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異世界で第二の人生始めます  作者: ユキサキ
4/22

ハジメテ 1

ちょっと重いかな?

人を殺した。

人を。

殺した。殺してしまった。殺してしまった?いや違う。殺したんだ。この手で。

手の平を見る。血でドス黒くなっていた。

俺が人を殺した俺が人を殺した俺が人を殺した俺が人を殺した俺が人を殺した

俺が人を殺した俺が人を殺した俺が人を殺した俺が人を殺した俺が人を殺した

殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した殺した

ころしたころしたころしたころしたころしたころしたころしたころしたころしたころしたころ

コロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロシタコロ

・・

また殺したのか?俺は?




「うわぁぁぁぁぁ!!!!!」


「!目が覚めたかね!?良かった.....。」


あ...れ...?ここ.....は?

男の人の声が聞こえる。


「君が倒れていたから手当したんだ。大事にならなくて良かった...。

 痛むところは無いかい?」


「あっ...。はい...。」


「おっと。紹介が遅れたね。

 私の名前はアルスネル。商人をやっている。。

 新しい店を王都に開くつもりでいたんだが、行く途中に倒れている君を見つけてね。

 手当てして馬車に乗せたんだ。

 君の体は無事だったけれど、何故か辺りが血まみれだったからね。急いで手当てしたという訳さ。

 倒れる前の事、何か覚えてないかい?」


倒れる前...。

嫌というほど覚えている。

『辺りが血まみれなのは俺がやったからだよ。盗賊を切り刻んで殺したんだ。』

そいうべきだった。実際そうなのだ。でも...

話そうとすると思い出す。あの時の全てを。

忘れようとしても体が覚えている。


「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


忘れたい!忘れたい!忘れたい!忘れたい!忘れたい!


「お、落ち着いて!大丈夫だから!ね!おじさんに全て話してごらん?」


全てを...?

いいのか?話しても。

一瞬迷ったが、誰かに聞いてもらいたかった。

俺の心の内を。


俺はあの時の事を全て話した。

アルスネルは真剣な表情で聞いてくれた。


「.....」


話し終わった後の静寂。

アルスネルが先に言葉を発した。


「うすうす気付いてはいたんだけどね...。『君が殺したんじゃないか』ってね。

 よし!ここはおじさんの昔話をしてあげよう。」


「は...?今の話とあんたの昔話、何の関係が...?」


「まぁ、聞いててよ。」


それから、アルスネルは自身の昔話、商人になる前、自分が盗賊だった頃の話をしてくれた。

盗賊だった頃、何度も盗みをしたが、人を殺したことはなっかたそうだ。

しかし、ある仕事の時に、人を殺したらしい。

その時は盗みがばれて、無我夢中だったらしい。


「殺した時は何ともなかったんだけどね。ある程度したら異変が起き始めたんだ。」

 

いわく、道を通りすぎる人全員が自分が殺した人の顔に見えたという。


「もうそれから、盗みが出来なくなった。怖くなった。あれだけ盗みをしていたのに。たった一回の殺人でね。

 その時盗賊をやめて、そして現在に至るんだよ。」


「人を殺した時の感情は痛いというほど分かる。でもね。この世界では、命を奪 うことは簡単に出来てしまうんだ。

 現にモンスターを何とも思わずに殺しているしね。

 じゃあ、モンスターを殺したときに、慈悲深い気持ちになるかい?ならないよね。

 だから、僕はね、一つの命を消したときに、その命分強くなろうと思ったんだ。

 この世界では命を奪うことは当たり前だ。ご飯を食べるのだって立派な『殺命』だ。

 だからこそ、奪ってしまった命の分だけ、前を向くようにしたんだ。

 君もね。『人を殺した』という事実に縛られないで欲しい。

 確かに君は人を殺した。それは変えられない事実だ。

 でもね。もし。もし、あの時君が盗賊を殺してなかったたら、その後通りかかった人が殺されていたかもしれない。

 君は命を奪った。でも、助けた命もあるんじゃないかな。」


君は命を奪った。でも、助けた命もあるんじゃないかな。


この言葉は、俺の心の中に染み渡っていった。

俺は...誰かを助けたのか?

そんな都合の良い解釈をしてもいいのか?

でも...そう思いたい。今は。そう思いたい。


「...ありがとうございます。少しは心が軽くなりました。」


「いえいえ。どういたしまして。」


すっと、心から毒のような物が出て行くのを感じた。

あぁ...。そうか...。俺は誰かに『お前は悪くない』と言ってもらいたかったのか...。


頬を雫が伝っていく。

初めて人の温かさに触れた、ある夜の出来事だった。






「ところで、この馬車はどこに向かっているんですか?」


あれから、五日ほど経った。


「あれ?言わなかったかな?王都ラバースーンだよ。」


ラバースーン?そんなのあったかな?「ファイモン」に。

そういえば、『始まりの草原』にも馬車が通れる道なんて無かった気がする。


「この国最大級の王都でね。人がたくさんいるから、物が売れるかなと考えたん だ。

 君も一緒に来るかい?.....というか来るしか選択肢はないんだけどね。」


ハハッと笑う。

俺としても言葉は分かるが、文字が読めないため、通訳が欲しいと考えていた。

アルスネルは人が良いし、言ってみるか。


「はい。付いていきます。それなんですが.....。

 俺は村から王都に行こうとした田舎物でして...。文字が読めないんですよね。

 だから、僕が安定した職に就くまで一緒にいてくれたら俺も助かります。」


「もちろん!

 それで、安定した職ね...。君なら大丈夫か。

 王都にはね、「冒険者」という職業があるんだ。国から依頼を受けて報酬をもら うっていう。

 モンスターなどを狩るから、普通は命の危険があるから、オススメしないんだけ ど。

 君のような強い人なら大丈夫だと思うよ。」


「そうですか!ありがとうございます!」


「それで、今軍資金はいかほど...。」


「はい!0¥です!」


「え!?0¥!?それは大変だね...。

 いくらかお金をあげようか?」


「!本当ですか!?ありがたいです!」


アルスネルから1000¥をもらった!

やっぱりいい人だなぁ。アルスネルさん。


「本当にありがとうございます...。」


「いいよいいよ。気にしないで。

 .....あっ!王都が見えてきたよ!」


遠くを見てみる。

言葉通り壁で囲まれている街のようなものがあった。


「あれが王都ラバースーンだよ。」


あれが。王都ラバースーン。

不安と興奮がせめぎ合う俺の心を、微笑むかのように馬車がゴトンゴトンと音を鳴らした。



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