前園キャプテンの挨拶
グランドでは前園キャプテンを中心に現役部員が新入生に向かって並んでいた。
その気迫、ダテに球を追いかけていない。
何もいえないオーラが漂っていた。
前田正則
(すげぇ、これが高校野球か…)
前田はそれに圧倒されていた。
前園キャプテンの演説が始まった。
前園裕也
「ようこそ!我が白虎学園野球部へ。長年ウチの野球部に憧れて来た者もいれば遠い地から来た者。様々だと思う!今年もまたそうやって80名の球児達が来てくれた!しかし…」
前園キャプテンは一拍置いて低い声でこういった。
前園裕也
「実際にグラウンドに立ってプレイするのは半分以下だ、ましてやレギュラーはそれの半分以下、10人にも満たない時もある」
前田正則
「………………」
半分浮かれていた新入生達に前園は現実を突きつける。
前園裕也
「青春を味わおうとしてマネージャーと恋したり、学校から強い奴らをスカウトしたり、友情が芽生えたりナインの心が一つになって優勝をつかむ話し。最近そういう野球漫画が増えてきてるが…」
また一拍
前園裕也
「この学校はそんなのは皆無だ、ここは弱肉強食の世界だ、3年でも実力が無ければ平気でベンチから降ろすチームだ!そこに入ったからにはそれなりの覚悟をしてもらうからな」
グラウンドに緊張した空気が漂う。
前田正則
(これが強豪校の野球か…)
前田は改めて強豪校に来たのだと実感した。
前田と雅昭の中学は野球は強くなかったが2人で強くしていった経歴がある。
だからこういう伝統校の野球には縁が無かった。
前園裕也
「そして、新入生は5月までにポジションを確定させてもらう。中学までのポジションは関係ない。スポーツ推薦だろうが何だろうが生き残りたければ今のポジションを磨くか、自分が生き残れる場所を見つけるんだな」
前園キャプテンの演説が終わった時、新入生の殆どは頭が真っ白になっていた。
熊谷満
(俺も去年はそれ聞いてビビったなぁ~)
2年の熊谷満は前園キャプテンの演説を聞いて1年前の自分を思い出していた。




