石大青陵 9回表
結局8回も無得点で9回に来た。
前園裕也
「延長になると、11回が限界かな?」
金城辰昌
「ここで決めたい。延長は勘弁してくれ」
内藤修三
「9回まで来た。ここで決めるか…。延長に持ち込むか…」
アナウンス
「9回表、石大青陵高校の攻撃は、1番、センター、内村くん」
内村学
(このまま延長に持ち込むかよ)
ビッ
カキィ
橘主審
「ファール」
山田信司
(裕也。この回の打者は気合いが違うぞ。延長に持ち込めば、継投が勝負になるかもしれん。)
継投に関してだった白虎学園は自信があった。
白虎はブルペンで投球練習中の藤沢にさっき熊谷と代わった奥山と藤見が待機してる。
熊谷はともかく、奥山と藤見はそれなりに成績に残してるリリーフ投手だ。
その反面、石大青陵は金城以外、白虎レベルの高校を抑えられそうな投手はいないに近い。
ブルペンでは山本と片田が準備してるが、どちらもあまり良い投手とは言えない。
もし高校にトレード制度があったらコントロールが悪い熊谷との1対2トレードが成立しそうなレベルである。
バシイ
橘主審
「ボールツゥ!」
B●●
S●●
O
内村学
(平行カウント)
西田基久
「どんどん打っちゃえ!内村先輩!」
山田信司
(裕也。これ投げろ)
前園裕也
(はいよ)
ビッ
ボールはインローへ
内村学
(おっ…)
カキィ
内村は上手くバットに合わせる。
ボールは転々とグランドに落ちる。
山田信司
「ボール!ファースト!」
大原克也
「任せろ!」
大原が掴む!
大原克也
「松原!」
松原正樹
「はい!」
大原が松原にボールを投げるが
内村学
「うおお!」
ズバァ
パシィ
皆本塁審
「セーフ!」
内村学
「っしゃあ!」
ヘッドスライティングでセーフをもぎ取った。
山田信司
「くそっ…」
前園裕也
「ドンマイドンマイ!打ち取っていこう!」
アナウンス
「2番、セカンド、西田くん」
山田信司
「打者集中!!ランナー気にすんな!」
内村学
「よぅ言うぜ」
西田はベンチのサインを確認する。
西田基久
(バント…)
内村学
(クリーンアップに回すのか…)
山田信司
(バント来るぞ…。内野前進)
平田と大原は前に行く。
コォン
西田初球バント!
ボールはファール線の際どいところを転がる!
大原克也
「んにゃろ!」
大原が掴んで2塁に投げようとするが
山田信司
「ボール一つ!」
大原克也
「ちっ」
皆本塁審
「アウト!」
内村は楽々2塁へ
内村学
(上手く3塁へ行きたかったが、大原がこっち睨むからいけなかったじゃん)
大原克也
(1塁から3塁は行かせねーからな)
アナウンス
「3番、ファースト、高平くん」
前園裕也
(高校1年でレギュラーに抜擢され、後藤の後の主砲。高平…)
山田信司
(既にプロのスカウトから目が付けられる噂だ…)
高平直哉
(ここで打てばスカウトの評価が上がるぜ)
山田信司
(マズいな。外野に飛ばされたくない)
山田は前園にサインを出す。
前園裕也
(初球シュート。わかった)
ビッ
カキィ
橘主審
「ファール」
山田信司
(よし、タイミング外した)
高平直哉
(今のシュートか…)
山田信司
(次はこれ…)
前園裕也
(アウトローのストレート)
ビッ
バシィ
橘主審
「ストライク!」
高平直哉
「っく…」
ネクストバッターズサークルでは、後藤が準備している。
後藤明仁
「初球真ん中にシュート投げ込み、次はアウトローに速球か…」
山田信司
(これいくぞ…)
前園裕也
(はいよ)
ビッ
高平直哉
(シメた!失投だ)
高平がバットを振るが
バシィ
橘主審
「ストライク!バッターアウト!」
高平直哉
「なに!?」
前園裕也
「っしゃあ!」
山田信司
「ナイスピッチン!」
高平直哉
(ウソだ。バットに当たったはずだ…)
山田信司
(使えるぞ!裕也!)
前園裕也
「よかった~」
後藤明仁
「あの落ち方。サークルチェンジかチェンジアップの一種だな」
山田信司
(後藤の奴、読んでやがる…)
アナウンス
「4番、サード、後藤くん」
前園裕也
(2死2塁で後藤)
山田信司
(コイツ抑えて次でサヨナラ勝ちだ)
後藤明仁。高校通算35本塁打と強打で有名な石大青陵の4番打者。
山田信司
(だけど厄介だな…。)
前園裕也
「タイム!」
突然前園がタイムを要求。
橘主審
「ターイム!」
山田信司
「なんだよ」
山田がマウンドに駆け寄る。
前園裕也
「最悪敬遠でもいいかな?」
山田信司
「土谷と勝負か?」
前園裕也
「あぁ」
山田信司
「確かに後藤と土谷だったら土谷の方が遥かにいいし1塁が空いてる」
前園裕也
「ここは敬遠でもいいと思うんだ」
山田信司
「けどな裕也。それでどうしろってんだ」
前園裕也
「え?」
山田信司
「確かに勝ちにいくには主砲を敬遠するのは間違ってはいない。だけどな関東1の投手がそれでいいのか?ここで後藤を抑える事に意味があるんじゃないのか?」
前園裕也
「だけどやっぱりチームの勝利には」
山田信司
「あのさぁ、所詮春の大会じゃね?そんなガチガチになる事は無いぜ。それに夏にまた戦うかもしれない石大青陵、その四番打者と戦う。それには『逃げる』って選択肢はどうかと思うぜ」
前園裕也
「………………」
山田信司
「だから敬遠なんて逃げの手使わずにいこうや。別に打たれたっていいさ。」
前園裕也
「信司。わかった。敬遠は無しだ」
山田信司
「それでいい。腕ちゃんと振れよ」
山田は戻っていった。
山田信司
「すいません。お待たせしました」
橘主審
「プレイ!」
橘主審の声で、試合は再開した。




