第3話:初戦闘(違和感)
第3話:バレット覚醒と初めての共闘無双
森の奥。
空気が、張り詰めていた。
「……ここ、危険域よ」
セレスが小声で言う。
「さっきまでの場所とは、魔物の質が違う」
「ちょうどいいな」
レオンは剣を肩に担いだまま、平然と答えた。
セレスは横目で彼を見る。
(この人、本当に分かってるのかしら……)
いや、違う。
“分かっていてなお平然としている”。
それが余計に恐ろしい。
「来るぞ」
レオンが呟いた。
次の瞬間――
茂みが弾ける。
大型の魔物。
硬質な外殻を持つ、甲殻種。
三体。
「下がってろ」
レオンが一歩前に出る。
「え、でも――」
「見てろ」
一体目が突進。
速い。
だが――
レオンのほうが速かった。
踏み込み。
剣に魔力を纏わせる。
一閃。
外殻ごと、斬り裂いた。
「……は?」
セレスの思考が止まる。
ありえない。
あの硬さは、普通の剣では通らない。
魔力付与しても、熟練者でやっと傷がつくレベル。
それを――
「一撃……?」
残り二体が同時に襲いかかる。
左右から。
挟撃。
レオンは、動かなかった。
「ちょうどいい」
手を前に出す。
魔力を集める。
「……魔力弾」
放つ。
ドンッ!!
衝撃が森に響く。
空気が震える。
二体の魔物が、まとめて吹き飛んだ。
地面に叩きつけられ、そのまま動かなくなる。
「……え?」
セレスの知っている魔力弾ではない。
あんな威力は、ありえない。
「……なんか、強くなってるな」
レオンは首を傾げた。
「前より圧縮したらいけた」
(圧縮……?)
魔力を?
そんな発想――
「もう一回」
レオンは再び構える。
今度はさらに集中。
魔力が収束する。
「……いける」
放つ。
ズガァンッ!!
地面が抉れた。
木々がなぎ倒れる。
一直線に破壊の軌跡が走る。
「……なに、それ……」
セレスの声が震える。
「さっきより強いな」
レオンは軽く頷いた。
「名前つけるか」
少し考えて――
「バレット」
その瞬間。
“魔法が完成した”。
セレスは理解した。
(この人……)
魔法を“覚える”んじゃない。
“作ってる”。
「……ねえ」
セレスがゆっくりと口を開く。
「それ、教えて」
レオンはあっさり答える。
「いいぞ」
「え?」
「魔力集めて、圧縮して、撃つだけだろ?」
「できるわけないでしょ!!」
叫びながらも、セレスは試す。
魔力を集める。
圧縮――
しようとして、霧散する。
「……無理……」
レオンは首をかしげる。
「なんでだ?」
「繊細すぎるのよ!!そんな乱暴な操作したら普通崩壊するの!!」
「ふーん」
レオンはもう一度やってみせる。
軽く。
簡単に。
ズドン。
「ほら」
セレスは膝から崩れ落ちた。
「……なんで……」
悔しさ。
驚愕。
そして――
「……すごい……」
尊敬。
レオンは手を差し出す。
「立てよ」
セレスはその手を取る。
その瞬間、魔力が流れ込む。
「……っ!?」
感覚が変わる。
魔力の流れが、見える。
理解できる。
「……これ……!」
「こうやるんだよ」
レオンの導き。
それは、教えというより“共有”だった。
セレスは、再び構える。
魔力を集める。
今度は――
流れる。
崩れない。
「……いける……!」
放つ。
ドンッ!!
小さい。
だが――
確かに“バレット”だった。
「……できた……」
セレスは呆然と呟く。
次の瞬間。
「レオン!!」
抱きついた。
「すごい!!すごいすごいすごい!!」
「お、おう……」
「こんなの初めて……!私、もっと強くなれる……!」
顔が近い。
距離が近い。
「……あ」
セレスは気づいて、少しだけ離れる。
だが――
目は逸らさない。
「……ねえ」
真っ直ぐに見つめる。
「ずっと、一緒にいていい?」
レオンは即答する。
「当たり前だろ」
その一言で。
セレスの中の何かが、完全に落ちた。




