第26話 お尻の感触
「どうした? 食欲がないようだな?」
夕食の時間に、彼が心配そうに言ってきました。
私は、思わず彼を睨みます。
一体、誰のせいだと思っているのでしょう?
「……何だ? また、後のことを心配しているのか?」
「違います!」
「ならば、どうした? まさか……あのガキのことが心配だからなのか?」
「当然ではないですか!」
「俺以外の男のことは、気にするなと言ったはずだ」
「男の子か女の子かは、関係ありません! 今、まさに命を奪われようとしている子供を、見殺しにするなんて……!」
私は、全力で抗議しました。
私の剣幕が怖いのか、周囲の少女達は、困ったり怯えたりした様子です。
彼は、深々とため息を吐きました。
「仕方がないから教えてやろう。あのガキが死ぬことはない」
「えっ……?」
「あのガキに憑いているマニは、まだ小さいからな。人を殺せるような大きさではないはずだ」
「そのようなことが……分かるのですか!?」
「ああ。あのマニは、さっきのガキが成長すれば、いずれ身体から追い出されるだろう。マニは、子供にしか取り憑いていることができないからな」
「だったら……そのことは、もっと早く教えてください!」
「何故、それをお前に教える必要がある?」
彼は、ニヤニヤと笑います。
私に意地悪をして、楽しんでいるようでした。
彼が、酷い男だということは分かっていましたが……人が死ぬと思い込んでいる私の誤解を、そのままにするなんて……!
「分かったら、しっかりと食べるんだ。俺だって、お前のことは気にかけているんだぞ?」
「……ありがとうございます」
「お前が痩せて、身体の感触が悪くなれば、俺の楽しみが減るからな」
「……」
彼は、ゲラゲラと笑いました。
本当に……最低の男です。
再び食欲がなくなりましたが、子供が死ぬよりは、自分が捌け口にされる方がマシです。
私は、無理をして食事を続けました。
その夜、彼はミーシャ達に、先に寝るように命じました。
そして、私を彼女達から離れた場所へ連れて行き、前回よりも強い明かりを魔法で生み出します。
一瞬、目が眩みました。
「さあ、跪け。前回と同じ格好で、だ」
彼は、興奮した様子で命じます。
私は感情を消して、淡々とスカートを持ち上げ、跪きました。
彼は、前回と同じように、私の下着を脱がしました。
そして、楽しそうに私のお尻を叩きます。
明かりが強くなっただけでなく、叩く力まで強くなったように感じられました。
しかし、何回か叩いた時。
彼は、唐突に手を止めました。
そして、前回と同じように、私のお尻を撫で始めます。
少し、様子がおかしい気がしました。
また、ろくでもないことを思い付いたのでしょうか?
嫌だという感情は封印します。
この状況で抵抗しても、非力な私では、彼に敵うはずがありません。
お尻が痛いと訴えても、中断してくれるかは分からないのです。
じっとしていて、とにかく早く済ませてくれることを祈りました。
しかし、彼は、予想よりも早く手を止めます。
そして、呟くように言いました。
「……スピーシャ」
「何でしょうか?」
「お前……前よりも痩せたか?」
「……」
彼は、本当に心配そうな声を出しました。
そのことが、むしろ私の怒りを呼び覚まします。
「御主人様」
「……何だ?」
「ご心配いただけるのでしたら、罰を与えるのは、ここまでにしてくださいませんか?」
「あ、ああ……」
彼は、気圧された様子で、私のお尻から手を離します。
そして、私に下着を履かせました。
立ち上がって、スカートを直します。
その間、彼は、何と言えば良いのか分からない様子でいました。
この男……自分が創り出した人格を有する少女や、脅して大人しくしている女に対しては偉そうなのに、従順でない女のことは苦手なのでしょうか?
信じられないほど情けない男だと思いました。




