現実世界が嫌だから異世界に行きました! 1
俺、唄方花音はこの女っぽい名前も含めて現実の自分のことが嫌いだった。
勉強も出来ない、運動も出来なかった。
中学の時、顔はそこそこいいと評価されたことがある。
だが、趣味がゲームにアニメにマンガに小説というのを知られたとたん、まるで汚物を見るかのように冷たい視線を向けられたことを今でも覚えている。『オタク』というレッテルを貼られたのである。まぁ否定はしないが。
現実の自分に嫌気が指してきた頃に「ファイクエ」と出会った。俺の特殊な性癖もあったため、せめて、仮想の世界ではしたいことをしようと心に誓った。
ゲームの中では友達をたくさん作ろうとした。エルフのアバターを使っている人と恋人っぽい関係になろうともした。
だから。人が集まるようにただただ強くなった。
でも。仮想の世界でも結果は同じだった。
強くなるたびに離れていく人。最後は必ず一人になる。
だから俺は...異世界に来たんだ。
「.....っ」
心地よい風によって俺は目を覚ます。こういう時って『意識が覚醒する』って言うこともあるよね。
中二臭いから使わないけど。
「....えっと?ここはどこだ?」
辺りを見渡す。
広がるのは緑の草は生い茂る草原っぽいところ。あれ?なんか見覚えが...
「あっ。思い出した。ここ『始まりの草原』じゃん。」
そう。ここは「ファイナルモンスターイータースタークエスト」で、始めてログインした時に立っている場所だった。ということは.....
この世界はゲームの中の世界ってこと? てことは...
「やっぱり。」
装備も「カノン」と同じものだった。
ラスボス「ユートフィア」の装備である。ちなみに俺は両刃剣使い。剣2本と大剣に変形するなんともロマンにあふれた武器である。
防具もマントっぽいものが付いているこれまたかっこいい防具である。
あきらかに軽装だが、防御力がめちゃくちゃ高いのはご愛敬。
身体的特徴は「花音」と同じで黒髪黒眼だ。
「さて、これからどうするかな。」
メニュー開いてマップみないとなぁ。
あれ?そういえばメニューってどう開くんだろう?う~ん。
思えばいいのかなぁ。メニューって。
メニュー!
シーン...。
かのんはめにゅーをよびだした!しかしなにもおこらなかった。
う~ん。オープンも付けるか。
メニュー、オープン!
すると。見慣れたメニュー画面が目の前に現れた。
「うわぁ!」
思わず声が出てしまった。周りに人がいなくて良かった。
メニュー画面はゲームと一緒で、ステータス欄、アイテム欄、装備変更欄、スキル欄、フレンド欄、オプション欄、そしてログアウトボタンがあるが、ステータス欄とアイテム欄に装備変更欄、スキル欄以外は使えなくなっていた。これでログアウト出来たら逆に面白いけどな。
アイテムや装備は全部ある。中には高く売ることが出来るアイテムもある。この世界での軍資金は有り余るほどあるぞ!はぁっはっはっはっは!
と、ここで一つの通知が。
『この世界と「ファイモン」の通貨価値は違うから気をつけてください。
いくら「ファイモン」の中でお金を持っていたとしてもこの「現実」では無一文ですごめんなさいw
一からお金を貯めてください。では。第2の人生をお楽しみ下さい。』
「..........」
「ンだとゴラァァァァァ!!!!!」
やべぇ。どうしよう。無一文だ。
もしかして装備としての効果も無くなるとかはないよな。
...ないよな?いや、ないでしょ。そこまで運営も鬼畜ではないだろ。
メニューを開く。ステータス欄を見るには...また念じればいいのだろうか。
ステータス、オープン!
無事開くことに成功。そこには...
==============================================
名前 ウタカタ=カノン Lv1
0¥
12600スキルポイント
HP 45600/45600 (装備+35600)
MP 12700/12700 (装備+10000)
攻撃力 2006300 (装備+150300)
守備力 30560 (装備+25560)
魔法攻撃力 0 (装備+0)
魔法防御力 0 (装備+0)
瞬発力 67890 (装備+40890)
==============================================
いろいろな感情が渦巻く。安心と動揺。動揺の方が大きかったから先に反応しよう。
魔法使えるの!?えっマジで!?やぁっっっっったぁぁぁ!
Lvってなに!?もしかして上がるのかな!?
ふぅ。落ち着いたぜ。
安心の方はいわずもがな、装備がちゃんとステータスに作用されているな。よし。
自慢では無いがこのステータスは最強だと思う。しかもLv1だし。
「ファイモン」はレベルアップ制では無かったが、モンスターを倒すと手に入る「スキルポイント」を使って、スキルを習得することによってステータスを上げることが出来るのである。『攻撃力上昇・小』的な。ステータスの他に、パッシブスキルやアクティブスキル、アーツ(必殺技みたいな)もある。
あれ?なんで名前が「カノン」じゃなくてフルネームなのかな?
.....あっそうか。この世界が俺の『現実』なのか。
本当に異世界に来たんだなと実感する。
ここでどんなことが俺を待っているのだろうか?
まだ見ぬ世界に思いを馳せながら、大いなる一歩を踏み出した。