いざ森林調査! 3
案外早く投稿出来ました...。
これから!これから投稿遅くなると思いますから!
睨み合うカノン達と巨大ゴブリン。
先に動いたのはカノン達であった。
「逃げろぉぉぉぉぉ!!!!!」
カノン達は巨大ゴブリンに背を向ける形で全力疾走。
そこに恥などは無かった。
「なんなんだよ、あれぇ!?」
カノンが走りながらリアに問う。
「おそらく、ゴブリンの変異種でゴブリン大量発生の原因だろう!」
「だろうな!」
カノンは走りながら考えた。
あれ?俺のステータスだと勝てるんじゃね? と。
だが、一度走り出した足は止まらない。
振り返ると巨体を揺らしながら確実に追いかけている巨大ゴブリンの姿が。
カノンだって人間だ。恐怖という感情もある。
『逃げろ』と体が叫んでいる。
だから走る。走りまくる。走って走って走って...。
ゴチーーーン!!!
いっっっってぇぇぇぇぇ!
走ることに専念しすぎて壁にぶつかってしまったようだ。
「.....何をしている、カノン.....。」
「カノン殿.....。」
後から来た二人から哀れみの視線が向けられる。
痛い痛い痛い!視線が痛い!体も心も両方痛い!
と一悶着あった後。
やはり巨体からか。
息粗くした巨大ゴブリンが遅れてやってきた。
ニタァァァと笑う。まるで獲物を追い詰めたかのように。
そっか。壁にぶつかったってことは行き止まりなのか。
「っく...!どうする、カノン!」
「まぁ、大丈夫だろ。」
「何を言っているのですか!?
カノン殿は強いですが、あの変異種は異常です!
普通、ゴブリンは集団で行動し、相手に逃げられた場合、追いかけません!
しかし、奴は追いかけてきました!奴は相当の自信があるようです!
さすがのカノン殿でも...!」
「俺のこと心配してくれているのか。嬉しいなぁ。」
「こんな時まで冗談は言うな!真面目に考えろ!打開策を!」
話をしている時も巨大ゴブリンはカノン達に近づいていた。
「あるぞ。打開策。」
「っ!なんだ!」
「俺が奴をぶっとばす。」
「ふざけるな!」
リアが激昂する。
「私はこんなところで死ぬわけにはいかないのだ!私には...。あたしには...!」
一瞬、リアの表情が変わった。
『鳳凰の翼』団長の『リア』ではなく、年相応の少女らしい『リア』へと。
その続きは聞くことが出来なかった。
巨大ゴブリンが自らの拳をリア目掛けて振り下ろしてきた。
あの巨体から繰り出されるとは思わないほどの速度でリアに迫ってくる。
一瞬のことにより体が動かなかった。
リアはその時確信した。
あぁ。私はここで死ぬのかと。こんなところで。
全てを諦めて、攻撃を受けようと目をつぶった。
そしてーーー。
ーーー何かによって吹き飛ばされた。
急に飛ばされたため、驚き目を開ける。
そして知る。
リアはかばわれたのだ。
誰でもない。
カノンに。
カノンのような細身の体では巨体ゴブリンの攻撃は受け止めることは出来ず。
遠くの壁へと吹き飛ばされてしまった。
「え...。」
リアはカノンが何故自分をかばったのかが分からなかった。
「カノン殿っ!」
レースが今にも泣きそうな顔でカノンの元へ駆け寄ろうとする。
今のレースの頭の中はカノンへの心配で埋まっていた。
だからこそ致命的な事を見抜かした。
巨大ゴブリンの拳がもう一度振り上げられている事に。
もう誰もリアをかばう者はいない。
再び放たれる高速の拳はリアを今度こそ仕留めーーー
ーーーることはなかった。
突然。
巨大ゴブリンの腕が宙を舞った。鮮血をまき散らしながら。
「グギャァァァァァ!!!!!」
巨大ゴブリンの顔が苦痛に歪む。
「ーーー怪我は無いか?ってあるわけ無いか。」
リアの前には。
大きな剣を持ったカノンが立っていた。
_______________________________
『う~ん。
期待したがやっぱりこの世界のモンスターは弱いな。』
壁を背もたれにしてカノンはそんなことを考えていた。
カノンはわざと巨大ゴブリンの攻撃を受け、確かめていたのだ。
このモンスターの強さを。
異常種なんて言うから少しはマシな戦いになるかと思った。
だが今の一撃でカノンのHPは減りはしなかった。
『なんだ。クソ弱いじゃん。』
とそんな事を思っていたとき。
もう一度高々と振り上げられた拳が下ろされようとしていた。
巨大ゴブリンの拳がリアに迫っている。
他の人から見るとその攻撃はとてつもなく速く見えるだろう。
だが。
カノンにとっては。
その攻撃は遅すぎた。
即座に剣を手に取る。
「ファイクエ」では、武器は帯刀せず、異空間に置く。
攻撃ボタンを入力すると武器が手の中に現れる。ある程度攻撃ボタンを押さないでいると勝手に異空間に戻るというシステムだった。
この世界は当然のことながら攻撃ボタンなるものは存在しない。
だからこそカノンは、昨夜剣を呼び出す方法を探したのだ。
結果。
頭の中で武器を呼ぶようなイメージをすれば剣は現れた。
「来い」や、「コール」、「現れろ、地獄の雷よ!」とかでも良かった。
口に出さなくても良いから恥ずかしくない。
まぁ、普通に武器の名前をイメージしているが。
彼は心の中で叫んだ。
カノンの相棒でもあり、「ファイクエ」の中で最強で最凶の武器の名を。
ラスボス「ユートフィア」の素材を、余すことなく使った両刃剣の名を。
『来い!「絶望ヲ喰ラウ希望ノ王」!』
どこからともなく現れカノンの手の中に収まる。
それは闇と光、背反する二つを合わせ持つ神剣でもあり魔剣でもある。
大剣でもあり、双剣でもある剣。
それこそがカノンを最強たらしめる武器、「絶望ヲ喰ラウ希望ノ王」である。
ちなみに。
武器を作った際、製作者が名前を決めることが出来るようになるアイテムをわざわざ使い、
この名前にしたという黒歴史も持っている剣であった。
_______________________________
カノンは持ち前の瞬発力のステータス補正により、光速すらも超える速度で巨大ゴブリンの拳を斬る。
瞬間。
闇と光の行き場の無い怒りをもろに受けた巨大ゴブリンは腕を斬られただけで悶絶。
手を斬るだけでは勢いがとどまる事を知らず闇と光は体を壊していき。
そのまま息絶えた。
「へ.....?」
レースが驚きと困惑が入り交じった声を出す。
今何が起きたか分からなかった。分かるはずがなかった。
カノンが放ったのは人間の目にはとらえることが出来ないほどの斬撃。
レースの目には、
瞬きをした後には巨大ゴブリンの手が宙を舞っていた。
それほどの早業だった。
だが。
リアの目には見えていた。
リアは周りの人よりも動体視力が優れていた。
人?
いや違う。
リアは周りの『 』よりも動体視力が優れていた。
「.....」
今起きたことを理解しているが故の沈黙。
カノンへの感情が恐怖へと染まっていく。
こんな早業をたかが人間が出せるものなのか?と。
「あれ?どうかしたか?」
カノンがリアに訪ねる。
「どうして...。」
「ん?」
「どうして私をかばったのだ!?
自分が死ぬかもしれなかったのだぞ!?」
「そんなの簡単だよ。誰かを守るのに理由はいるかい?」
「っ!」
「それだけじゃ駄目かい?」
そう言って笑う。
「い、いや、駄目ではない...。」
「そっか。なら良かった。じゃあ早く帰ろうか。俺も早くみんなとご飯食べたいんだ。」
「あ、あぁ。」
「ほら。レースも。早くこんな所から出ようぜ。」
「.....。」
「おーい?レース?」
「.....。」
「?」
「凄すぎです、カノン殿!
前から凄いとは思っていましたがまさかここまでとは思いませんでした!」
「おわっ!急に大声出すなよ...。ビビった~。」
「ごめんなさい...。」
「気にしてないよ。」
レースの頭をなでなで。
「はふぅぅぅぅぅ。
も、もう!やめてください!」
「ハハハッ!ごめんごめん。」
二人が笑いながら歩き出す。
「リア~。行くぞ~。」
カノンがリアを呼ぶ。
リアは思う。
もしかしたら。
私のことを自分の事を気にせずにかばってくれたカノンなら。
私の秘密を知らなくても守ってくれたカノンになら。
私の秘密を。
打ち明けられるかもしれない。
「あぁ!分かっている!」
そんなことを思いながら。
二人の後を追った。