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第4話 得た力の使い道

私が特殊能力を得たら確実にヒーローのフリして悪事を働きますね、バッ⚪︎ボーイズのホ⚪︎ムランダーみたいに。

 戻って警察の私有地 PM8:40


 貴音はフワフワと浮遊し、九条を抱きしめて移動して到着。2人とも心臓バクバクなのを悟られない様にするので必死だった。だが互いに気づいていたが空の高さがあるからと思い込む事にした。


「ひょ〜!!鳥くらいの速度では飛べるかなぁ?」

 

 そう言いながら彼女を下ろし、自分はフワフワ浮きっぱなしの貴音。


「もうっ......いきなり掴んで飛ぶのは今度からはダメよっ......取り敢えず、車はオート運転で向かわせているからそろそろ駐車場に着くでしょう。それよりも私を軽々持ち続けたから力も向上しているに違いないわ!前に護身術をあなたに教えたときの様に組み手風訓練するわよっ!」


 笑顔でスーツの上着を脱ぎながら言う。


「えっちょっと......もうボコボコにされたくないっすよぉ〜だって九条さん約200センチの男を平気で殴り倒したじゃないすかぁ......確かにあの術は人を救うのに役に立ちましたけども............」


 貴音は目に見えてガン萎えしつつも従い上着を脱ぐ。


「あの時は私達のベストコンビネーションの賜物よっ!あなたが居てこそなのだから......それに今回はタイマンでその巨漢と同じくらいの身長差は少し怖い......わね............そこの隅のデカサンドバッグを殴ってみて」


 と指をそちらに刺しながら、こちらを向き言う彼女。巨漢を倒した時は貴音がヘイトを集めているところを横から顎を殴り脳震盪で勝ったのでコンビネーションなのは一応間違いない。そして貴音も確かに万が一力の加減をミスして殺してしまったら立ち直れないと思い、萎え萎えではあるがサンドバッグの目の前に立つ。


「ボクシングジムでも見ない大きさの奴......これ前殴った時すんごい痛かったんすよ......ふぅ、おりゃあッ!!!......えっ!??」


 貴音は少し気合を入れるには抜けた声で腰を入れたパンチをど真ん中にヒットさせると、ぶら下げている部分の極太チェーンが引きちぎれサンドバッグはコロコロと転がって行った。初めて叩いた時は自身が貧弱すぎて手首を捻挫を仕掛けたが今回は破壊してしまった。


「............?」「............ッ!?!?!????」


 九条は最初何が起こったか理解できなく、理解した時声が出ない程驚き目を丸くしていた。


「あ、あなたを人殺し、それも相棒()殺しの罪を背負わせなくて良かったわ............」


(ここまで!?恐らくパンチ力は現在人類のギネス記録より遥かに高いんじゃないかしら......)


「っす............」


「まあ......次々!早く他も検査しましょ!」


 その後も背筋を測る装置を破壊し、握力計を握りつぶし、力みすぎてダンベルの棒を折り曲げてしまったりと、ありとあらゆるものを破壊してしまったが弁償をさせられる事は無かった。この時、貴音はまた深く彼女に感謝した。


――――――――――――――――


 訓練場がある警察署の前のベンチ PM9:02


 2人はベンチに座り、飲み物を飲みながら九条のスマホで首相の緊急会見を見ていた。


「うへー......首相が会見しているっすよ!九条さん達警察に対する対応的に隠蔽するんじゃないかと思ったんすけどね〜」


「警視庁の私達までにも緘口令を敷く様な事をしたけど、まあ無理だよねぇ〜。だって、あなたと一緒にいる時に無線やスマホの通信で、食肉用の牛が3メートルくらい大きくなって二足歩行で暴れ行方不明。痩せたカラスが日本語を扱い人間に接触を進んでしてきたりとめちゃくちゃな報告ばかりだったから............それに、あなたの容姿と性別が変わったのも病院の職員によって写真などをリークされZでトレンド入りしていたわ、許せないっ」


 緩く話していたのに段々と貴音を害する奴らを思い浮かべて早口で怒りながら話す。


「いや、自分は会見するしないはともかくこの姿になったのは認めるつもりっすから良いっすよ。でも......心配してくれてありがとう」


 と突然の目と目をしっかり合わせてからの、微笑みタメ口感謝にドキッとする九条。


「え、えぇ!気にしないで!」


(かっわカッコ!?元から人垂らしだったのに容姿が更に良くなったからヤバいわ......もうこれ私の事好きよね?私の片想いじゃないわよねぇ!??)


 そんな事を思っていると全く関係ない事を言い始める貴音。


「あ!そういえば牛の奴はギリシャ神話のミノタウロスみたいですね!あとカラスは北欧神話の主神オーディンの周り飛んでるフギンとムニンみたいっすねぇ〜」


「えっ?ああ......そうなのね......因みに牛の方は敵対的でカラスは友好的でうるさいくらい話しているらしいわ......にしても雑学好きと言うだけあって神話も詳しいのね〜私ミノタウロスくらいしかわからないわ」


(まあいつも通りの彼......いや彼女?まあ貴音らしいわ)


「そんで行方不明の牛君だか牛くんか牛ちゃんはどこにいるんすかね」


「まあ通信があるのだから私達警視庁の管轄だから東京よねぇ。まだ近くにいると思うけど警視庁に戻らないと詳しくはわからな............っ!?」


 街頭の灯りに照らされたベンチに座る2人を覆う様に後ろから巨大な影が伸びてきた。そして、この獣の臭いに自分達の後ろに例の奴がいる事に気づき叫ぶ。


「かじっ後ろォッー!!!!」


 そう言いながら九条はホルスターに手をかけ後方に下がり、一般人の貴音は声に驚き振り向き、更に見た物に重ねて驚き怯んでしまう。


「なっ!あ、足音なんてし......」


(聞いていたサイズよりデカいッ!私の約2倍!4メートル前後は少なくともあ......)


 2人は周りに人が居ない事もあり爆音で会見を見ており、更に重ねて2人だけの空間で気が緩みきっていた。それが原因で背後を取られ貴音は思考が間に合わず、牛の5本指の巨大な拳によるパンチを顔面にモロに喰らい塀を貫通し遠く向こうの民家をぶち抜いて行った。

 

「うンギィヤアァアァッ〜〜..................」


 貴音はアホみたいな悲鳴をあげながら吹っ飛び轟音と粉塵と共に道路向こう側の建物にぶつかり正反対の静寂に包まれた。その時九条は怒り狂い銃を取り出す。


「貴音ッ!!......こんのッ......よ、よくもっ畜生風情がァアアッ!!!」


 貴音は見えず安否不明、距離からして悲鳴や呻き声すら聞こえず生存は絶望的と思い、彼女は仇打ちの為に銃を向けた。それは自衛隊で使用されている9mm機関拳銃、治安悪化の為に警察でも使用される様になっていた。


 そして日本の警察は基本発砲は最終手段、だが警察官にあるまじき勢いで憤怒する九条は牛のドタマに乾いた音を立てながら25発正確に撃ち切る。


「ンッ!ん゛んもぉおオ〜〜!!!」

 

 と唸るが目に見えてダメージがない、弾は全て牛の頭蓋骨に当たるがポロポロと地面に落ちていたのである。そしてこの唸りは苦しみではない、怒りの唸りである。


「う、嘘だ......そんな......血どころか擦り傷も無いって!なんなんだよックソッ!」


 非常事態に珍しく悪態をつく九条、だが今は冷静になっておりSOS発信を署の近くとはいえ念の為した。そしてダメで元々と特殊警棒をジャキっと鳴らして取り出す。


「貴音......チッ、貴音が吹っ飛ばされた時点で勝ち目が無いのは私でもわかるわ。でも、ここで引き下がる程ヤワじゃないのよォ!!」


 そう叫び牛の股間目掛け警棒を体重かけて振り下ろすが、容易く牛に強い力で掴まれてしまう。


「なっ!??いっ、痛い......このっ無駄に5本まで指増やして......あ゛あ゛っ!お、折れるっ............」


 必死に振り解こうとジタバタするが身長約4メートルと156センチでは話にならない。振り解くのに夢中でいると牛がゆっくり腕を持ち上げ、自分の顔の前に九条を持ってくると口を開く。


「ぶるふぉっ!!オマえはヤワ、ジブん勝てナい」


 と勝ち誇る様にニタつき嘲笑する牛。九条は日本語で話しかけられるとは思わず面を食らう。


「ッ!?こ、言葉までも!知能の進化がここまでとは......それに動物には無い表情があるッ!こ、こいつらは人間に近付いてい......」


 言い終わる前に持った腕を振り上げて地面に思い切り叩きつける牛。まるで子供が遊びで蟻を潰すかの様に容易く行われた攻撃は、アーキアンの九条には大ダメージである。


「ぐあっ!!う゛っ......ガフッ......」


(か、確実に肋は何本も折れた......たった一撃で......持ち上げられた方の腕は骨が肉を裂いてはみ出ている......ダ、ダメだ、私は完全に舐められている......貴音を殴ったときの気合いと力を比較すれば明らか、こいつは私で遊び始めたんだ......猫が蜘蛛や虫を遊び殺すが如く............た、貴音......)


 地面のコンクリートには円状に広がるヒビ、九条のスーツはズタズタに血塗れ、心も折れかけ好きな人の名前を心の中で呼んでしまう、心で言っても返事が無いと知りながら。もうモゾモゾ動く事しか出来ない九条に向けて牛は叫び殺害宣言をする。


「言葉ぁ......アっていルカなぁ?コれからト殺だヨォオォおぉオ!!!!」


 そう言いながら両手の拳を握り合わせて九条の肉体目掛けて振り下ろす。


「ヒュッ......うぅうう......た、貴音ぇええっ!!!!!」


(も、もうダメだ......これなんてプロレス技だっけ、ダブルスレッジハンマー......だっけかな?......ハハ......ごめんね、貴音)


 九条は諦めずに貴音の名を叫ぶ、それに応える様に九条の全身を砕かんとする拳は轟音と共に打ち止められていた。


「「!?!?」」


 拳が当たる刹那、たった片手で受け止め掴むヒーローの姿を見て、争う両者共に驚きのあまり時間が止まった様だった。浮遊しているヒーローは牛のを方を睨み言う。


「テメェ......俺の大事な相棒に何してくれてんだ?それにこの服!買ってもらったばかりなんだぞ?」


 衣服こそボロボロであるが軽い切り傷や擦り傷程度で済んだ貴音がヒーローとして相棒を守る為に戻って来た。


「い、生きていたのねッ!!」


(良かったぁ......本当に良かった............)


 九条はまだ動く片腕で涙を拭い喜んでいた。九条にとって、己の外傷など気にせず貴音の安否がわかった事がとても嬉しかった。


「モ゛オ゛オ゛ォ゛オ゛!!!ヒト!!屠サつ機会ガァ!!......っ!?ウデ離セぇ!!!」


 貴音はミシミシと音を立てて牛の両手拳を掴むのをやめない。牛の言葉を無視し九条に逃げる様に言う。


「俺は大丈夫!九条さんっ!立てますか!?止血して離れられるならそのまま逃げてっ!」


 そう貴音が言うと1番最初の獲物を逃がされたく無い牛は怒り狂い始めた。


「ヒと!逃がさナいぞォお!!」


 そう言うと筋肉を更に膨張させて貴音からの拘束を解き、四足歩行でヨタヨタ動く九条に向けて走り始めた。貴音はフワッと飛び、立ち塞がると頭突きをする。


 走っていた牛は威力が増し有利かと思われたが、貴音は地に足をつけ踏ん張った為に牛の方は反動を受けて首を痛め膝をつく。


「誰がぁ......逃さないって?............っいってぇ......カッコつけてらんねぇわ............ねぇ?争う理由は何なの?やめようよ?まずは落ち着いて......」


 貴音はこの人間が支配した地球で、言語が理解できるまでいきなり進化した家畜の牛が困惑して暴れていると思い同情と善意から戦闘続行を拒む。ただこれは九条を遠くに逃す為の策でもある。


「イやだぁ。同ほうヲコろした!!お前ジャま!」

 

 そう言うと九条の事を忘れて再度直立すると貴音の方に憎しみを向け拳を突き出し戦闘続行の意思を見せた。


「そうか......そうだよな。仲間が殺されるのは辛いよな............だが、こちらも黙って殺されない。私も同胞を大切だと思っているからね......じゃあ......はぁ............ケリをつけよう」


 貴音は悲しげな顔をしつつ戦闘続行。だが貴音は殺す気では無く無力化を目的として戦う。


「ぶるるふおぉお!!」


 牛は先手でストレートに右左連続ラッシュを貴音に浴びせるが、腕を曲げガードをし避け懐に入り膝を蹴り、自分の体を捻ってもう片足で横腹を蹴る。


「ぶるるっ......ぐわああ!」


 痛みに我慢できず大振りに飛びかかるが回避し、牛の頭を思い切り地面にめり込む程に踏みつける貴音。だが、そこで足首を掴まれヌンチャクを扱う様にブンブン風切り音を立てて周囲の構造物に貴音を叩きつける。当てられた塀は砕け、街灯は90度以上曲がり、電柱は鉄筋諸共折れた。


「ぎゃああぁあっ......!!ぐ、ぐぅ......オラァ!」


 振り回され叩きつけられる痛みに耐えて、強化されていた動体視力で隙を見つけ目潰しをする。


「あがががだだだ............ぬぅ!!」


 腕から離された貴音は吹っ飛び転がり壁にぶち当たる。そこに壁ごと貴音を砕く様に飛び蹴りをする牛。だが貴音は痛みで脱力しつつも、能力で何とかふわふわと空中に退避する。互いに攻撃された部位が痛み苦しくなって来たところで警察や自衛隊が集まる。


「大丈夫ですかっ!我々に後は任せてください!」


 そう言うとアサルトライフルを牛に向けて包囲した。だがそんな銃では意味が無い事を知っている貴音は叫ぶ。


「や、やめろっ!アーキアンではっ今の武器では奴に勝てないっ!!」


 それに驚く隊員、その瞬間隙が生まれてしまい牛は全速力で走り戦線離脱する。やはり銃弾をものともせず逃げて行く。


「イまは!今は!決着はオアズケダァ!!!!」


 進行方向の物を全て壊し、隊員も吹っ飛ばして逃げて行く。それを自衛隊は追いかけ、警察は事件の処理を始めた。一方で走り逃げる牛は意味不明な事を叫び逃げ続けていた。


「私ヲヨぶ声っ!聞コエる......ムかうぅ!!!!」


 そう叫ぶと車の通れない道を通り、何かに導かれる様に道を進み追跡不能まで逃げられてしまう。


――――――――――――――――

 

 病院 PM11:45


 何とか逃げて保護された九条は救急車に乗せられそうであったが、それより早く着かせれると貴音は言い止血剤と痛み止めを使用した九条を抱きしめて病院に浮遊で到着。


 容体は右腕解放骨折、肋骨4本骨折、左足首捻挫etc......と大小合わせかなりの怪我をしたが命に別状は無いらしい。手術も簡単だったそうで待っていたらすぐに終わり、そこから医療の最新技術を使えば1週間も経たず退院できるそうだ。それのおかげでリハビリもほぼいらないらしい。


 一応自分も検査したが無傷、もしくは傷が回復してしまっているらしい。その為に今日突然の退院となり、それと特別に九条の病室に行く事を許可された、そこは自分が入院していた部屋だった。


「失礼します、梶原貴音です」

 

(新しく入院するのは私の友人だから、私の私物退ける手間が省けるからこの部屋なのかな?)


 ノックをして名乗り返事が来たので入室する、直ぐに何本も管に繋がれ、顔にガーゼをつけ身体中の素肌が見えるところに紫色の痣が目立つ九条と貴音は目と目が合い貴音は罪悪感からフリーズしてしまう。


「ごめんね、また助けられちゃったね......本当にありがとう............」


 痛々しくもあり穏やかに微笑む九条、それを見た貴音は己の無力さを感じた。これではヒーローでは無いと。


 九条さんの()()助けられちゃったに昔を思い出す。あの時に初めて出会い、私の運命を変えた。昔は運が良く助けられただけなんだよなぁ......

間抜けな声で吹っ飛んで行くヒーローなんているんですかね。

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