妹と合流
すいませんでした。
先週は体調を崩して寝ておりました。
今回は妹との合流です。
思ったより話が進みませんね。
では、楽しんで頂けると嬉しいです。
私とリッカはマイラット城下町南側一番通りにあるケーキ屋さんに来ている。
半年前のアップデートでアイテム以外の味覚が実装されたため毎週のように新しいお店がオープンしている。
今いるケーキ屋さんもその内の一つで、店内で食べれるためこの辺で上位の人気を誇っている。
ゲーム内ではいくら食べても太らないこともあり、カフェやスイーツ店、レストランは女性客が多く、お酒が飲めるようなお店は男性客の方が多くなる。
私は本日2品目のイチゴチーズケーキを食べながら、ふっと思いついたことを聞いてみる。
「そういえば、お兄さんに場所を移動したこと教えなくていいの?」
私の何気ない質問にリッカは口にホークを入れたまま目を大きく開き1秒ほど固まったあと、「はっ!」とした顔で急いで右の手首のブレスレットに触れたあと空中に手を滑らしていく。
今リッカが触れて操作しているブレスレットは、通常は意識上で操作するステータスチェックやフレンド登録者との会話などを、簡単に操作できるようにした補助端末で経験値の取得履歴など付加機能も付いている。
ちなみにこの補助端末は指輪など色々な形にデザインにすることができ、そのうえ装備品ではないため戦闘などで破損することがない。
そのため半数以上がファッションの一部としても使用している。
「あっエイト、どこまで来たの?
なら、もうすぐね。
今は南のカフェにいるよ。
えっ、なまえ?
う、うるさいな!
とにかく南一番通りの先週できたカフェにいるから来て!!
……いいから、早く来い!!」
リッカちゃん声出てるし。
それに、その説明じゃ場所分からないよ。 普通は……
お兄さん無事にこれるかな?
◇◆◇◆◇◆◇◆
意識上にフレンド間通信の着信音がなり、発信者を確認すると妹のリッカからだったので着信に出る。
<あっエイト、どこまで来たの?>
<もう、マイラット城下町が見えてるよ。>
<なら、もうすぐね。>
<後5分もあれば付くと思うけど、今どこにいるんだ?>
<今は南のカフェにいるよ。>
<南のカフェって、名前は?>
<えっ、なまえ?>
<名前も知らない所に入ったのか? そもそも何で北でなく南なんだよ?>
<う、うるさいな! とにかく南一番通りの先週できたカフェにいるから来て!!>
<おい! 名前ぐらいお店の人に聞けばわかるだろ?>
<……いいから、早く来い!!>
逆切れのうえ通信を切られた。
そもそも、俺が北から来るの知ってるくせになぜ南側にいるのか。
俺は500mほど先に見えるマイラット城下町を見ながらため息をついた。
マイラット城下町はマイラット城を中心に半径30Km程度の大きさ持つマイラット皇国の首都である。
城だけで半径2Km程あり、その周り2Kmに政府街、その周り10Kmに貴族街、残りが市民街と言う配置で構成されている。
貴族街は貴族指定のNPCやユニオン所有の建物がある地区で、政府街にはRiO運営委員会の建物などがある。
各層の境には壁があり権限がないと入れない仕組みになっているが、政府・貴族層にある各施設へは転送魔方陣で移動することができる。
貴族街からマイラット城下町の城門の間には10本の大きい道が円周上あり、貴族街に近いところから1番、2番と名前が付いている。
今回妹のいる場所は南側の貴族街に一番近い大通りらしい。
この辺は最近カフェやケーキ屋が増えたせいで最近は女性に人気の場所である。
正直男の俺は入りずらい・・・
俺は着いたばかりのマイラット城下町北側城門から市民街へ入った。
市民街に入ると中心にある城へ向けて幅15mの真っ直ぐな道が続いている。
その周りには回復アイテムなどの個人露天、宿、武器やなどのショップが連なりこれから町を出る人、帰って来た人で賑わっている。
ここから2Kmも離れるとプレイヤーが購入できる住宅街があり、俺のメインホームもあるが今は南側の一番街に行くため転送屋に向けて足を運ぶ。
実は俺自身も転送スキルはあるが、女性に人気のある場所などは当たり前の如く登録はしていないため今は役にたたない。
そもそも最初からマイラット城下町と言われれば転送一回で済んだのに、妹がちょこまかと移動するせいで後を追うように移動する羽目になった。
転送屋は暇なプレイヤーがこの広い町の移動を便利にするためにしていて、100ギル程度で任意の場所に転送してくれる。
俺は南側一番通りに転送してくれる人にお願いして、目の前に出現した魔法陣に足を踏み入れた。
それから10分後、南側1番通りに転送した俺はMAPに表示させたリッカの反応を頼りに何とか見つけることができた。
予測通り女性客しかいない店内で知らない女の子とケーキを食べている。
「やっと見つけた。せめて店の名前を教えろよな。 それにここはカフェではないぞ。」
「んっ!やっと来たよ。 遅いからミウとケーキを食べていたんだよ。 貴重な時間を待ったんだからここの料金も払って欲しいところだよ。」
苦情にたいしていちゃもんを返す妹をしらけた目で見た後、ミウと呼ばれた子に目を向ける。
髪の毛はシルバーのストレートで肩位まであり、顔は小さめで目は薄いピンク色をしている。
身長は座っているため分からないが、ゲーム内では高めにする傾向がある中で少し小さく見える。
胸は大きくもなく小さくもなくってところだ。
服装は肩には淡い色のケープを下に七分丈の服で全体に魔術系の装備をしている。
「ミウ? 知らない子だけど友達か?」
「そうだよ。こないだ絡まれてる所助けたでしょ。その時の女の子だよ。 どうせ覚えてなさそうだけどね。」
俺はミウと呼ばれた子をじっと見ながら記憶を手繰り寄せる。
確かに誰かを助けたのは覚えているが、その後俺だけ急いで移動したから正直顔までは覚えていない。
「えっと、ごめん。 思い出せない。」
顔を覚えてなかったのはまずかったと思った俺は、頭を下げた。
ミウは顔を赤くし「いいんです。 平気です。 はい。」と手と顔を横に振りまくっている。
その後、お互いの自己紹介を済ませたあと、やっと当初の目的について話を出すことができた。
「それよりリッカ、アイテムを返してくれ。」
それを聞いた妹は目を細めとても良い微笑みを浮かべる。
こんな時は大抵善からぬことを考えている。
俺は急ぎアイテムを返して貰うため話を畳掛けようとしたところ……。
「アイテム返してあげるから、ミウにEMの戦闘を教えてあげてね。」
先制攻撃を食らう。
しかたない、粘って逃げるしかない。
「なぜ俺が? 武道会に出て順位持ちなんだからリッカが教えれば良いだろ。」
それから暫く、俺の言い分をリッカが無視しミウがひたすら謝っているという訳の分からない状態が続いたが、5回目の「ならアイテム返さないよ。」という一言で俺は白旗を上げた。
「わかったよ。 教えるからアイテム返してくれ。」
俺は精神的な疲れのため、席に着きアイスティーを頼んでゆっくりすることにした。
アイスティーを飲んでいる間にお互いの現状を確認した俺は、新たに発生した問題に向き合うことにした。
「えっと、ミウさんだっけ?」
「はい! あっ、ミウでいいです。」
「了解。俺のことはエイトでいいからね。 早速だけどミウのステータスを教えて。 概略でいいから。」
「今日Lv30になったばかりで、ん~と職業は魔法使いなのかな?」
「INTにポイントを振ってるか、魔法スキルを覚えてるってこと?」
「はい! そうです。」
RiOでは基本的に誰でも全てのスキルを取得できるため職業という概念がない。
代わりに職業名というステータス項目があり、自分のプレイスタイルで自由に3つまで作成できる。
多くの人は「剣士」などを付けるが、中には「危険物」や「お祭り」 ―― さっき北側の城門付近で見かけた ―― など意味不明な名前を付ける人もいる。
そのため、RiOでは他のゲームよりステータスやスキルの内容が重要となる。
ミウの場合は魔法スキルと魔力を高めるステータス配分になっていると思われるが、正直Lv30ではまだ個性と言える偏りはないので「初心者」を考えて問題ない。
「EMでの戦闘経験はある?」
「ないです。」
「熟練度は余ってる?」
熟練度はレベルが上がると必ず3ポイント貰えるポイントで、ステータスやスキルへ割振って自分を成長させることができる。
ステータスに割振った場合は1ポイントがそのままステータスの数値に加算され、スキルの場合は対象のスキル経験値に加算される。
スキル経験値が一定値を超えるとスキルレベルがあがる。
「リッカと会ってから使ってないので36ポイント余ってます。」
「そうか。 この後時間あるかい? あるなら訓練所行こうか。」
「訓練所ですか?」
訓練所とはプレイヤーが戦闘訓練をする為の場所で商工会議所と志願兵訓練所で借りることができる。
利用者の多くはEM使用者で、戦闘時の連携や新しいスキルのコツを攫む練習などをしている。
「そう、EMについてと、こちらからの条件を説明したいのだが、もし時間ないのなら次回でも平気だよ。」
「えっと、訓練所は初めて聞いたので、時間はあります。」
「そうか、なら遠くなるが施設数の多い志願兵訓練所に行こう。」
行くことを告げ、会計をするため店員を呼んだ。
次回は休みなく投稿できるよう頑張ります。