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第51話 少女達の反乱

 私は、もはや訳が分からなくなって、言葉になっていない何かを叫びました。

 そんな私の頬を、彼が、先ほどよりも強く叩きました。


「うるさい! 喚くな! 殺されたいのか、このクソ女!」

「好きにすればいいわ! 私には、もう何も失うものなんてないわよ! 貴方みたいな男に弄ばれるくらいなら、殺された方がマシだわ! ……今すぐに殺しなさい!」

「……いい度胸だ。俺に逆らって、楽に死ねると思うなよ? ナナ、この女の両腕と両脚を叩き折れ!」

「……えっ? そこまでするの……?」


 ナナが、動揺した様子で言いました。

 仲が悪いとはいえ、仮にも「姉」である私に重傷を負わせることには抵抗があるのでしょう。


「何を躊躇している!? 俺がやれと言ったらやるんだ!」

「……まあ、お兄ちゃんがそう言うなら……」


 ナナが、こちらに歩み寄ろうとしました。

 しかし、その足元に閃光が突き刺さり、ナナが慌てて飛び退きます。


「……マリー!? 何するのよ!?」

「ねえさまに酷いことをしないで!」

「貴方……お兄ちゃんに逆らう気なの!?」

「お姉様から離れろ!」


 突然、ミーシャが叫んで、彼を突き飛ばしました。

 そして、私のことを、彼やナナから庇うように立ちはだかります。


「ミーシャ……?」


 私は、何も理解できない状態で呟きました。

 これは、一体どうしたことでしょう……?


「どうしたんだ、お前達!?」


 彼も、訳が分からないといった様子で、マリーとミーシャのことを見ます。


「お兄ちゃんに何をするのよ!?」


 ナナが、ミーシャに飛びかかりました。


 しかし、その前に光の壁が現れて、ナナは弾き飛ばされました。

 いつの間にか、セーラが私の後ろにいて、こちらに寄り添うようにしながら心配そうな声で鳴きました。


「セーラまで……!?」


 彼は、少女達が次々と離反したことで、激しく狼狽えた様子でした。


 それは、当然のことのように思えます。

 つい先ほど、彼の命令を聞いて、カイザードやルナさんを抹殺した少女達が。

 今度は、彼に逆らい、私を庇おうとしています。


 どうして、これほど急に、態度が変わったのでしょうか?

 私が、この子達の姉だから……?

 それにしても、この変わりようは、一体どういうことでしょう?

 嬉しいというよりも、戸惑いの方が強い気分です。


「師匠も姉さんも、落ち着いてください! 殺し合いなんて……駄目ですよ!」


 レミが、必死な様子で言いました。


「先生、女性の顔を、あんなに強く叩いてはいけません」


 ドロシーが、宥めるように言いました。


「あ、あの……」


 レベッカは、どうすれば良いのか分からない様子で、オロオロとしています。


「何故だ……!? どうして……こんなことに!?」


 彼は、明確に自分に味方してくれた少女がナナだけだったためか、激しく狼狽えます。

 その様子は、見ているこちらが、情けない気分になるほどでした。


「あんた達、お兄ちゃんに何かしたら、私が許さないわよ!」


 ナナは、全員を敵に回しても、彼を守るつもりのようです。


「ナナこそ、ねえさまを虐めたら、許さないんだから!」


 マリーが、私の傍に近寄りながら言いました。


「皆、落ち着いて。私達が殺し合っても、何の得にもならないでしょう?」


 ドロシーが、興奮する皆に言いました。

 しかし、一触即発の雰囲気は、すぐに収まることがありません。


「……姉さん! この人……生きてますよ?」


 突然、レミがそんなことを言いました。


 私は、驚いてレミがいる方を見ます。

 すると、レミはルナさんの脇に座っていました。


 急いで駆け寄り、レミには離れてもらい、ルナさんの状態を確認します。

 ルナさんは、喉を切られて気を失っているものの、まだ死んではいないようでした。

 私は回復魔法をかけます。


 ルナさんは、既に、かなり厳しい状態でした。

 このままでは、窒息死するか、失血死するでしょう。

 しかし、ルナさんを見捨てるわけにはいきません。


 私がルナさんを助けることを、誰も止めようとしませんでした。

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