女だけの戦い
前話の続き(?)です。
夜遅く。
バーベキューパーティーも終わり、ウェルスとカノンが寝た後。
レースはファロンと一緒にリアの部屋に向かっていた。
「リアー。開けてー。」
「はいはーい。」
部屋から出てきたのはリア。だが、纏うオーラが普段と違う。
やわらかな、年相応の女の子の雰囲気。
「話ってなーに...」
とここでリアの視界にファロンが入る。リアは慌てて、
「は、話とは何だ!は、早く言え!」
と言うが、もう威厳も何もない。
ファロンも目を大きく開いて驚いている。
「リアはね、自分に相当なマインドコントロールをしているの。『鳳凰の翼』団長としているときは凛々しく、気高き騎士になれるようにね。逆にそれ以外は今みたいに普通の女の子になるんだ。」
ファロンは驚きながらも「レースさんは物知りですね」と言う。
レースは「幼馴染みだからね」と補足した。
「だから」
レースはリアとファロンの腕を掴んで
「女の子三人で会議だ~!」
と夜に似つかないテンションでリアの部屋に入った。
..........
.....
...
「で、話ってなに?」
ファロンにバレてしまった手前、もう隠す必要がないため、普通の口調で話す。
「うん。ここらでちょっと話した方がいいかなって。」
とレース。
「単刀直入に言うよ。ここにいる全員、カノン殿のことが好きだよね?」
場が静まる。一番に口を開いたのはファロンだった。
「...はい。私はカノンさんが好きです。」
顔を赤らめながら言う。考えてみればファロンが恥ずかしがっている姿は初めて見たかもしれない、とレースは思った。
「カノンさんは私が逃げた絶望を倒してくれました。私を自由にしてくれました。だから好きです。」
ファロンは勇者の件を言っているのだろう。
「私も似た理由かな?始めは圧倒的な強さに怖がったけどさ、強いのに優しいっていうこの、何て言うんだろう、二律背反?的な感じが段々と好きになってきた感じかな。」
そういう意味ではカノンの予想は外れた。レースは始めからカノンのことを好きではなかったのだ。
レースとファロンはリアの方を向く。リアは視線を感じ取ると慌てて、
「わ、私は別にカノンのこと好きじゃないよ!?」
とまくし立てる。
「そんな訳ないよね?」とレース。
「まさか隠せてたと思っているの?」
「う、うぅ。」とリアがうろたえる。
リアがレースに負けている。いつもの二人からは想像も出来ない姿だ。
「まぁ、別に良いんだけどね。リアがカノン殿のことを好きじゃないと言い張るのなら敵は少なくなって済むし。」
「え、いや、その。私はカノンのことを...。」
「ごめんね。今までリアに付いてきただけだけど、恋だけは負けたくないんだ。だから。」
と一回言葉を区切る。
「明日、カノン殿にこの気持ちを伝える。」
リアとファロンが面食らったように驚く。
「ほ、本当に言っているの!?」
「うん。本当だよ。」
「勝算は!?」
「うーん。自信は無いけど明日ぐらいしかチャンスないし。」
と言ったところでリアの方をチラリと見る。その視線には嫉妬と願望が込められていた。
「ようするに。」
と無理矢理話しをまとめる。
「もし私がカノン殿と結ばれても文句は言わないように!逆に私以外の人がカノン殿と結ばれても何も思わない。心から、とはいかないかもだけど祝福する。約束するよ。」
その言葉にファロンは賛同、リアは曖昧に頷いた。
今夜、リア、レース、ファロンの間に協定が結ばれた。
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話が終わり、二人が帰った後。
リアはベットに横になって考えていた。
(私は...カノンのことが好きなのかな...?)
いや、自分でも分かっている。分かり切っている。
私はカノンのことが好きだ。大好きだ。
でも。でも...。
(私の『秘密』を知ったとき、カノンは...何て思うだろう...。)
その思いが邪魔をする。レースすらも知らない、リアの秘密。
それをカノンが知ることとなるのは、そう遠い未来では無い。その時彼はどんな反応をするのか。それを知っているのはこの世に誰一人いない。