対三階堂戦 動いた
試合はまた進む。
7回三堀が1塁へ行き、三谷がまた登板。
大原を三ゴロ
村雨を投ゴロ
山田を三振
に仕留めた。
7回裏、熊谷も負けじと
宮坂を右飛
三谷を三振
4番中田を三直に
仕留めた。
中田翔平
「なんなんだ?あのストレート?」
堂林英昭
「おいおい、相手はストレートだけだぜぇ」
堂林監督が愚痴る。
中田翔平
「いや…」
しかし中田は変な感覚に惑わされていた。
熊谷満
「はぁ、はぁ…」
黒田正宏
「監督、もう140球ですよ。前園に変わったほうが…」
前川久男
「いや、熊谷に今日は託す」
熊谷満
「あぁ、次オレだ…」
熊谷はバットを持って打席に向かった。
アナウンス
「8回表、白虎学園の攻撃は、9番、ピッチャー、熊谷君」
三谷昇
「まだ投げるのかよ!」
三谷は内心驚いていた。
三谷昇
(頑張るな…)
ピシュ
ズバァン
松本主審
「ストラィー!」
熊谷満
(なんとしても、なんとしても塁に出るぞ)
7回まで無失点で来たことにより、熊谷は「勝ちたい」と無性に思い始めた。
三谷昇
「ふぅん!」
ズバァン
松本主審
「ボール!」
竹岡優
「いいぞ!ちゃんと見ていけ!」
熊谷満
「打つ、打つぞ…」
三谷昇
「くっ…」
ズバァン
松本主審
「ボール!ツゥ!」
三谷昇
(なんだこのプレッシャー…)
三谷は打席の熊谷と白虎学園ベンチから異様な空気を察していた。
三谷昇
(ヤバい、打たれそう…)
そんな心境で投げた次の瞬間!
カキィン
三谷昇
「なっ」
バシィ
真ん中へ甘く入った球を熊谷がジャストミートし、三谷のグラブに強襲した。
ボールはマウンドを転々とする。
三谷昇
「くっ…」
三谷はボールを拾ったが
佐々木塁審
「セーフ!」
竹岡優
「よし!いいぞ!」
前園裕也
「ナイスだ熊谷!」
平沢守
「今度こそ返すぞゴラァ!」
三谷昇
(なんだよ…)
三谷は今まで、5安打に抑えてきた白虎学園に対して「なんだこんなもんか」と思っていた。
しかし今、1塁ベンチを見て考えが変わった。
三谷昇
(みんなの目つきが変わった…)
それは本山も感じていた。
アナウンス
「1番、ショート、竹岡君」
竹岡優
「っしゃぁぁ!」
打席に立った竹岡の気迫に捕手本山は内心、びびった。
本山真也
(うわ……)
三谷昇
(最初は外に外すぞ、バントがある…)
三谷はバントを読んだ。
つもりだった。
ズバァン
松本主審
「ボール!」
三谷昇
「あ、あれ?」
本山真也
「してこない?」
堂林英昭
「まだ1ボールだ!バントあるぞ!」
三谷昇
(確かに…)
本山真也
(じゃあインコースに…)
三谷昇
(外すか)
ズバァン
松本主審
「ボール!ツゥ!」
三谷昇
「あぁ…」
本山真也
(してこない?)
堂林英昭
「あぁ、簡単に2ボール…」
三谷昇
(それじゃ、ボールからストライクになるスライダーで)
本山真也
(わかりました)
三谷は1塁の熊谷を軽くみてから投げる。
竹岡優
「よしきた!」
カキィン
三谷昇
「え?」
打球はショートの頭上を行き、レフト前へ
竹岡優
「スライダーを待ってたぜ」
松戸進介
「よし!無死1、2塁!」
平沢守
「次こそキメる!」
三階堂はタイムをとり、マウンドに集まる。
中田翔平
「落ち着け三谷」
谷本遼平
「さっきも無死1、3塁から0に抑えたじゃないですか」
佐藤弘
「いけますよ」
三谷昇
「あ、あぁ…」
3塁ベンチから伝令が来る。
和泉陵
「伝令です。バントとスクイズに注意してこの回0に抑えろ」
中田翔平
「なんじゃそりゃ」
谷本遼平
「やる気あんのかよ。あのバカ林」
三谷昇
「よせ、谷本」
谷本遼平
「三谷さん」
三谷昇
「大丈夫。後続を断つから」
和泉陵
「はい」
アナウンス
「バッターは、2番、セカンド、松原君」
松原正樹
「ふぅ~」
松原は息を整えた。
本山真也
(全部捕りますから、じゃんじゃん来てください)
三谷昇
(わかってる)
ピシュ
ズバァン
松本主審
「ストラィー!」
黒田正宏
「今の142です」
前川久男
「そうか…」
ズバァン
松本主審
「ボール!」
三谷昇
(この春の大会でシード権をとり)
ピシュ
ズバァン
松本主審
「ストラィー!ツゥ!」
三谷昇
(この千葉県で優勝して、俺をイジメた奴を見返すんだ!)
ピシュ
カキィン
三谷昇
「えぇ…」
若干高めにいったボールを松原は当てにいった。
ボールは右中間へ飛んでいく。
代田竜司
「くっ…」
三谷昇
「頼む!捕ってくれ!」
バシィ
茨木塁審
「アウト!」
熊谷満
「ウェイ!」
熊谷タッチアップ!
代田竜司
「サァド!」
代田は3塁へ投げる!
中田翔平
「よし!」
中田が捕ろうとしたそのとき!
ズザァア
中田翔平
「!!!」
猛烈なスライディングを食らった。
そのせいで中田は捕球ができなかった。
桂木塁審
「セーフ!」
熊谷満
「っしゃあ!」
竹岡も走って2塁へ
1死2、3塁
三谷昇
「マズい…」
アナウンス
「3番、ライト、藤原君」
藤原健一
「っしゃぁぁ!」
本山真也
「怖い…」
本山は藤原の気迫に圧倒されていた。
本山真也
(でもこれがいいんだ)
本山はミットを構える。
三谷昇
「行くぞ!」
三谷は投げた。
ズバァン
松本主審
「ストラィー!」
三谷昇
「よし!」
本山真也
「ナイスボール!」
前川久男
(三谷の速球は豪速球じゃない。快速球だ)
三谷は投げる。
ズバァン
松本主審
「ストラィー!ツゥ!」
藤原健一
(インコース…)
平沢守
(クロスファイアか…)
三谷昇
(ふんっ)
ズバァン
松本主審
「ボール!」
藤原健一
「高めに浮いたか…」
三谷昇
(ふんっ)
ピシュ
藤原健一
(よし!)
カキィン
本山真也
「あぁ!」
平沢守
「よし!」
藤原は三谷の失投を逃さなかった。
アウトコースへ若干流れたボールを藤原は見事に捉えた。
打球はフェンスにぶつかる!
桂木塁審
「フェア!」
宮坂真
「ちき生」
宮坂は3塁へ投げる!
竹岡も3塁を蹴る!
中田翔平
「ナメんなよ!」
素早い中継でボールが返ってくる!
バシィ
本山真也
「くっ」
本山が果敢に竹岡をタッチしにいく!
竹岡は体を捻らせてスライディングをする。
本山も竹岡に飛びついた。
松本主審
「セーフ!」
竹岡優
「よっしゃ!」
平沢守
「よし!藤原ぁ!」
松戸進介
「やったぜ!」
1塁ベンチは喜んだ。
藤原も2塁でガッツポーズをする。
安藤敬介
「打たれたな」
葛城良介
「はい」
熊谷雅之
「こんにちは。安藤さん」
1塁スタンドで安藤と葛城が話していると、突如熊谷が安藤に話しかけてきた。
安藤敬介
「おぉ熊谷か」
葛城良介
「え!?あの熊谷!」
安藤敬介
「そうだ」
熊谷雅之
「こちらの方は?」
安藤敬介
「葛城君。大阪ジャガーズのスカウトマンだよ」
葛城良介
「どうも、大阪ジャガーズ東日本担当スカウトの葛城良介と申します。」
葛城は熊谷に挨拶した。
熊谷雅之
「こちらこそはじめまして。熊谷雅之です」
葛城良介
「あの熊谷さんですよね!」
熊谷雅之
「どの熊谷さん?」
葛城良介
「松戸学園の元エースで在学中は118イニング無失点に甲子園優勝。甲子園大会では完全試合2回と最速158キロを記録した松阪を超えた超高校投手!」
熊谷雅之
「オレはそこまで、すごくねぇよ。なんでプロいかなかったかしってるだろ?」
葛城良介
「え…………?」
安藤敬介
「高校3年間で投げた疲労が蓄積して3年夏の大会終了時に右肩をケガしてプロを諦めたんだよ」
葛城良介
「それで…」
熊谷雅之
「今はフェニックスでのんびりやってるよ」
葛城良介
「そうでしたか…」
安藤敬介
「今日は甥っ子見に来たのか?」
熊谷雅之
「はい」
葛城良介
「え!?甥っ子…」
葛城は何のことかわからなかったが
葛城良介
「もしかして、今日の白虎先発投手って」
熊谷雅之
「甥っ子だよ。叔父さんの息子」
葛城良介
「……………」
葛城は唖然とした。
そしてこんな会話中に平沢と平田に連続タイムリーが出て4ー0になっていた。
安藤敬介
「4ー0か…」
熊谷雅之
「あとは抑えろ。満」
熊谷満
「ここまで来たら、完封してやる…」




