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世界に観測されていた俺たち、最強の影がその仕組みごと壊しました  作者: 慈架太子


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第33話:外の格

第33話:外の格


裂け目が、ゆっくりと広がった。


空間そのものが押し広げられるように歪み、そこから冷たい気配が流れ込んでくる。

ただの敵ではない――その場にいる全員が、直感的に理解した。


現れたのは三人。


装備は簡素だが、無駄がない。

立ち方、視線、距離の取り方――すべてが完成されている。


エルザがわずかに前へ出る。


「……質が違うな」


力ではなく、“積み重ねた戦い”の匂いを感じ取っている声だった。


セレスも視線を細める。


「魔力の流れが安定してる……無駄がない」


ミレイユは短く言う。


「強い」


ヴァレリアが小さく笑う。


「やっと退屈しなくて済みそうね」


三人のうち一人が、前へ出た。


「対象確認」


低い声。


「レオン」


そのまま、踏み込む。


消えた。


次の瞬間、レオンの眼前。


だが――


止まる。


シオンが、すでに前にいた。


自然な動き。

割り込んだ気配すらない。


「……急ぎすぎです」


柔らかな声。


だが、その場の空気が一瞬で冷える。


振り下ろされた刃は、影に絡め取られていた。


動かない。


相手は即座に距離を取る。


その判断の速さも、今までの敵とは違う。


「介入個体、確認」


「優先度、更新」


三人が同時に動いた。


無駄のない分散。


完全に役割が分かれている。


一人がエルザへ。


エルザは受けるのではなく、わずかに体をずらした。


力を流す。


剣と剣がぶつかり、鈍い音が響く。


「……重いな」


短く呟く。


「だが、直線的じゃない」


すぐに評価が続く。


もう一人がセレスへ。


魔法が撃ち込まれる。


セレスは即座に展開する。


だが――


弾かれる。


「……通りにくいわね」


ミレイユが続ける。


「効きにくい」


残る一人がレオンへ。


迷いがない。


一直線。


踏み込んだ瞬間――


ドンッ


空気が歪む。


相手の体が、そのまま後方へ弾き飛ばされた。


地面に叩きつけられる。


静寂。


ヴァレリアが息を吐く。


「……今の、見えた?」


ミレイユは首を振る。


「無理」


レオンは、その場から動いていない。


ただ、軽く手を下ろしただけだった。


吹き飛ばされた男が、ゆっくりと立ち上がる。


「対象レオン」


「再評価」


一拍。


「上位指定」


その言葉と同時に、空気が変わる。


シオンが動いた。


一歩だけ前へ。


影が、静かに広がる。


アンデッドが現れる。


十体。


だが、さきほどとは違う。


歪みがない。


動きが揃っている。


セレスが観察する。


「魔力の循環が閉じてる……崩れない」


ミレイユ。


「安定してる」


シオンは軽く手を上げる。


「行きなさい」


アンデッドが走る。


速い。


三人のうち一人に到達。


ぶつかる。


押す。


相手が、わずかに後退する。


エルザが目を細める。


「……通るな」


単純な力ではない。


噛み合っている。


ヴァレリアが楽しそうに言う。


「いいじゃない、それ」


シオンは、レオンの横へ戻る。


半歩後ろ。


その位置は崩さない。


「レオン様」


「少し、よろしいでしょうか」


許可を待つ。


レオンは短く頷く。


「いい」


それだけ。


次の瞬間。


影が、広がった。


一帯を覆う。


三人の姿が、その中に沈む。


音が消える。


気配も消える。


ミレイユが低く言う。


「……見えない」


セレス。


「完全に遮断されてる」


エルザ。


「干渉できないな」


数秒。


影が、ゆっくりと引いていく。


シオンが立っている。


何も変わらない。


その前に――


三人。


立っている。


だが。


動かない。


目に、焦点がない。


ミレイユ。


「……制御下」


セレス。


「意思がない」


エルザ。


「戦意も消えている」


ヴァレリア。


「……何したの?」


シオンは軽く頭を下げる。


「少し、整えただけです」


そして、レオンを見る。


「いかがなさいますか」


レオンは少しだけ考え、


「使えるなら、そのままでいい」


シオンは微笑む。


「承知しました」


静けさが戻る。


ミレイユがぽつりと言う。


「……外、強い」


セレス。


「これが基準になるわね」


エルザ。


「油断はできない」


ヴァレリア。


「面白くなってきたわ」


シオンは静かに。


「次は、もう少し上でしょう」


レオンは空を見る。


「……だろうな」


白銀の光が、ゆっくりと揺れる。


世界は、確実に広がっていた。

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