8話目
今回は2話投稿です、一応こっちが先ですが正直どっちから読んでも変わらないです。
加藤のお話。
俺の名前は加藤佳祐。17歳。学園の二年で生徒会書記をやっている。
生徒会なんて正直柄じゃないんだが入ったのにはそれなりの理由がある。
俺達大虎族の男は18歳の誕生日が来るまでに「番」を見つけて婚約する習慣があるらしい。今はもうめっきり廃れた習わしなんだが、うちの家は大虎族の名家でそういう古くからの習慣ってのに滅法うるさい。
俺にとって高校生活は婚約者を探すための期間でもあるってことだ。
けどいまいち恋だの愛だのよく分からんのよな。親族曰く見つけた時はなんか「ビビっとくる」らしい。
んで、その「ビビっとくる」相手を見つけるために他人との交流が多い生徒会に入ったわけで。
交流を求めているなら何も生徒会じゃなくてもいいだろうって?
俺の家の発言力に目を付けた生徒会長に直接誘われたんだよ。上目遣いで言われたらそりゃ断れないだろ。
たとえ家の力だろうが、番探し中の俺としては可愛い男に頼られるのは無条件に嬉しいもんだ。
そう、男だ。俺は男にしか興味が無い。
高校に入って2年目、それなりに可愛い子達も見繕ったしそろそろ「番決め」に本腰を入れようとしていた頃だった。
その日、今年の春入ってきた一年の凌河が中々生徒会室にやって来ないので、世話役として仕方なく俺は奴を迎えに行くことにした。
確か昼休みはよく友達と中庭飯を食ってると言ってたな。おっいやがった⋯⋯凌牙の影にいる黒髪のやつが例の友達か。
そいつに何かを言われてわたわたと慌てふためいているようだが。さては今日の集まりのことすっかり忘れてやがったな?ンー??(怒)
「おーい!凌河ー!!」
「あっ、加藤先輩!」
顔にあからさまに「やべえ」と書いてあるのを見るに俺の予想は当たっていたらしい。
一言きっちり叱っておこうと思いながら凌河に近づく。すると奴の隣から鋭い視線を感じた。そちらに目を向けた途端、思わず目を見開いた。
さらりとした癖のない綺麗な黒髪は襟足が少し長めで少し肩にかかっている。その上にちょこんと乗っかった毛並みの良い耳とゆらゆらと揺らめく尻尾。顔は非常に整っていて色白美人だ。凛とした鋭い目付きに金色の瞳で無表情なせいで、少々きつい印象だ。
正にクール系美人。こんなタイプ、2次元ならまだしも現実じゃそうそうお目にかかれない。存在感が凄まじい。
というかこんなに目立ちそうな見た目をしているのにどうして今まで存在に気が付かなかったのだろうか?
「月燈は話したことなかったよな、紹介するわ!この人は加藤佳祐さん、俺らの一個上で生徒会の先輩!!」
突然の美人とのエンカウントに驚く俺を後目に、ニコニコと屈託のない笑顔で俺を紹介する凌河。
おっと挨拶しねえと。
「俺らの一個上…ってことは凌河と同い年の子か!どうも初めまして、俺は加藤佳祐、2年だ。生徒会の書記と凌河の指導役をやってる」
ニッコリと笑いかけて自己紹介をする。
「⋯矢ケ崎月燈、です」
「月燈君ね、宜しく。⋯もしかして結構無口なタイプ?」
「人と話すのは⋯あまり得意じゃない、です」
何処かたどたどしい言い方が可愛いな。
面白そうだしちょっと色々話してみようか。
「へー凌河の友達っていうからどんなタイプかと思ったら随分大人しいんだね、イケメンだしクールビューティーって感じ」
そう言いながら顎を持ち上げ顔を覗いてみる。金色の目はよく見るとはちみつ色でとても綺麗だ。
「別にそんなんじゃないです、単に口下手なだけですから。あと顔近いです」
「そうかな?結構モテそうだと思うんだけど。ていうか俺も割と好みかも、なんてね」
「はあ…」
冗談めかして言ってみたが、正直に言うとこの時点で既に俺は月燈が非常に気に入っていた。
突然の状況に微動だにしない上に、俺の事を続けてじっと観察し続けてくる様子がとても好ましかった。
「あ、突然近寄って悪かった、思った以上に動じないんだな。気に入ったかも」
そう言って笑いかけると、少し困ったような複雑そうな顔をするので尚更可愛かった。
俺は今まで感じたことの無い感覚が胸に広がるのを感じていた。
その後どうやら端の方で固まっていたらしい凌河に割り込みされたりそのまま生徒会室に連れて行ったりして月燈とは別れることになったんだが、また今度絶対に会いに行こうと決めた。
そんでもってまたあの感覚を覚えたら。
そんときはあいつを番にするのもいいな。
自然とそう思った。