第29話:白き観測者シオン
第29話:降臨――白き観測者シオン
煙の向こう。
一人。
ゆっくりと歩いてくる。
足音は、しない。
だが――
圧だけが、広がる。
「……あれ、やばいわね」
セレスが呟く。
「今までで一番ね」
ヴァレリアも息を呑む。
エルザが剣を握る。
「……格が違う」
ミレイユが震える声で言う。
「……解析不能」
ガルドが低く笑う。
「……やっと来たか、本命」
正体
“それ”が、顔を上げる。
白い髪。
透き通る瞳。
少女。
だが――
“人間じゃない”。
「……対象確認」
静かな声。
感情がない。
「レオン」
名前を呼ぶ。
沈黙。
「……誰だ」
レオンが聞く。
少女は答える。
「観測個体」
一拍。
「シオン」
異質
セレスが小さく言う。
「……何それ」
ヴァレリアが眉をひそめる。
「人じゃないわね」
エルザが低く言う。
「……兵器か」
ミレイユが呟く。
「……あれ、作られてる」
宣告
シオンが一歩進む。
「対象は危険域」
「世界バランスに影響」
沈黙。
「よって――」
「排除」
開戦
瞬間。
消える。
「……っ!?」
次の瞬間。
レオンの目の前。
拳。
ズドォンッ!!
直撃。
地面が砕ける。
「レオン!!」
セレスが叫ぶ。
圧倒的
レオンが立ち上がる。
「……いいな」
だが。
次の瞬間。
さらに速い。
連撃。
ドゴォンッ!!
ドゴォンッ!!
ドゴォンッ!!
押される。
明確に。
「……速すぎる!」
エルザが叫ぶ。
「……見えん!」
ヴァレリアが叫ぶ。
「回復が追いつかない!」
ミレイユが叫ぶ。
「解析、追いつかない!」
五人+三人
全員で動く。
八人。
最大戦力。
だが――
当たらない。
避けられる。
読まれている。
「……全部見えてる」
セレスが震える。
レオン
レオンが踏み込む。
アクセル。
最大。
「遅い」
シオンの一言。
止められる。
初めて。
完全に。
上。
それでも
レオンが笑う。
「いいな」
その瞬間。
魔力が、爆発する。
限界を超える。
「……まだいける」
シオンの反応
シオンが初めて、僅かに表情を変える。
「……成長」
「確認」
そして――
「優先度上昇」
危機
次の瞬間。
圧が変わる。
「……まずい!!」
ミレイユが叫ぶ。
「出力が跳ねた!」
セレスが叫ぶ。
「これ、耐えられない!」
その時
シオンの視線が、レオンに固定される。
「……あなた」
一瞬の間。
「面白い」
沈黙。
全員が止まる。
異変
シオンが、手を下ろす。
「本来なら排除」
「だが」
一拍。
「観測を継続する」
沈黙。
「……は?」
決着未満
シオンが後ろに下がる。
「次は全力で来る」
「準備しておけ」
そして――
消える。
完全に。
残された戦場
沈黙。
誰も動けない。
「……何あれ」
セレスが呟く。
「……反則よ」
ヴァレリアが苦笑する。
「……初めて負けた気分」
エルザが低く言う。
「……だが、生きている」
ミレイユが震える声で言う。
「……格が違う」
レオン
レオンは空を見る。
「……いいな」
全員。
「「「「よくないって!!」」」」
だが――
その目は。
今までで一番、燃えていた。




