表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

38/38

第37話 人殺し 序章完結

序章 深まる怨恨と再起する正義が終わります。

個人的には未来VS千劔破回くらいの見所です。

 昨日が一部制限されたままの死神は猪突猛進、4つの刃を連続で貴音に振るうがヒラリと避けて見せた。


「............」 ブンッブォオンッブンブンッ


 某光の剣の様な音を立てて無言で殺しに来る九条にどうしたらいいものか考えつつ避け続ける貴音。


「クソッ!何すりゃあ貴女を助けられるんだっ。力が増したって打開策が無きゃ意味ないっ」


(GSを出さない?もしかしてエネルギー吸収も止まっているか?)


 そう考えたら直ぐに口からビームを放つ。


「ぐあ!............効いているのか?だが吸収はされていないっ!ならば(エネルギー)を込めて殴れば良い」


 ビームを受けた場所は少し汚れる程度であったが吸収された様子は無い。なのでエネルギーを込めた拳で殴り抉り外装を剥がす事にした。


「そのスーツ()から出してやるからなっ!もう私は失わないッ。オラァッ!!!」


 相手の刃に拳を当て弾きながら脇腹に1発殴り反動で僅かに崩れた体勢を見逃さずに浮いた片足を払いのけて転ばせる。


「腕がまず多いんだよッ。爆ぜて千切れろッ」


 馬乗りになり生やした腕の根元に掴み掛かった貴音は完全ゼロ距離エネルギー波を放つ。爆風で粉塵が舞うと共に増やした方の両手が飛んでいく。それに追撃でフルパワーで消し飛ばす事に成功する。


「はぁはぁ......マズい。普通パワーアップしたら勝ち確だろ......回復した体力が明確に削れている......早く壊さなくて............」


 もがく未来を地面に押し付け拘束しながら呟いていると死神から音声が流れる。


「......ジジッ............強制セーフティー解除プログラム完了まで25%」


 その冷たい機械音声を聞きゾワっと冷や汗をかく貴音。


「そっそんな。今フルスペックに戻られたらマズいッ。九条さん申し訳ないですが手荒に......っ!??」


 焦り、拳を握りしめ殴ろうとした瞬間に手の違和感を感じた貴音はグーパーグーパーして手を確認した、悲惨な事にその拳の指先は黒く焦げ朽ちる様に崩壊が始まっていた。


「......こっこれはっ!この今の状態は純粋なパワーアップじゃないッ!ただ無理矢理力を引き出し己の身体をオーバーロードさせているに過ぎないのかッ」


(なんでカッコよくヒーローさせてくれないの。それに解除の仕方がわからないのがマズい、彼女を救った時に私は人の形を保っているのか......)


「......50%完了」


「ッ!!」


 だが時は待ってくれない、迷う暇があるなら行動に移すしかないと判断して指の足りない拳を振るう。力を込めれば込めるほど己の崩壊が早まる、だが最愛を救えずして何がヒーローかと決心し、この刹那の連撃(ラッシュ)で決める。


「もし終わるのは私だけで良い、喰らえE-4!必殺!全身全霊激熱連撃オーバーロードラッシュッッ!!!」


 子供向けヒーロー作品からアメコミやらハリウッド映画が好きな貴音はその場で思いついた単純な技名を鼓舞として叫びながらスーツを抉る様に連続で殴る。その度に指の第一関節がすり減り指が無くなるも痛みも構わず続けた。その威力は凄まじく九条は地面にめり込みクレーターが広がっていく。そして徐々に皮膚が露出し檻が剥がれていくが、そううまくはいかないのである。


「オラァッ!............ぐ......がはっ......吐血か。この強靭な肉体にも限界が............うぅ......」


 久しぶりの目眩に頭痛吐き気と苦痛が濁流の様に押し寄せふらつき跪いてしまう。

 その隙に半壊以上した九条が立ち上がり貴音を蹴り上げた。


「ぐうぇっ......どこにそんな力あんだよ............あぁ......その虚な目にまた光を......」


 自分でアーマーを抉っておいて顔が半分程露出した九条を見て精神的にダメージを負う、精神病の貴音にはキツ過ぎた。


(私が............私がイキったからこんな事に......貴女を、家族を、友人を殺したのは薬師寺じゃない俺だ)


 耐えきれず遂に涙が垂れる、いつもの様に大泣きする訳でも無くただ静かに涙が溢れでる。全ての責任が自身にあるのだと認識し自責のループが始まり、自らで自らの心に傷を、いや腐敗を齎す。傷は治る、だが腐敗は不可逆だ心の病というのは心に傷を負うのでは無い。凍傷で四肢の末端が壊死し腐り落ちる様に心が腐敗し削れ落ちていくのだ。大義だの正義だの背負えるモノは背負って人の為世の為動いた過労の貴音の心は腐り落ち切るは容易い。だが貴音は紛れもなく誰かのヒーローだ、故にヒーローならば立ち上がる。濃霧の中で使命を見失っても希望を灯りに照らし再起するのだ。


「違うッ。懺悔は後だ、目の前の人間を助けれずしてヒーローでは無い、何度も言う何度だって言うッ。ヒーローってのは悪に背を向けない、向ける時は人々を庇う時だけだ」


 そう言うと立ち上がりふらつく死神(E-4)に天誅を下す為に慎重に攻撃を再開した。


「九条さんは傷つけずアーマーだけを精密に剥がすッ!うぉりゃあ゛あ゛!!!」


 そこからはひたすらに泥臭く殴り合う、あの日あの過去の日の鍛錬の様に、九条から護身術を学んだ時を彷彿とさせる純粋な体術のぶつかり合いだ。だが死神はいやらしく肌が露出した部位でガードをする、魂胆は理解している冷酷なAI。そして数十秒激しく殴り合い80%程のアーマーを剥がし無力化、だが再起動が始まれば周囲に散らばった破片を吸収して振り出しに戻ってしまう。


「畜生っ、右手首から上が無くなっちまった......だが相手も............クソ、ずるいぞっ!!ゲームのボスじゃねぇんだぞ」


 残留しているアーマーは九条のアンダースーツの上で形を変えてさらに薄くなる代わりに欠けた顔以外全身を覆い、また手が刃になり緑色に光り始めた、だが不幸中の幸いフェムトマシンが足りないのか片手だけだ。


「......ジ......ザザッ............75%完了」


「そんでまだそれは有効なのかよ!現代の技術力に感動と恐怖を覚えたよ......」


 科学大好き貴音は追い込まれながらも自身が好きなロボット関連の分野がこんなに発展しているのだと感動を覚えてしまう。だが現状で科学の域から逸脱したお前が恐怖するなと言う話でもある。


「とにかく殴るのは止めないよ......」


 それでも必死に薄いアーマーをガラスの様に破り砕く。その破片で彼女が傷付くのを見て苦虫を噛み潰した様な顔になる。だが止まらぬ刃、バク転回避をして距離を取った瞬間に死神に違和感を感じた。


「ん?動きがぎこちない?終わりが近いのかっ!ならば畳みかけ......っ!だめえぇええ゛!!!」


 いつもの低めの声とは思えぬくらい女の子の様に甲高い声で絶叫して貴音は死神に近寄る。何故なら死神のプログラムに九条が歯向かうかの様に片手の刃を自身の頭部に突き刺そうとしたのだ。

 だが刺す手前で止まってしまい死神は再度動いてしまう、これはAIの策略だったのか九条を守る為に無防備に飛び込んだ貴音の右腕を奪い更に追撃に袈裟斬りを喰らう。だが幸い身体はオーバーロード状態で自傷しつつも強化されていた為に深い傷で済み切り離されず助かった。


「いぎゃああああ!!!!」


 悲鳴を上げ痛みに悶えた貴音は反射で涙を流すが雨で自身が泣いているかも気づかず。


「痛いよ......血がっ血が止まらない............」


 またいつもの様にメソメソする貴音だが次の音声を聞き瞬時に我に帰った。


「再起動プログラム100%実行開始」


「っ」


 死刑の通告を受けた貴音は是が非でも止める為に歯が折れる程に食いしばり立ち上がると、子供同士が喧嘩するが如く掴み合い残った手と足で必死に破壊した。もう殆どのアーマーが外れ顔も1/3以上が見える状態まで追い込んだ貴音。だが無情にもプログラムは動く、何故ならば九条にはコアが埋め込まれている、そこから少しずつではあるが新しいフェムトマシンが生まれていくのだ。貴音は異常なタフさに疑問を持ったが直様それを思い出す。


「......もう貴女を殺すしかないんですね。さっきの自殺行為がAIの策略でないならば貴女はこんなにも苦しみ続けたのに、それでも己が死んででも被害を減らしたいんですよね」


 大粒の涙を無意識に流しながら、目の前の佇む大部分が崩れた死神に語りかけた。だが当然AIは聞かずにこちらに近寄り始めたが貴音も勝手に言葉を伝えた、届くかわからないが言いたかった。でも遅かった。


「......貴女の事が大好きでした、伝えるのが本当に本当に遅れてごめん。......愛している未来、さようなら未来」


 そう言うとコアがあるであろう胸と首に目掛けて残った腕で全力のビームを放ち見事に貫く、要らぬ時だけ成功してしまう貴音らしい見事な攻撃であった。2箇所数センチの穴が空いた死神は崩れ落ち倒れた、大雨の中九条の目に滴る雨粒を涙が流れた様に貴音は感じた。彼女を撃ち抜いた時に力を使い果たしたのかオーバーロード状態は終わり光を失いながら地べたに座り込む。


「............私の阿呆が、なんでもっと早く言わなかったんだよ。でもシュヴァルもフギンも愛したいんだ......ほんっとに最低だよ............ッ!!!!?」


 1人雨の中血塗れで後悔していると骨が軋む様な無理矢理にプラモデルを動かして割れそうな嫌な音が鳴り、その方向を見ると死神が人体の関節を無視して無理矢理に立ち上がり始めた。皮膚が裂け骨が一部露出し筋繊維と黄色い脂肪が見える。


「再起動再起動再起動フェムトムトムトマシンの回収回収回収回収......ザザ......ジジジッ............サツリク」


 半開きの片目の九条の顔が恨めしく感じる様にこちらを向きAIの壊れかけた音声が鳴り響く。貴音が狙わなかった顔面部分から再起動を始めようとしていたのである。それに気づいてか知らぬか貴音は本当に最後の力を振り絞り顔面に攻撃をする。


「もうやめて............もうやめろよッ」


 そう怒り泣き叫びながらエネルギー弾を顔面に見事にぶち当てると完全に倒れて動かなくなった。終わったのである、いや貴音が彼女を終わらせたのである。

 崩壊した池袋に貴音ただ1人。


――――――――――――――――――


 崩壊した池袋 決着がつく少し前


 車で来ていたはずの本國は必死に雨の中瓦礫を乗り越え走っていた。普通車ではこれ以上進めないと判断したからだ。


「はっはっ......家内にグチグチ言われた通りダイエット、しておけばよかった......いや、それよりも彼らがとても危ない状況だ......」


(ハッキングする為に忍ばせたバースデーが無力化されてどれ程経った?結局彼らを殺し合わせる羽目になった私はどのツラ下げて会えば良い、そもそも彼が勝てるかもわからぬというのに)


 バースデーの信号が完全に途絶え本國は焦り九条を直接改造しプログラムを書き換える装置をパーツに分けて自分の本にしまって戦地に赴いているのである。ただこの装置には問題があり九条が拘束されているか無力化されていないと使用が不可能なのである。だから使えなかったがもしかしたらと用意した本國は聡明だ。だが手遅れだとすれば意味が無いが。


「この辺りが中心地だ......ん?銃声!?どういう状況なのだ!?」


 太り気味の本國は必死に走り寄ると想像を絶する光景を目の当たりにした。


「なんで......俺は......何も守れないのに......に硬い......の......痛くないけど............は痛い......」


 カチャッカチャカチャ......カチャ


 貴音は動かない九条を膝に寄せて乗せ、残った片手で拳銃を顎に突き立てて脳天をぶち抜く様に連続で発砲し硝煙が上がる。そして弾が切れても虚ろな顔で引き金を引き続けていた。拳銃は翼が警察官から奪いその辺に落ちたであろうモノを拾い使った。

 片腕が無く血塗れで泣きながら自分に発砲する貴音とズタズタの九条を見て呆然としてしまうが冷静に鳴り、貴音から銃を取り上げて投げ捨て叫ぶ。


「正気に戻るんだっ!君は()()()()()()()()!みんなの()()()()なのだろ!」


 そう言うとダメ元で九条の修復装置を本から出して組み立て始めた。いざと言う時に即座に組み立てれる様に練習をしたであろう手際の良さで。


「......あぁ〜............どうも本國さん。そう、私はヒーロー、メテオブレイカー。名前の通りブレイカー(破壊者)なんです、護れないんです、全部壊れちゃうんです。ヒーローは遅れてやってきて砕いていくんです、敵も守るモノも。大切で最愛の彼女にもしたように............薬師寺......薬師寺のヤローはどこです......か?」

 淡々と話すが殺意と失望が入り混じる恐ろしい声で質問する貴音。普段は吊り目だが優しさを感じたその目は殺気を隠せていない。


「薬師寺......か。ダメだ、子供でもわかる。君が何をするかは、それに今の君では............ッ!?」


 そう組み立てながら話して貴音の方を向き驚愕した本國。何故なら貴音の右目の瞳孔に燃え盛る輪の様な模様に、左目瞳孔には雪の結晶の様な模様が浮かび上がっていたのだ、更にそれだけではない流れた涙が蒸発し、片方は粒に凍り落ちていく。目の中間からは相殺されているのか涙が普通に流れている。


「か、梶原君......一体それは............」


(大体理解した、特殊能力の発現と強化の条件が......何故餓死(うえじに)しそうなカラスに能力が、何故屠殺寸前の家畜に能力や知性が芽生えるか。そして鬱や絶望などの強いショックを受けた人間にばかり力が目覚めるのか、一部私の様な例外があれど基本的には宇宙の生物は選別しているっ!我々を!死に直面したり精神的なショックを受けた生物などを選んでいるのだ!......いいや、それより彼を止めなくては。まだ九条さんの蘇生のチャンスはあるんだ、彼がっ彼が本当の人殺しになってはいけないっ)


「待ちなさい!まだ彼女を蘇生できるかもしれない、フェムトマシンと完全に融合した彼女は鉱物と生物の中間の存在なんだっ!それにその満身創痍で首相の元に向かっても無謀だ、Eシリーズの兵士に遺伝子操作された強化兵士が大量にいる!助かった命を無碍にするな!」


「いいや、私をじゃあなく私が無碍にしたんだ。彼女に。それに助かったのではなく死に損ねたんです。私は恩を仇で返し続け人々を不幸にもし続けた、一度汚れた手は何度汚れても汚れた手に変わりはないのです」


 そう言い飛び立とうとするもの数メートル上がり落ちてしまう。


「足りないッ!......私には何もッッ!!!!」


「落ち着きなさい!それ以上傷が広がると君でも............!?」


 貴音は叫ぶと紫のオーラに包まれ黒い電気が身体を走り周囲の瓦礫が浮かび始めた。そして絶叫の最後に貴音の目の前は氷と火の海になり地獄絵図と化す。


「なっ何だ!?計測した時にはこんな力は無かったぞ......規格外過ぎる。それにこの紫のオーラの様なモノにも何か力があるだろう、これ以上暴走されては私の身も彼の身も危ない。やりたくは無い上に効くかわからないが......」


 そう言いながらガスマスクとグレネードランチャーを本から取り出すと全弾発射し辺り一面に黄色い煙に包まれた。


「毒も薬も殆ど効かない君に効く様に開発されたモノ......1発だけでゾウの群れだろうと鯨だろうとも一瞬で気絶させるシロモノ............自律神経に影響を及ぼし心臓、脳などに届く血を制限させる兵器......超人に効くか......?」


「うっ......うぐぅ............みく............」


 そう言い残し気絶した瞬間氷と炎は消えオーラも消えて静寂が訪れた。倒れた貴音は涙を流し続けていた、雨でもわかるほどに。


「なんとか気絶はしたか......こんな......私のせいで可哀想に。しかし、満身創痍で全弾受けて即座に作用しないなんて......あまりにも恐ろしい。とにかく梶原君用の自然治癒力を高めるモノを傷口に打ち込まなくては、これは薬は薬でも彼から採取したDNAなどを使っているから効くはずだ。あとは彼女だが............おおっ!コアがギリギリ残っている!治るぞ!装置を修復とプログラム上書きに設定してと......2人は横並びに寝かせておこう、私には私がやらねばならない事がある」

 そう優しく言うと装置にメッセージを残して立ち去る本國。だが顔は険しかった。




――――――――――――――――――


 コントロールルーム PM:3:55


「クソっ本國め何をしているんだ!お陰で原稿を複数書いたぞ、この礼にこの後散々コキ使ってやるからなぁ」


 そうしていると扉が開き本國が来た怒りながら薬師寺は向く。しかし、突然銃を向けられ呆気に取られた薬師寺。


「お前!びしょびしょで何を............え?」


 パンッパァンッ......


 少し変わった銃声が2発鳴り響く。


「薬師寺、お前はもっと早くこうするべきだった。彼が例えお前の前に来ても彼は優しいからお前を赦すだろう、だからだっだからそんな優しい人間を傷付け殺そうとしたお前が私は赦せないッ!!」


(そして保身を優先した私も赦せない、償う覚悟だ)

 

「」


 パァン


 瀕死の薬師寺は反応する間も無く脳天をぶち抜かれ射殺された。呆気ないモノだ、小物の末路に相応しい。

 本國はロシア製消音銃PSSを本に入れてから薬師寺の死体も足から入れて血などを洗浄剤を使い拭き証拠隠滅をした。


「こんなので手を汚すのは私だけでいい」


 このコントロールルームに入れるのは本國と薬師寺と製作者のみ、そして薬師寺は製作者を口封じに殺害済みな為にこの隠された部屋は例え見つかるとしてもそれは相当後になるだろう。



――――――――――――――――――


 崩壊した池袋 PM3:23


「............んん......!???ここは......私は......私は!?そうだ思い出した......自殺に失敗して......沢山の人を殺して......あ......あ゛あ゛あ゛ッ!!」


 目覚めた九条は隣どころか周りを見る余裕など無く頭を抱えて叫ぶ。自分の横には大きめの機械と愛しの人が寝ているのに。そうしていると脳内に声が聞こえた。


(落ち着いて未来。貴女は助かりました)


 それに即座に反応する。


(た、貴音はっ貴音はどこなのっ?助かったの!?でも私のせいで何もかもめちゃくちゃに............)


(無理矢理利用されたのです、自分を責めないでください。そして安心して隣に居ますよ)


「......あぁ............!貴音っ、ごめんね!本当に......わたっ、私が勝手に先走って何もかも壊してっ......ふぐっ............本当にごめんっ......」


 鼻水が出る程に号泣しながら気絶している貴音に抱きつき謝り続ける九条。バースデーは少しそっとしておいてから本國からのメッセージがある事を伝えた。


(本國からのメッセージがあります、貴女を修復した機械の液晶タッチパネルを見てください)


「これかしら......ね」


 そう言いながら貴音用と九条用に2つ表示されていた画面をタップして自分向けの方を読む。


(本國です、このメモを読んでいると言う事は九条さんが先に目を覚まされた様ですね。梶原君は薬物で気絶しているだけなので安心してください。そして今の貴女の状況を説明致します、何故助かったと言うのは埋め込まれたコアがギリギリ残っていたからと金属生命体として貴女が進化、適応したのでその身体を急速にフェムトマシンにより治癒される為です。メッセージを残し立ち去る事お詫び致します、私にはやらねばならぬ事があるのです。そして最後にお二方には罪はありません、己を責めないで助かった事を喜ぶ事だけ考えてください。後日更に詳しく説明しますのでよろしくお願いします、そしてこの機械はフェムトマシンで吸収可能なので、それで更に回復を行ってください)


「......本國さん」


 読み終えそう呟くと隣の喧しいのが起きる。


「うぅ゛......未来ッ!!............??。!?」


 そう叫ぶ隣には涙の線が残りながらも微笑む九条がいた。


「ふふ......もう、未来なんて面と向かって呼んでくれた事ないのに......ありがとう、本当にね............」


 窶れた顔で優しい声で応えた九条はまた少し涙が出た。


「私は............私は九条さんに礼を言われる様な事は......」


 救えず結局殺す事を選んだ自分なんかを感謝してほしくなかった。だが彼女は貴音の口に指を当て閉じさせた。


「いいえ、あなたは立派であなたのおかげよ。久しぶりに会えたけどあまり変わらないわね......それにもう下の名前で呼んでくれないの?」


 と優しさとは違う甘えた様な声で言いながら肩に寄りかかって来る。


「くじょ......いや、未来。この先何があろうと君の味方だよ。次こそは絶対に守るからね」


「......お互いにね、護りあっていきましょう」


 そう言いながら2人は唇を重ねた。


 陽は落ちる。


――――――――――――――――――


 2人が飛び立つ時に大事な事を思い出す。


「あっ!?ベルト置いてきちゃった!......いや、それよりもシュヴァルとフギンも私のことが好きらしくて............」


「あら?気づいていなかったの?別に重婚も同性婚も許されているんだから全員彼女にしたら?」


 と予想していない返答に貴音は困惑するも彼女が良いと言うなら良いかと思うのであった。


「じゃあハーレム?まあ未来が良いって言うなら2人も良いと言いますよ」


「そもそも私は死んでいたはずの身だから良いわよ」


 負い目を感じている未来は貴音の恋人の人数に制限をかけるのはやめた。これがバカみたいな人数のハーレムの始まりだとは2人とも思いもしなかった。

 そして死んでいた筈と言う言葉に貴音はある事を思い出した。


(......ん?結晶化して死ぬとアイツは言っていたが大丈夫だな?未来は今も普通にE-4を使用しているし脅しに過ぎなかったのか?)


 と黙って考えていると彼女が話しかける。


「もう!敬語は昔っから言っているけどやめてよね!これからはさ............特に恋人なんだから!」


 照れながらもハッキリ言う彼女に可愛らしさを感じる貴音。


「ははっ、そうだね未来。私の誕生日に付き合えた事を幸せに思うように、ホントに......」


「えっ、えっ!?もうそんなに時間が経っているの!?じ、実は本当は今日あなたに告白とプレゼントを渡そうとしていたの......」


 と赤面する彼女にニカっと笑い貴音は話す。


「じゃあ、もう2つとも貰っちゃったね。告白とプレゼント(キス)


 彼女はその眩しい笑顔に見惚れていた。


「そう言えば告白OKって事は......好きって事よね?いつから好きでいてくれたの......?」


(あぁ......その笑顔が見たかったし、して欲しかったのよ、私は)


「いつだろう、初対面から貴女に少しずつ惹かれていたかも。......未来は?」


 と顔を逸らしながら返事をする。


「私もよ、あなたに1度目の命を助けてもらった時から、あなたの見た目が変わろうとあなたはあなただからこの愛する気持ちは不変............変わらなかったわ」


 と自分で言っていて少し恥ずかしくなってきた彼女に貴音は即答する。


「嬉しい......こんな俺を愛してくれてありがとう」


 そう言いながら未来の顔に手を添えて、空中でまた愛を確かめ合った。



――――――――――――――――


 崩壊した池袋 PM4:12


「おーい!かじ!大丈夫なのかーいないのか?勝ってもう帰ったのかー!......だったらメッセージの返信あるかぁ」


 なんと崩壊した危険地帯に貴音の数少ない生き残りの友人の犬が来ていた。彼はニュースの情報が止まり続けた事に嫌な予感がして無力ながら現地に警察の目を掻い潜り侵入していた。


「おーい!......ったく。こりゃあ酷いなぁ、池袋駅周辺がこんなじゃインフラが死ぬなぁ............ん?これは?」


 歩いていると足に当たったモノを拾い上げた。


「......なんかヒーローベルトみたいだな、アイツのか?............誰も見ていないよな?......変身!」


 周りに誰もいないのを確認してから下腹部に当てて変身と叫ぶとベルトが飛び出て巻きつき身体にナノマシンのアーマーを纏う。貴音が使う予定はないがプログラムに組み込まれていたマスクも装着され、喋らなければ犬だとはバレない。それに貴音の時とは違いアーマーは黒色では無く青色である為貴音でもわからない。


「!??ほ、本物......これでヒーローになれるか?無力で負け犬だった俺もアイツと同じく変われる......か?それよりも、これ以上滞在していると捕まるな......」


 犬は変身したまま強化されたフィジカルでその場から即座に立ち去った。しかし、そのベルトの模様はブラックホールから雲の柄の真ん中に稲妻の電撃模様が重なっているモノになっていた。

 そして同日新興宗教団体アフターメテオでは教祖の生誕祭が行われていた。


――――――――――――――――


 新興宗教団体アフターメテオ 同日AM9:55


「これを......教祖様」


「ああ、助かるよ」


 幹部の信者が教祖に紙の束を手を渡す。それをパラパラ高速で読む教祖。


「......よし、暗記した」


 そう呟くと別の幹部が言う。


「信者たちが待っています、教祖様よろしくお願い致します」


「ああ......」


 そう言いながら幹部の肩をポンと叩いた後に壇上に出て行く教祖、信者たちは拍手喝采し立ち上がりながら歓声が上がる。しかし、カルト宗教にありがちな統一された無地の服装などではなく普通のスーツなどであった。


「今日は偉大なる教祖様の生誕日!永遠(とわ)の星彩を灯す教祖様!あなたの叡智が惑わす闇を払い、私たちを真実の道へ導く。あなたこそが救世主(メシア)、永久不滅の存在!」


「地球に隕石という裁きが降り注ぐ時に、浄化された我々を次の世界に生かしてくださると仰られた我らが人類を卓越し偉大にして最強の()()()()()()()()様ァ!!!!」


「我らが救世主(メシア)!!」


「メテオブレイカーなどと言う不届者に真の裁きを!」


 そう大勢の信者が叫ぶ中、浮遊している赤髪ツインテール、低身長スレンダーの緑と橙のオッドアイの女教祖がいた。


「......鎮まりたまえ!......確かにメテオブレイカーは私を模倣し反転させた様な紛い物のくだらぬ存在よ!直に私が裁きを!与えよう!だが今日は私の誕生日だ、偽物など今は忘れ盛大に祝おうじゃないか!そうだ、盛大に祝おうぞ!!」


 そう言うと会場は更に熱気に包まれ狂気を孕む。だが言葉とは裏腹に教祖自身はそこまで盛り上がっていない、無理に声と気分を上げている様に見えた。




 序章 深まる怨恨と再起する正義 完結。


 次回、第1章開始。

序章完結しました!ここまで読んでくださった方がおられるならば大感謝です!これからも貴音には酷い目に遭ってもらいますが話は続きますのでよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ