第37話:白銀と影
第37話:白銀と影
夜が、静かに沈んでいく。
だが。
遠くの空。
黒く、歪んでいた。
ミレイユが先に気づく。
「……来る」
セレスも顔を上げる。
「多い……」
エルザが目を細める。
「軍だな」
ヴァレリアが息を吐く。
「隠す気もないわね」
レオンは空を見上げる。
裂け目。
一つではない。
いくつも。
連続して開く。
そこから。
落ちてくる。
兵。
無数。
統制されている。
乱れがない。
地面に降り立つ。
音が揃う。
ミレイユ。
「……数、万単位」
セレス。
「質も高い」
エルザ。
「前の三人と同系統だ」
ヴァレリア。
「雑魚じゃないわね、これ」
その中央。
あの男。
幹部。
「予定通りだ」
静かに言う。
「観測対象――排除開始」
軍が動く。
一斉。
速い。
エルザが踏み出す。
「迎撃する」
セレスが魔法を展開。
だが。
その前に。
影が、広がる。
地面から。
静かに。
深く。
全体を覆う。
ミレイユ。
「……シオン」
シオンは前に出る。
レオンの半歩前。
だが、振り返る。
「よろしいでしょうか」
確認。
レオンは短く頷く。
「任せる」
それだけ。
シオンは静かに一礼する。
「承知いたしました」
その瞬間。
影が“変わる”。
濃さが違う。
深さが違う。
空間そのものが沈む。
セレスが息を呑む。
「……これ……」
ミレイユ。
「別物」
エルザ。
「質が跳ねたな」
ヴァレリア。
「さっきと違うわよ、それ」
シオンが手を上げる。
何も言わない。
だが。
影の中から。
現れる。
アンデッド。
だが――
“個体”ではない。
“群れ”でもない。
統一された“現象”。
動く。
軍と衝突。
止まらない。
押す。
削る。
だが。
相手も強い。
崩れない。
幹部が見ている。
「……なるほど」
一歩。
前へ。
シオンを見る。
「段階を上げたな」
シオンは微笑む。
「少しだけ」
その言葉と同時に。
影がさらに沈む。
深く。
重く。
そして。
“つながる”
ミレイユが震える。
「……全部、繋がった」
セレス。
「魔力が一体化してる……」
エルザ。
「個じゃないな、これは」
ヴァレリア。
「やりすぎでしょ、それ」
軍が動く。
だが。
踏み込んだ瞬間。
止まる。
全員。
一斉に。
「……っ!?」
初めて。
兵の動きが乱れる。
足が止まる。
意思が鈍る。
シオンの声。
静かに。
「そこです」
その瞬間。
全てのアンデッドが動く。
同時。
一斉。
崩れる。
軍が。
抵抗できない。
圧ではない。
“制御”されている。
幹部が、初めて目を細める。
「……支配か」
シオンは首を横に振る。
「いいえ」
一歩。
「整理です」
その言葉。
軍が完全に止まる。
全員。
動かない。
沈黙。
ミレイユ。
「……全部?」
セレス。
「数万……全部……?」
エルザ。
「……終わったな」
ヴァレリア。
「何それ、反則でしょ」
幹部が動く。
一歩。
踏み出す。
だが。
止まる。
影に、触れている。
わずかに。
「……触れるな」
低く言う。
シオンは微笑む。
「大丈夫です」
「壊しませんので」
沈黙。
幹部は、しばらく見て。
そして。
息を吐く。
「……認識を改める」
一拍。
「お前は、危険だ」
シオンは軽く頭を下げる。
「光栄です」
幹部はレオンを見る。
「お前の側は、厄介だな」
レオンは短く答える。
「そうかもな」
自然に。
幹部は裂け目へ戻る。
「次は、全体で来る」
「準備しておけ」
消える。
裂け目が閉じる。
静寂。
だが。
軍は、動かない。
すべて。
シオンの影の中。
ミレイユ。
「……完全に、上に行った」
セレス。
「別次元ね」
エルザ。
「敵としては最悪だ」
ヴァレリア。
「味方で良かったわ」
シオンは振り返る。
レオンを見る。
「問題ありません」
穏やかに。
レオンは頷く。
「……ああ」
空を見る。
「面倒は減ったな」
本音。
白銀の光。
影。
並ぶ。
二つの力。
完全に。
噛み合った。




