第42話:外へ
第42話:外へ
空が、静かに揺れていた。
見えていないはずの“外”が、そこにある。
ミレイユが言う。
「……ここ」
空間の一点。
歪み。
「観測、薄い」
セレス。
「通れるの?」
ミレイユ。
「今なら」
エルザが短く言う。
「戻れる保証は?」
少し間。
ミレイユ。
「……ない」
ヴァレリアが笑う。
「いいじゃない」
レオンはそのまま前を見る。
「行くか」
決まる。
シオンが一歩前へ出る。
「先に、繋げます」
誰も止めない。
影が伸びる。
細く。
深く。
歪みに触れる。
その瞬間。
“開く”。
裂け目ではない。
静かに。
向こう側が見える。
暗い。
広い。
何もない空間。
だが。
“いる”。
ミレイユ。
「……ここが外」
セレス。
「気配が……違う」
エルザ。
「地面がないな」
ヴァレリア。
「不気味ね」
シオンが振り返る。
レオンを見る。
「ご一緒に」
自然に。
レオンは頷く。
「ああ」
二人が、同時に踏み出す。
外へ。
感覚が変わる。
重さが消える。
距離が曖昧になる。
ミレイユ。
「……演算、ズレる」
セレス。
「魔力が安定しない」
エルザ。
「戦いにくいな」
ヴァレリア。
「でも、嫌いじゃない」
その時。
“視線”。
無数。
一斉に向く。
ミレイユ。
「……見られてる」
セレス。
「全部から」
エルザ。
「囲まれてるな」
ヴァレリア。
「歓迎されてるわね」
空間が歪む。
現れる。
複数の“影”。
前よりも、はっきりしている。
「侵入確認」
「排除開始」
同時に動く。
速い。
だが。
その前に。
シオンが前へ出る。
レオンの前。
振り返る。
「少しだけ」
レオン。
「任せる」
それだけ。
シオンは微笑む。
「ありがとうございます」
影が広がる。
外の空間に。
溶ける。
“同化”。
ミレイユ。
「……適応してる」
セレス。
「もう影が崩れない」
エルザ。
「環境を取ったな」
ヴァレリア。
「やっぱりおかしいわね」
敵が来る。
だが。
止まる。
踏み込めない。
シオンの影が。
“先にある”。
触れる前に。
制御される。
「……干渉不能」
初めて。
敵の声が乱れる。
シオンは静かに言う。
「ここでも、問題ありません」
一歩。
近づく。
敵の一体に触れる。
そのまま。
“沈める”。
消える。
完全に。
ミレイユ。
「……消えた」
セレス。
「削除……?」
エルザ。
「存在ごとだな」
ヴァレリア。
「やりすぎよ」
シオンは振り返る。
レオンを見る。
少しだけ近い。
「……使えますね」
その声音。
柔らかい。
レオンは答える。
「ああ」
短い。
だが。
十分。
その時。
強い気配。
奥から。
“それ”が来る。
前の本体。
より、はっきりしている。
「……侵入確認」
「危険個体、確定」
空間が歪む。
だが。
今度は。
シオンが、先に動く。
影が。
“上書き”する。
空間ごと。
止まる。
完全ではない。
だが。
確実に。
干渉している。
本体が言う。
「……適応」
「異常」
シオンは微笑む。
「ありがとうございます」
そして。
一歩。
レオンのすぐ隣へ。
距離。
ほぼ、触れる。
「ここから先も」
静かに。
「ご一緒します」
迷いがない。
レオンは一瞬だけ見る。
そして。
「ああ」
それだけ。
だが。
完全に。
“決まる”。
シオンの目が、わずかに細くなる。
満足そうに。
白銀と影。
並ぶ。
外の世界の中で。
初めて。
“対等に”。




