第43話:前哨
第43話:前哨
外の空間。
静かすぎる。
だが。
“全てがこちらを見ている”。
ミレイユが短く言う。
「……来る」
逃げ場はない。
空間が、沈む。
前方。
“それ”が現れる。
今度は違う。
形が、はっきりしている。
人型。
だが。
完全ではない。
“複数が重なっている”。
セレスが息を呑む。
「……本体の一部」
エルザ。
「分けてきたな」
ヴァレリア。
「本気じゃないけど、手は抜いてない」
ミレイユ。
「……厄介」
“それ”が口を開く。
「侵入個体」
「排除を開始する」
その瞬間。
世界が“歪む”。
距離が消える。
一瞬で。
目の前。
レオンへ。
だが。
シオンが動く。
前に出る。
影が広がる。
ぶつかる。
ドンッ
空間が裂ける。
止まる。
拮抗。
だが。
「……重い」
初めて。
シオンの声が、わずかに沈む。
ミレイユ。
「……押されてる」
セレス。
「干渉が強すぎる」
エルザ。
「単純な力じゃないな」
ヴァレリア。
「領域ごと来てる」
“それ”が言う。
「……解析」
「影、再現系」
「対処可能」
その瞬間。
空間が変わる。
シオンの影が、削られる。
広がらない。
制限される。
ミレイユ。
「……封じられてる」
セレス。
「適応してきた……!」
シオンは一歩下がる。
だが。
笑う。
「……なるほど」
一拍。
「では、こちらも」
影が変わる。
広げない。
“絞る”。
一点。
“芯”になる。
エルザが目を細める。
「……使い方を変えたな」
ヴァレリア。
「面白いじゃない」
シオンが踏み込む。
速い。
さっきより。
軽い。
ぶつかる。
通る。
初めて。
“それ”の輪郭が崩れる。
「……誤差」
揺れる。
だが。
戻る。
「……修正」
反撃。
空間ごと叩きつける。
シオンが弾かれる。
初めて。
大きく。
地面のない空間で、止まる。
ミレイユ。
「……まずい」
セレス。
「今のは危ない」
エルザ。
「直撃なら崩れていた」
ヴァレリア。
「さすがに格が違うわね」
その瞬間。
レオンが動く。
一歩。
踏み出す。
白銀の魔力が広がる。
空間が、安定する。
歪みが、押し返される。
“それ”の動きが止まる。
初めて。
「……干渉?」
レオンはそのまま立つ。
「動きにくいだろ」
自然に。
“それ”が沈黙する。
シオンが戻る。
レオンの横へ。
距離が近い。
「……助かりました」
レオン。
「問題ないか」
シオンは頷く。
「はい」
そして。
少しだけ。
柔らかく。
「もう少し、いけます」
レオンは短く。
「やれるならやれ」
シオンは微笑む。
「はい」
その目。
完全に。
“勝つ側”。
影が、再び広がる。
だが。
今度は違う。
白銀と、混ざる。
ミレイユ。
「……繋がった」
セレス。
「二つの魔力が……」
エルザ。
「補完してるな」
ヴァレリア。
「反則でしょ、それ」
“それ”が初めて言う。
「……異常、拡大」
一歩。
下がる。
初めて。
距離を取る。
シオンが言う。
「逃がしません」
静かに。
踏み込む。
影と白銀が重なる。
“それ”を貫く。
完全ではない。
だが。
確実に。
届いた。
「……損傷確認」
初めての言葉。
ダメージ。
沈黙。
そして。
「……撤退」
空間が歪む。
“それ”が消える。
残る静寂。
ミレイユ。
「……逃げた」
セレス。
「傷、つけた……」
エルザ。
「通じたな」
ヴァレリア。
「やるじゃない」
シオンは静かに立っている。
少しだけ息が乱れている。
だが。
崩れない。
レオンが言う。
「どうだ」
シオンは答える。
「……十分です」
一拍。
「届きましたので」
レオンは頷く。
「ならいい」
それだけ。
シオンは、ほんの少しだけ目を細める。
嬉しそうに。
外の空間。
だが。
もう違う。
“通じる場所”になった。




