prologue 2
私は、絶望的な表情だっただろう。
だが、そんな私に思いもかけない幸せが訪れた。
亜矢ちゃんが声をかけてくれたのだ。
彼女は私と同じクラスで勉強も運動も出来て、性格も完璧。
勿論、みんなから愛されている可愛い子だった。
彼女は受験をするので、同じ中学校には行けない。
それでも、まるで亜矢ちゃんの真逆のような
私と友達でいてくれるだけで幸せだった。
だが、その幸せは長くは続かなかった。
亜矢ちゃんは、私が転校してくる前に仲が良かった子がいた。
彼女は派手な感じのグループに入っていて、
亜矢ちゃんも私が転校する前はそこにいた。
でも、私が来てから亜矢ちゃんは彼女と付き合わなくなった。
勿論
「私以外の子と付き合わないで」
などと言った訳ではない。//
だが、気付いた時には誤解されてしまったのだ。
彼女は、担任に
「あきちゃんが亜矢の事を取った」
と言ったのだろう。
ある日の昼休み、私は担任に呼び出されてこう言われた。
「もう亜矢ちゃんと付き合わないで。
○○ちゃんは、亜矢ちゃんしか頼れないの。」
何で?何で私が?私は、亜矢ちゃんが彼女と
仲良くしたいならそれはそれで、いいと思っていた。
3人で仲良くするのも、全然構わなかった。
第一、先生も先生だ。「他にも友達を作ったら?」
とどうして言わないのか。
仮に亜矢ちゃんが、入院して学校に来れなかったらどうするのか。
私は気付いたら悔し泣きをしていた。
そして、亜矢ちゃんと別れさせられた。
(もっとも、影では仲良くしていたのだが)
さらに悪い事に、孤立した私に
無理矢理まとわりついてきた人物がいた。
彼女は、みんなから嫌われていた。
自分の好きな事しか話さず、友達関係のステップも
踏まずに心の中に上がり込んでいく。
「彼女といる位なら、1人でいた方がマシ。」
私はそう思って彼女を避けていたが、
彼女はそれでもまとわりついてきた。背後霊のように。
それから私は、クラスで仲良くしてくれる友達を何とか見つけた。
だけど、学校不信と教師不信は変わらなかった。
世の中で
「教師」
と名のつく物は全て嫌いだった。
勿論、中学校にもほとんど希望は持っていなかった。
一応、
「吹奏楽部って面白そう」
という物はあったが、
希望となる程ではなかった。
そんな感じで体験入学に行ったのである。
私は、家庭科だったので家庭科室に行って先生を待っていた。
そうしたら、家庭科の先生が来た。
笑顔でひとしきり自己紹介とこれからやる事の説明をして、
先生はこういった。「今日は、もう1人お手伝いの先生を呼んでいます。…どうぞ。」
後ろのドアから若い女の人が入ってきた。
そして、家庭科の先生が手伝いに来た先生を紹介する時、
私はあまりのショックで椅子から落ちるかと思った。
なんと…吹奏楽部顧問のよっしー先生だったのである。
私は一応、親が学校説明会の時に貰った資料で
吹奏楽部の顧問の名前をチェックする位の事はしていた。
名前も覚えていた。
でもまさか、入学前にこんな所で会うなんて誰が考えるだろうか?
しかも、私のグループの人数が1人足りなかったので
よっしー先生が私の隣の席に来たのだ。
私は心臓が破裂しそうだったが、よっしー先生にこう言った。
「先生ってもしかして…吹奏楽部の顧問ですか?」
「そうだけど?」
そこからは、時間の流れが早回しになったようだった。
音楽クラブでサックスをやっていて、吹奏楽部に入ろうと
思っている事などを弾丸か何かのように喋った。
その後、何をしたかよく覚えていない。
ただ、少しだけ空が明るくなったような気がした。
そして、中学での抱負も決まった。
「中学校に行ったら、吹奏楽部に入ってステージに立ちます」
その時、担任はどんな顔をしていたのか?
今となっては謎のままだ。