第3話 首相による極秘会議
主人公出ません。
同日のPM3:00 首相官邸の極秘の会議室、作戦室
ここが使われた事などはここ数十年無く、存在すら知らない議員の方が多い。そして呼び出された与党の議員に大臣、政界の重鎮に関係者など一同が慌てふためいている。無理もなく移動中に知らされた情報だけでも情報過多で脳が爆発してしまう様な状態であった。
そう騒いでいると首相、白衣を着た男が入ってくる。皆が身構えていると首相が口を開く。
「えーっ......先刻にWPDCOで極秘の会議をしました。一難去ってまた一難......困った事に処理した隕石以上の緊急事態により、私の独断で皆様方を召集させて頂きました......つきましては............」
そう話していると礼儀や常識など無視して横槍を入れる焦り顔の若手議員。
「隕石以上!?薬師寺総理......移動中に秘書から伝えられた事前知識では議論を始められません。異能?化け物?映画の話ですか?全く理解できないっ!」
そう1人が言うと続々と不満が漏れ始める一同。
「隕石は確かに砕いただろう?何故今更、世界惑星防衛調整局など出しゃばるのだ?」
「核ミサイルの破片が落ちたか?もしくは隕石か......?」
「だか隕石の破片は落ちても大した事ないって話だろっ!」
「ご静粛にお願いします。今から先日の隕石の性質などについて、研究員の方々からご説明があります」
とヤジを無視して丁寧に落ち着いた口調で説明を続ける首相。だが不満と不安は収まらず静かにならない会議室。
「何を......今更終わった話を............」
そう1人がまた文句を言うと首相は豹変し、壁をダンッと殴り怒鳴りつける。
「言葉を慎め、マヌケ共がっ!今研究してる奴が説明すると説明しただろうが、この鳥頭ッ!また始まったのだよ、面倒ごとがっ......!これは議論ではない命令の様なモノだ、今や日本......いや、世界は自国を我が国を、我が国をと天下を取ろうとしているのだぞっ......下手すれば聞いた事もない弱小の発展途上国の雑魚共に日本やアメリカ、イギリスなどを支配されかねん。......緊急事態なのだよ、話を聞いてから文句を言えっ............では頼みましたよ......」
普段は物腰柔らかで誠実。現在の支持率驚異の89.42%と世間からも好印象の首相が豹変、怒涛の罵詈雑言で議員らを黙らせる。静かになると研究員ですよと言わんばかりのありがちなメガネと白衣の研究員が解説をする。
「承知いたしました。皆様方、隕石の対応お疲れ様でした。しかし、破壊しただけでは終わりませんでした。寧ろ、時間が無かったとは言え中途半端な調査の情報で中途半端に隕石を破壊してしまった事により、各国もちろん我が国、日本では異変が相次いで起きています」
そう言うと白衣のポケットからケースに入った石と粉末を取り出す。
「こちらは今回破壊した隕石の欠片と粉末です。日本国内に落ちた破片を集め調べたところ未知の金属と、それと別に詳細不明のバクテリアで、そしてこれは大気圏を突破に耐え、今生きて地上に降り立ち空中を漂っています。まだ時間をかけての調査を出来ていませんが、現段階では地球上の生物に近いモノはほぼありません。まだ落下から1日も経っていない事もあり正直分かることの方が少なくて............」
それを聞き、危機感を感じた余計に慌て始める一同。SF映画の様に幼体から急成長し腹を食い破る様な生物が落ちてきたとなると恐ろしい、もしそんな事があれば困ると連続で研究員に疑問をドバーッとぶつけた。
「それは所謂エ、エイリアンでは無いのか......?」
「まさかわ、私達の脳に寄生したり......」
「た、ただ、漂っている!??もう確実に吸ってしまっているぞ!どうしてくれる!」
そんな中、落ち着いたままの議員も少数では居た。その中の1人に中年の能力者がいた、その名は本國文記だ。彼は一旦自分が何者になったのか、この力にデメリットなどあるのかとにかく詳しい事を早く聞きたいと思い、口を開き話を戻そうとする。
「最初に総理も聞いてから文句や意見を述べよと仰られただろう!私達をここに召集し報告する余裕はあるのだ、そう即座に死に至るモノでは無いとそこでわかる、それに狼狽え絶望するのは話を聞いた後にでも出来る......申し訳ないです。研究員さん、続きをよろしくお願いします......」
席から研究員の方を見ながら頭を下げる本國。そして周りの議員は謝罪する。
「た、確かにそうでした......失念でした............副総理......」
「本國先生の仰る通りだ......面目ない」
そんな事を聞いていた研究員は本國に少し会釈をし、応じる様に話を再開する。
「お気になさらず、世界中でパニックに現在進行形でなっておりますので。続いて現在わかっている事をお伝えします。この地球外生命体は我々の細胞に入り進化の様なモノを齎す物で、地球上の生物の大半がミトコンドリアを取り入れた様に同じことが起こっています、ただ人工的に取り込む方法は不明、現状では不可能です。そして人以外の生物にも入り込む事が判明しており、これら進化した人間の個体は超能力を使い、動物は人類と見た目がほぼ同じ姿になり、二足歩行し言葉を話す例があります。動物の見た目を残したまま二足歩行になる例もあります。この突然変異はほぼ必ずその生物に有利な進化をし、生存に有利となる事も判明していますが、もしかしたらデメリットのある生物がいる可能性は0ではないです。この要素が判明して以降結託していた国々は疑心暗鬼、情報の共有に一切応じないです。数日前までは北の独裁国でさえ協力的に隕石を破壊しようと協力していたのに、今では通信の応答すらまともにないのです。そして、もし人工的に能力者を生産する事が不可能、全人類が分断されるとなると先手を打って洗脳や虐殺などで我々無能力者の安全を取るためのアクションを早期に行うべきです。ですが存在自体はもうWPDCOとの会議で隠蔽しない事に決まりました、現在の全世界の能力者数はまだ1万人以下でしょうが、あまりにも目立つ個体の数が多く目撃証拠がある今、下手に隠蔽工作をすれば政権に不信感を持つ、もしくは能力者が無差別テロを起こす可能性が高まります。その為、一般人、能力者、進化した動物などをわかりやすくする為の名称が決まりました。我々無能力者は古い動物などの意味のアーケゾアから《アーキアン》と呼び、隕石から力を受けた者達を《ミーティアン》、ホモ・サピエンス以外の生物の能力者を《ミュータント》と呼ぶ事になりました。が勿論差別的な意図は無い為、使用方法を気をつけてください。それでは私は失礼致します、お疲れ様でした」
研究者は小走りで立ち去った。
「という事でございますので、よろしく申し上げます。この後、会議が終わり次第緊急会見を行います。他国より先にすれば信用になりますからね。そしてこの、千載一遇の好機を逃す事は国家滅亡、植民地化による奴隷扱いなどに直結しかねません。多少事を荒立ててもしょうがない事、コラテラルダメージです............それにここにネズミ......隠れた能力持ちの人間がいる事でしょう。まあ我々の邪魔をせずひっそりと静かにしているなら、こちらからも現状では何かするつもりはありませんので。ただ他国に人工ミーティアンを先に作られてしまった時のための軍拡、自衛隊を軍とし核を配備する事を辞さないッ!強行姿勢で臨むつもりでありますッ!......これに解散致します、お疲れ様でした。会見で公表される以外のデータを口外しようなんて事は......考える事もやめた方が良いでしょう、それでは」
そう言うとスーツを整えながら退室して行く薬師寺。一同は無駄話も許されず解散し首相は、この日の21時頃に会見を開始。
内容はアーキアン、ミーティアン、ミュータントの区分、隕石は毒では無いが身体に変化をもたらす為、自覚症状があれば最寄の病院や役所の緊急医療テントで24時間体制で検査などを行うなどのことを伝えた。
そして帰路に着く本國は秘書が運転する車の中悩んでいた。
(困った事になったな......私は副総理の為、ミーティアンとやら同胞を守る方向で動けるが......下手に怪しまれ全てがパァになっては無意味ッ......暫く、様子を見て妻や娘夫妻や親戚にもこの力は内緒にしておくべきか............私の力は戦闘向きではないので誰か......誰でも良いッ......薬師寺が核など使用しようとする暴走までいかぬ様に抑止力が必要だっ......)
そう深刻そうな表情をミラー越しに見た秘書が言う。
「大丈夫ですか?本國先生?お具合が悪そうですが......」
「あ、ああ......私は心配性なので、色々考えてしまっているだけです......ご心配ありがとうございます......」
部下だろうが秘書だろうが怒らなければ敬語を使い面倒見の良く、低姿勢で気遣いのプロな本國は野党からも好印象の男である。それ故にこうして無駄に心配され危機に陥ってしまう。
「その心配......もしかしてご自身がミーティアンだから......とか?ですかね......?」
「っ!?......い、いや私は......」
(気遣い、仕事の出来る部下を持つとこんな所で危機に陥るとはっ......)
「隠さなくて良いですよ、先生。この車には盗聴器も盗撮機も何も無いです。......それに私もミーティアンとやらになってしまった様ですからっ」
そう笑いながら秘書が言うと本國は潔く誤魔化すのをやめ、自身もそう伝えコンビニに停車しコーヒーを買い、飲みながら事務所に着く前に会話をした。本國が自身の力を説明後に秘書が話し始めた。
「私の力は......この身体から出てくるメモ帳とペンが全てですね。少し本國先生の力と似ていますね。よくある手のひらサイズのせいで汎用性に欠けますが、私が描いた絵が本物となりメモ帳から取り出せます。職務中以外ずっと色々と試しましたが条件は私が触れた事がある、書いた物の仕組みなどをそれなりに理解している。他者から見ても何を描いたかわかる程のクオリティの絵でないとダメみたいです............本國さんの護身に役に立てるとしたら海外で触った事のある小型の拳銃と手榴弾を急いで描いて出すくらいですかね......なんだか不甲斐ないです、お世話になったのに恩を返せそうに無くて......」
秘書は俯きズボンを握り締め絞り出す様に話すが本國は笑いながら秘書の肩に手を置く。
「いやいや、私1人だけと言う重圧から逃れられただけ十分にありがたいですよ、焼石君!......まあ、取り敢えず互いに下手に能力関連を話すのは控えましょうか。薬師寺総理はあまりミーティアンに対して印象が良く無いですからね」
「そうですね......あと事務所にも何か盗聴器などが仕掛けられていないか、こちらでも調べておきます。......あ!Zでミュータントと戦った話題の人物が更にすごく騒がれていますよ!他の国のトレンドでも一位です!」
「名前は......?」
「恐らくですが、これだそうです!」
そう言いながら焼石はトレンド一位の欄を本國見せ、この人物などが写った写真を本國に見せた。それを見た彼はこの方がヒーローになり得ると確信し行動に移した。
本國の能力はド⚪︎えもんのポケットとジョ⚪︎ョの4部エニグマみたいなモノと考えると便利だよね。