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ポンコツ戦闘アンドロイド サイトウ  作者: バグパイパイプ
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ブックマークを付けていただけると幸いです。

 『水素電池良好、頭部カメラ正常、脳反応を確認、再起動開始します』

その声と共に覚醒する。


「がッ....」

頭が痛い、全身が重く全身が鉛で硬められたような感覚だ。

『おはようございます、サイトウ様』

頭の中で声が響きその声に言い返そうとするが、声が出なくまごつく。

『声帯パーツの破損を確認お近くのメンテナンスショップを検索します.....エラー.....エラー....電波の良い所で再検索してください』


気分は二日酔い、と言っても只の二日酔いではなく飲み放題を行った後の二日酔いだ。

まずい安酒をしこたま飲んだ後そのままベンチで寝てたような...


もう一眠りをしようとまぶたを閉じようとする.....できない。

そもそも俺はこんなに目ん玉ひん剥いて生活をしていただろうか?

頭に手を持ってきて目を隠そうとする。

すると、金属の塊が目の前に伸びてきた。


ああ、夢のつづきか。

そのまま金属を目の上に被せ寝ようとする。

すると、視界の半分が隠れもう半分がまだ汚い天井を写していた。


汚えな、誰か掃除しろよ....

ぼーっとしながらその天井を見ていると頭がだんだんとハッキリしてくる。


「ガーー!」

汚いノイズの音が響く。

『サイトウ様、生体部品が破損しています現在オフライン』


上半身を持ち上げ両手を見ると機械の両腕が見える。

おお! ....どうなってんだ?

グーとパーを繰り返し動くのを見るとどうやら俺の手のようだ。

触覚は一応存在するみたいだ...気色悪い。

立たない寒イボを立てながら掛けられているシーツを退けるとそこにも機械の両足が見えた。


動くようで、寝台から見を乗り出し立ち上がる。


小さな機械音と、ギシギシと引っかかる関節。

痛みは無いが、砂には物凄く弱そうだ。


そもそもだ、俺は...名前は....分かるな、よし俺の名前は斉藤慶次だ。

記憶もしっかり存在している。

寝る前に食べた飯は天○のラーメン麺は特盛、ライス大だ。

だからこんなにしんどいのかとも思いたいが、恐らく違う。

そもそも何処だ此処。


汚い汁が垂れたり飛び散らしたかのような部屋。

金属製の扉に剥がれまくった壁紙、割れた鏡にうず高く積もった埃。


いつもの俺なら発狂して暴れたり泣きわめいたりするが、妙に脳みそが落ち着いている。

鏡を見ると四つ目の機械頭がコチラを見ていた。

見るな、見るなよ、俺は単眼派なんだ。


そんなことを考えつつガクガクとした動きで扉を開けようとする。

そこでふと気づく。

俺は全裸なのか?

いや、物が存在しないから大丈夫か.....


「ガーーーーー!ガーーーーー!!」

起きて目覚めたときはそれはびっくりしたが、正直どうでも良いとも思えた。

しかし! しかしだ! 

俺のフィフティキャルもといM2、50口径、弾丸ではなく砲身が有った所がツルツルになっていた。

パイパンとかではなくツルッツル、そりゃもう剃ったとかの話じゃなくキレイにだ。


言いようも無い怒りが拳を振り上げ思い切り壁を殴る。


『右薬指、小指破損』

五月蝿え! 俺の12.6mmを返せ!


壁から腕を引き抜くと、中に鉄柱でも入っていたのだろう、薬指と小指が曲がったまま戻らない。


....はぁ、とりあえず外だ、この糞ったれの改造を施したショッカーを同じ目にあわせてやる。

一応シーツを腰に巻いた俺は外に出た。



外は凄まじく汚い。梅田の側溝レベルだ。

あと俺には鼻が無いようだ、臭いを一切感じない。


鏡でしっかり自分の顔を確認しておけば良かったと思いつつ俺は歩く。

一応モールスを打ちながらだ。


「パパパン パンパンパン パパパン」

両手を打ち付け俺は歩く。

動きはシンバルを持った猿に近い。


そもそも此処は地下か?窓って言う窓が見えない。

手を叩き落ちていた人形を拾い暗い廊下を歩く。


しかし見づらい。

明かりは足元に薄暗く存在するだけで、ほぼ見えないと言っても良い。

さっきからガンガンと体を壁に打ち付ける。


また暫く歩くと、ようやく階段が見えてきた。

手を打ち鳴らしながら階段を登っていくと金属を叩く音が響いてきた。

思わず手を叩くのを止めてしまう。


音を立てないように階段を登っていくと光が見えた。

そして人影。

俺はもう一度手を叩きながら人影に近づくと相手は何かを喚いていた。

これは言葉なのか?

「パパパン パンパンパン パパパン」

精一杯の愛嬌を振りまく。

相手は恐怖の臭いを振りまいていた。

大きな剣を振り回し後ずさる。

影でよく顔が見えないが、体格的に男だろう。

ガッチリした体格に、怖気が走っている顔。

俺の脇には拾った汚い人形....かと思ったが、これ人形じゃねえ!

西洋人形の形をした気味悪いロボットだ!

いつからか分からないが、カクカクと頭を振りくるみ割り人形のような口はカチカチと開いたり閉じたりしている。


思わず俺はそれを階段に向かって放り投げた。

抱えていた脇には変な汁が付いていた。


金属の手で拭くと言うか伸ばしながら相手を見るとコチラに向かって剣を振り下ろそうとしている。

こいつモールスのSOSも知らないのか!

壊れたロボコ○プの様な動きの俺は咄嗟に動けず手で相手の剣を受ける。


すると他にも人が居たようだ、後ろから何かをぶつけられる。

その衝撃に思わず俺は前傾姿勢になり、頭部で攻撃を受けてしまう。


グワングワンと回る視界、頭がモゲたかのような衝撃に藻掻いていると、別の男が走ってくるのが見えた。


俺の頭を剣で叩いた相手はまた怯えるように走っていく。

とりあえず此処は倒れているフリをしておこう。

そう思い倒れてじっとしていると後頭部に違和感を感じた。

叩かれて壊れていたらまたオペ子が脳内で何か言うが何も言わない所をみると、怪我はないようだ。

するとニュルッと俺の顔を覗き込む顔が見えた。

さっきの人形だ。

どうやら怒っている顔だ、顎の動きがさっきより早く音がでかい。


思わず俺はそれを掴み走ってきていた男に投げる。

投げた人形は男の顔に当たったかと思うと、男は悲鳴を上げ倒れ顔から人形を剥がそうと暴れる。

生身の俺なら恐怖で失禁するが男はどうやらそんな訳でもなさそうだ。

だんだんと男の声が小さくなり、静かになった。


男の顔から剥がれた人形は、血だらけになりこっちに向かってくる。

呪われた人形ア○べルじゃねえんだよ糞! 思わず俺は飛んで逃げようとすると、それよりも早い速度で跳躍し飛びついてきた。

「ガッーーーーー!ガッーーーーーー!あああああ!」

『声帯パーツの再起動を確認』

「遅えよ! って違え!」

首に手を回され眼前に人形が寄る。


カチカチとした顎に怖いくらい見開かれた目。

拾ったときこんなに凜々とした目してなかった!


『ダウンロード完了、インストールを行うため、再起動まで10秒』

「再起動って何だよ! 待て! 再起動は後だ! 待てって 近い! 近い! ア」




『インストール確認起動します』

起動が完了すると、眼前に人形がまだ居た。

「ああ...瞼が欲しい...」

「あら、脳はしっかり機能しているようね、おはよう」

さっきの怖い顔から一転して愛らしい人形の顔に戻っていた。

いや、騙されない、この血だらけの人形は絶対呪われている。


人形がぴょんと俺の上から退く。

「アタシの名前はアリス愛眼ロボットよ」

霊は反応すると、喜んで近づいてくるって聞いたことが有る、もう遅いかも知れないが、無視を決め込む。

とりあえず俺が投げた”石”に当たった男を見に行く。


顔面は見にくく潰れており、眼球には彼女...じゃなかった、石の両手で引掻き回されたのだろう黒目が明後日の方向に向いて鼻も千切れ取られていた。


「おお...おおお...」

痛いもの見ると力が入らなくなる現象が有るだろ、今それだ。

「フン、アタシより、その男が気になるの? それよりさっき逃げた男、あいつも殺さなきゃ」

なにかヤバイこと言っているが無視をする。

「さあ、行くわよ! あなたは奥の部屋に居た戦闘ロボットよね!」

愛玩ロボットが宣う...いやいや、幻聴かな?

「何やってんの? 早く行くわよ!」

そう言いながら膕の油圧部分を引っ張る。


すこし、少しだけほんの少し

可愛いと思う。

いや、ロリろかペドとかじゃねえ、なんて言えば良いのだろう、ドール?

西洋人形と言っても小汚い全身血塗れで、変な汁が垂れているが可愛い、保護してあげたい。

髪を解いて良いベベ着させて飾りたい、そう思った。

少しだけ。







仕方なく俺はその人形...いや、アリスを肩に乗せ男が逃げて行った方向に歩く。

「アリスと言ったか?」

「ええ、私はアリス...貴方は奥の部屋に居た戦闘アンドロイドかしら?」

「戦闘ロボット? いや、俺はこう見えても人間だ」

「そんな見た目して人間? 冗談、貴方はアンドロイド....いえ、人形ひとがたで、魂が有るって言うのをひっくるめると人なのかもね」

「頭がおかしくなりそうだ....いや、脳みそが詰まってたら手遅れか? まぁそれは置いておいてだ」


片っ端から部屋を開いて閉じてを繰り返しながら歩いていると部屋の隅でガタガタと震えている男が居た。


「止めろ! 殺さないでくれ!」

「おお、さっき俺に入れたの言語か」

「そうよ、あと私の声を聞こえるようにしたわ」

「じゃあ相手には俺の声しか聞こえてないのか?」

「そうね、でアタシたちの事が外に漏れるのは不味いのよ」

「何でだ? っと、待て俺は今このちんちくりんと話してんだなんとかお前を殺さないよう仕向けるから」

「はぁ? チンチクリンってなによ!」

「嘘だ、可愛いアリスのためだ、俺もこんな所にずっと居て腐りたくないし外に出て野山を駆け回りたい」

「お、お前たちアレだろ! 皇国の密偵だろ! 俺は神国の密偵だ! どうだ? お前たちが俺を殺さなかったらお前たちを見てない事にするから」

「神? 皇国? 何だそれは」

「あとで貴方にインストールするわ、それより私達は此処で生まれ此処で死ぬのよ、神国も皇国もしらないわ」

「いや、俺は外に出たい....でもそうか、俺たちがお前を生かす価値って無くなったな」

こいつが近くの街に住んでる奴なら殺さずにこいつと一緒に街に入って生活!、的なことをしようと思ったが、こいつはヘマして....

「この国はなんて名前だ?」

「共和国よ」

共和国の奴らに睨まれたと....

「共和国だと!?」

「ええ、なにか知っているのかしら?」

「いや....」

共和国なら色々な国がくっついて手を組んでるんだよな?

「皇国までどのくらい有る?」

「お、俺が皇国の前まで案内する! どうだ? 俺を生かす価値が有るだろ!」

アリスはムスッとした顔でコチラを睨む。

「だから! 私達はここから動かないの! もう貴方が殺さないなら私が殺すわ!」

そう言ってアリスは肩で踏ん張ったかと思うと俺を後ろに弾き飛ばし密偵に突っ込んだ。

「グギャ!」

太い骨が折れる音と共に男は動かなくなる。

怖え、これが人とアンドロイドの違いか。

いやいや、そもそもだ、いやそうか...


俺はなにかの拍子にこのアンドロイドに入って、目覚め此処に居る。

うんそうだ、何処かで聞いたが、人が考えられる事はすべて現実で起こる可能性があるって聞いたことが有る。


正直この愛玩アンドロイドは捨てがたい。

こいつを捨てて何処かに行くって言うのはな....


「ふう、取り敢えずこれで良いわ、 貴方は....貴方の名前は?」

「俺の名前は....いや、斉藤だ斉藤慶次」

「サイトウケイジね、サイトウって呼ぶわ」

「いや、ケイジって呼んでくれ」

「ケイジね分かった、ならこの死体と廊下の死体を外に捨ててきなさい」

「分かった」

アリスは足元に来て両手を伸ばす。

それを俺は肩に載せ死体を脇に抱えた。



誤字脱字があったら教えてください

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