特安課
西暦2000年
ノストラなんちゃらの予言は的中
突如世界はその有り様をかえた
それまでおとぎ話や架空でしかなかったものが現実のものになった
人々は姿を変え、角が生えたり、翼が生えたり、鱗の体になったり
いわゆる亜人である
姿をかえなかった者も
魔法が使えたり、特殊能力に目覚めたりと、
生き物だけでなく
ダンジョンと呼ばれる洞窟の出現、物理法則を無視した塔、浮遊大陸
正に混乱の極み
ある学者の仮説では平行世界の統合
別の仮説では入れ替わっただけ、それらを立証したものはいなく
原因不明
つまり突如もとに戻る可能性もある
分かりやすくいうと
整頓された本棚が倒れ、適当に入れ直した。誰かが整頓すれば、きれいに元通り
本当に実在するなら神様の気まぐれ、うっかり
そんな感じである
(神様よ、それでいいのか?)
世界変換から50年近くは
あちこちで大規模な戦争がおき
100年過ぎれば小規模な戦争しかおきず
150年過ぎればある程度安定する
いまは、混歴173年
世界は平和だ
(いや、平和のはずだ)
(平和であってほしい)
なぜなら
オレ、阿倍徹志の職業は警察であるから
大学時代、ある偉大な特殊能力者の子孫がオレだと発覚
ある組織に拉致監禁まがいの事をされ、法律の勉強を叩き込まれた
そして本来なら厳しい試験と、能力測定がある採用試験を特別免除され、その組織に入れられた
《特殊公安治安強硬課》
通称、特安、特安課
武力をもって鎮圧、それに対する特殊権限
超、超、超武闘派集団
配属後
初めての事件で浮き彫りになった
オレの能力値
一般人レベルの力しかないこと……
朝、職場に着き
いつもの日課をする
ギルバート=ジ=ウィル
ビシッとスーツ姿、オレより1.5倍ぐらい体が大きく
身長は2メートル以上、全身鱗におおわれた龍人
そして特安課課長、我らがボスのもとに行く
「課長、本日付けでやめさせてください」
「無理だな」
「そこをなんとか…」
「無理だな」
「どうしても?」
「貴様が配属されたとき与えられた権限
それを剥奪する事が難しいからな」
またか、という感じのあきれ顔のギルバート課長
項垂れながら自分のデスクに向かう
そんなオレに対して
「あなたも懲りませんね」
ため息まじりで声をかけてきた人物がいる
デルヴァザ=マラビズ
こちらもスーツ姿で、オレより背はあるが細身の悪魔
羽としっぽを生やしているが羽は常時しまっている
そして横長のメガネが特徴的な課長補佐
「いやいや、強制してきたのあんたらだろ?」
「おや?そうでしたか?」
「監禁しといてよく言う」
「監禁とは、失敬な!、あれは合宿です」
「司法試験合格まで一生出さないとか、立派な監禁でしょ!?」
デスクにつき、席に座るオレ
後ろのほうから声がする
「せんぱ~い、やめちゃうんですか?」
振り向くとそこにはソファーに座り頭をこちらに向け
上目遣いで寂しそうに声かけてくる人物が
この人懐っこいのは
レミィ=ルーツミリオン
猫人で小柄、髪はショートでふわふわしている
腕とかは毛が生えているわけではなく、ネコミミとしっぽだけが着いた
いわゆるコスプレみたいな感じでマスコットのような女の子
オレは振り向き
「オレには向いてないんだよ」
「え~そうですか~?」
「戦力…つーか能力値が低い…」
「またまた~」
「オレ、お前に模擬戦で勝ったことあるか?」
「・・・」
「は~~自分で言ったが辛くなる」
「でもでも先輩は~」
「慰めならやめてくれ」
二人のやり取りを聞いて
「特訓、すれば、いい、私、つき、あうよ」
レミィの座ってるソファーと机を挟んで迎え会わせのソファーに座って
お茶をすすりながら解決策を言ってくる
鳴神美琴
巫女服姿で見た目小学生だが立派な成人女性
オレと同じ人族、髪は黒髪ロングヘヤーで坐骨辺りまであり
かなりの美少女、魔術や術式の扱いにたけ、神通力の持ち主
「美琴の特訓はもはや拷問」
「そ、う?」
「指先だけで装甲車持ち上げるとか、プールの水を蹴り分るとかフツー出来ないっしょ」
「気の、流れ、読ん、で、使う、だけ」
「無理無理、あの規模の操作はもはや常人を越えてる」
「常人、だと、この、仕事、出来、ない、だから、特訓」
「・・・だよな」
「まぁまぁ、美琴君も彼の事が心配なのはわかりますが、ほどほどに」
そう助け船をだし、オレの肩に手を置いてきた
グルヌベル=バーゲベルト
頭から2本の角をはやした小太りの鬼人
肌は赤く、腕はゴツゴツしている。鬼人だけどおっとりしていて
優しい親戚のおじさんみたいな感じだ
「グルさん…」
「ここに配属された以上、激務は覚悟してください」
「グルさん…」涙目
「今まで、死ななかっただけすごい事なんですから」
「グルさん…」俯き、大泣き
朝のやりとりの後、仕事に戻り少し時間がたつ
「あ~オレちょっと出てきます」
「行ってら~」
明るく言ってくるレミィ
「気を、つけて」
小さく手を振る美琴
部屋をあとにするオレ
そして外へではなく別の場所に向かう
《情報統括対策課》
通称、情括、情括課
色々な情報を集めたり、偽装物を作成したり
作戦を立案、指揮する
いわゆる頭脳派集団
目的の人物を探し
「お~い、ミリア」
「な~に~?」
ミリア=ティール
肩まであるセミロングで少しタレ目
性質のせいかいつも露出の多い服を着ていて
甘ったる声に、色気しかないナイスバディのサキュバス
「実は頼みたいことがあるんだか」
「ん~?」
「手帳作ってくれないか?」
ミリアの顔に近づき耳打ちする
「なんで~?」
「昨日なくしちまって…」
常に男を誘惑するような仕草で悩むミリア、するとなにかに気づき
「ん~~、んっ!?いいわよ~」
「マジか、ありがてー」
「そのかわり~ふふっ」
「…」
「今晩、いいかな~?」
「……」
「そんなたくさんはしないわよ~」
「………」
「2回ぐらいだから~」
ねだるように迫るミリア
「・・許可は?」
「ん~?」
「・・・・取ったのか?」
「ん~~テヘッ」
自分の頭をポカリと叩くそぶりでうっかりって感じだった
サキュバスはその性質上、異性から生気を奪わなくてはならない。長期奪わないと理性を失い、最悪死に至る。理性をなくすと加減が出来なくなり相手を殺してしまうこともある。なので定期的に生気を奪うために届け出を出して許可を取らなければならない
「ならダメだな」
「そんな~最近ご無沙汰だし~」
「いや、お前いっつも限界ギリギリまで奪うだろ!こっちの身にもなれ!」
「む~~なら作んない」
すねるミリア
沈黙する二人
「く、口なら」
「ふふふ、交渉成立~~」
「じゃー頼む」
「後で持ってくから~報酬はその時に~」
上機嫌になったミリア
なんだか、どっと疲れたオレ
(は~今日は何も起きませんように)
街へ出て阿倍は目的もなく歩いていた
(あー出てきたけど、どうすっかな?)
もともとミリアに用事を頼みたかっただけの阿倍
(そういえば、昨日のあの娘、追われてたみたいだが)
(少し探してみるか)
そんな事を考えつつコンビにに入っていた
薄暗い部屋、男女の荒い息づかいがする
そしてベットの軋む音。突如、空中にディスプレイが現れ部屋を照らす
ディスプレイにはフードの男が映っている
「ボス、ちょっといいっスか?」
その声に部屋の男は動きを止めず
「オレは今、楽しんでんだか」
「実は例の少女を見失いました」
「はぁぁぁぁ!?!?!?」
「ですけど~特安が保護する可能性がありますよ」
その言葉に男は動きを止め、ベットの端に座り直す
そしてディスプレイを見ながら
「どれくらいの確率だ?」
「接触したし、オレらが追いかけていたのを見ていたので、おそらく探す事は探すでしょう。見つけられるかはわかりませんが…」
「ならいい、だか、事が大きくなる可能性は?」
「それはちょっとわかんないっス」
「ちっ、ならこちらも取り敢えず探せ、出来るだけ極秘に」
「わぁかりあした」
するとディスプレイが消え、部屋が暗くなる
事の成り行きを見ていた女が、そっと後ろから近づき、男を抱き締める
「お仕事の話~?」
「……」
「それより、楽しいことしましょ」
男は女を突飛ばし女はベットに倒れこむ
「ちょっと~」
「はぁー!?何がたのしいことだ!!」
「????」
「テメーの相手するよりよっぽど楽しい事が起こるかもしれねーのにか?」
男は怒鳴り気味に叫ぶと手を叩く
「おいっ」
すると部屋の扉が開き二人の男は入ってくる
「この女、連れてけ」
女は男達に捕まえられ、困惑する
「ちょ、なに?急に??」
気にすることなくベットの男は
「もう、いらねーから、お前らの好きにしろ、殺してもかまわん」
女は顔面蒼白なり
「まって、なんで?急にどうしちゃたの?私、なんかした?ねぇ?、ねぇ? 」
男たちに連れ去られ助けを求める女
女が扉を越えても男はなにも答えない
「まってよー!いや!いやー!いやーー!!
ちょっ!だれかぁぁ!!たすけてぇぇぇ!!!!」
女は連れ去られ次第叫び声も聞こえなくなる
「まったく、酷いことするものじゃな」
着物姿の女が静かになった部屋に入ってくる
呆れ顔でベットの男に訪ねる
「かわいそうとは思わんのか?」
「お前が言うか?」
「妾の事か?」
「娘に酷いことをしてるだろ」
「あやつは妾の娘ではない」
「あーははは、まっく、ヒデー親もいたもんだ」
「…………」
裏路地、1人の少女がひざを抱え、涙目で鼻水も出ていた
(お腹すいたよー)ズズッ
(母様、どこいったの?)ズズッ
(ここ、どこなの?)ズズッ
(これから、どうすればいいの?)ズズッ
少女は鼻水をすすり、大泣きするのを我慢していた
そんな少女に近づく足音
少女はその足音にビクッとし警戒を強める
足音の人物は少女の近くまでくるとしゃがみこんで
優しい口調で、少女に話しかける
「やーお嬢ちゃん、昨日ぶり」
「………」
「あーほら、昨日助けた…」
「………」
「取り敢えず何か食べる?」
そういって阿倍はコンビに袋からパンを取り出し
少女に差し出す