄いのは、深淵の魔女や少女達であって、私ではありません。

 そのことを、嫌というほど感じさせられました。


 私達は、夜まで、ひたすら待ちました。

 その間、私は、自分の気持ちを必死に整理しました。


 考えたことは、自分の無力さについてだけではありません。

 あの少年に、新たな魂を入れることが、正しいことなのか……?

 それを実行するとして、どのような人格にするべきなのか?

 頑張って考えましたが、簡単に結論を出すことはできませんでした。


 ルナさんに相談しましたが、「私には分からない」と言われてしまいました。

 当然です。人の生き死にの判断など、簡単にできるはずがありません。


 あの人でなしは死ぬべきだ、ということは、簡単に判断できました。

 それは、あの男が死ぬべきだということが、疑いようのない事実だったからです。

 ですが、そうでない人間の命など、軽々しく扱えるはずがありません。

 私は、今さらながら、この能力のことが怖くなりました。


 夜になって。

 待ち合わせの場所にダンが現れて、私は決断しました。


 この少年を、このまま死なせるわけにはいかない。

 方法があるのなら、どのような手段を用いてでも助けなければならない。

 たとえ、その手段が、偽りの人格を与え、操り人形にすることであっても……!


「貴方はマニね?」


 私は、ダンに尋ねました。

 すると、ダンの身体から、白い靄が溢れ出しました。


「マリー、あのマニを撃ちなさい!」

「任せて、ママ!」


 私の命令に従って、マリーはマニを撃ちました。

 撃たれたマニは消滅し、ダンは倒れ込みました。


 私は、ダンをすぐに抱き起し、彼の頭に手を当ててから叫びました。


「ダン、貴方は生きて! 貴方は、今から……私の『弟』よ!」


 魔法には、成功したようです。

 ダンは、目を開いて言いました。


「おはようございます、姉上」

「……おはよう、ダン。貴方は、私の『弟』よ。立派な紳士になりなさい」

「はい」


 私は、「弟」のことを抱きしめました。

 この子のことは、責任を持って私が育てる。そう決意しました。

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