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1話目

見切り発車


突然だが、この世に「異世界転生」というものを本気で信じている人間は、どれだけいるのだろうか?


勿論俺は信じちゃいなかった。

くだらないフィクションの一つだと思ってたよ。

漫画やネット小説なんかで見てて面白そうだな~とは思ったけどな。



だけどさ、まさか本気で自分がそんな目に遭うなんて誰が想像できる?




「はあ…」




俺──矢ヶ(やがさき)月燈(つきひ)は軽く左手で頭痛のやまない頭を押さえ、私立永門学園高等部の校門前で思わずため息をついていた。



高校入学という晴れの日に、何故俺がこんなにも憂鬱な気分になっているのか?

その理由を説明するためには今から一週間前に遡る。


その日俺は高熱を出した。

40度を超えるそれに、うちの家族は大いに心配した。

俺は昔から風邪なんぞ引いたことなかったからな。

面白いくらいに健康体だったはずなんだがその時は思わず意識を失う程度には熱を出した。



だがそのお蔭で思い出せた。

俺が転生者だということを。



転生前の俺は事故死した高校生だった。いつものように遅刻ギリギリで家を出て、チャリに乗って爆走していた際に横からぶっ飛んできた車にやられてペチャンコだった。


別に俺が爆走してたせいじゃないぞ?信号無視した車に横から別の車が突っ込んできて、吹っ飛ばされた車体に俺まで巻き込まれたんだ。

だから俺は悪くないぞ。決して悪くないはずだ。多分。



さて、そんなこんなで死んでしまった俺はどうやら転生者となっていたようだった。




…それだけならまだ良かったんだけどなあ…。




「よっ!おはよ、月燈」


後ろから肩をぽんと叩いて軽く声をかけてきたのは俺の幼馴染み、平澤凌河(ひらさわりょうが)だ。


赤茶色をした自慢の犬耳(・・)をピコピコと動かしつつ、いつものように屈託のない笑顔で俺の横に立つ。


「まーたぼんやりした顔しやがって!ほら、さっさと行くぞ!」


そう言ってそのまま俺を引きずっていく。


「まったくお前は俺がいねえと駄目なんだからよ!ずっと傍にいてやんねえと気が気じゃねえぜ全く!!」


わあ、心做しか顔を赤くしてる上に尻尾までぶんぶん振っちゃって…こりゃあ相当に喜んでるなあホホエマシイナ…。


そんな幼馴染を見ながら俺は頭から生えた猫耳(・・)をぺたんと垂らして再度ため息をつく。




…ああ…憂鬱だなあ…。



これから始まる高校生活に不安を抱きながらひとりごちる。



ここが『獣耳だらけの異世界BLゲームの世界』でなけりゃあもっとマシだったのになあ…、と。

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