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見て観られて  作者: 柏木 アキラ
始まり
3/15

卒業

 3月末。俺は中学を卒業した。これといって感動もなく、周りが旧友との別れを悲しみ、もしくは未来への希望を語り合っている中、俺は一人普段通りに帰路についた。


 確かにこの帰宅風景は今日で最後。確かに少し名残惜しい気もするが、俺は明日東京へ旅立つ。そう思うとこの見慣れた景色なんざどうでもいい。


 この何ともパッとしない街の風景、土が混じった汚い色した道端の雪。周りを冷静に見ていると少しでも名残惜しいと感じたことさえ滑稽だ。


 周りの人間からすれば思い出の詰まった場所なのかもしれないが、俺には何にもない。ただの通過点であり、そこに何ら思い入れなどないのだ。


 むしろ憂鬱な風景でさえある。あのクソオヤジと二人で住むあの家に帰らなければいけないという。かといって学校にも居場所はない。


 俺の安息の地は、俺の部屋だけだ。


 だがそのためにはこのつまらない風景を横目に流し、家の玄関を開けてリビングを通る。親父が俺より先に家に居ることなんざよっぽどのこと(有休で暇してる)がない限り居ない。そして階段を上り俺の部屋につく。鞄を降ろし部屋着に着替えそしてさっそく荷造りの開始だ。


 といっても大したものはない。服にゲーム機とソフト数本。漫画は重いしかさばるし、何よりもう読み飽きた。あとは少しの小物を入れて終わり


 必要なものだけ詰めてもあまり部屋の見た目が変わらないのは、普段からキレイにしているからなんだろう。これといった趣味がないからとか決してそんなことではない。


 お、大きな変化ならあったさ!ゲーム機がない!うん、これは大きい、すごく大きい。そう言い聞かせよう。


 なんかもうちょっと趣味でもあったらいいのかもなあ。いや、でも荷物がかさばらないのはいいことか。引っ越すの楽だし。


 荷造りも終わったので俺は、ただ途方に暮れていた。することがないのである。


 では少し考え事をしよう。


 まず東京に行って何をするか。学校ではどういう振る舞いをするか。バイトをするかどうか。いろいろと考えてみるが、あまりこれだ!ということが浮かばない。


 そもそも行った事のない所で何をするかなんて、行って見ないと分からない。学校での振る舞いなんて、いきなり明るく爽やかに、目標は友達100人!……なんて事ができる気は全くしないし、する気もない。というか明るく爽やかな自分を想像してみたが、なんか気味が悪い。


 まったくもって俺のキャラじゃないというか、背伸びしすぎにも程がある。


 あとはバイトだ。これは当分必要ないだろう。生活費はくれるみたいだし。そもそもコミュ力のない、少しキレやすい俺にできるバイトがある気がしない。


 あとはそうだな、部活か。強制というのが気に入らないが、何のことはない。適当に文化系の部活に籍を置いて、初日以降行かなきゃいい。むしろ来ないでくれ、と思われるような事をすりゃいい。


 よし、完璧だ。すごくネガティブな結論しか出ていないが、まあいい。俺は生きたいように生きる。ただそれだけだ。


 いや、それで本当にいいのか俺!


 悶々と悩んでいると気が滅入ってきたので少しサンドバッグでも叩いて汗を流そう。そう思い立った俺は道場へと向かうことにしたのだった。

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