第34話 ターゲット捕捉 戦闘開始
誰も望まない誰も幸せにならない戦い(首相のカス除く)
空、そこにいたのはパタパタ飛んでいるかわいいフギンであった。貴音は安堵して変身解除した。
「なんだフギンかぁ。びっくりしたよ......敵に背後取られたっ......って心臓がドキッと痛むくらい焦っちゃったじゃないの〜そんで?何しに来たの?」
と笑いながらフギンに浮遊して近づき肩を叩く。
「だって貴音が池袋で子供のミーティアンが暴れているって警察に連絡を受けて出発してからかなり経つのに連絡つかないし、ニュースも近くに近づけないから現場の状況がわからなかったりと不安だったんだよ!!」
「いやぁ、悪いな。子供を傷つけるヒーローなんて普通ありえないだろ?だから縛りプレイしているゲームみたいで大変だったんだよっ」
そう言いながら不安そうなフギンの頭を撫でる。
「ん〜♡......じゃない!私も頼ってよ!レベルが真ん中の衛星級くらいは力あるだろうし、もうただの痩せ細った醜いカラスじゃないんだよ!......それに今日は貴音の誕生日だよ?休みなよ......他にヒーローだっているしさ!例えばピーコックマスク?とか色々変わった名前の人もニュースに出ていたしさ!」
「......ヒーローが呑気に誕生日を祝っている間に事件とか起きてさ、それで誰かの命日にって欲しく無いんだよ。それとフギンは初めて会った頃から可愛らしかったよ、私が言うのもアレだが卑下をしないでくれ。あと今日の戦った男の子はまだ1番上とはいかないけど衛星〜惑星級はある気がする、あと何が恐ろしいかと言ったら目覚めて数日しか経っていないから全く鍛えてないんだよあの子は。それで私を不意打ちとはいえ地に墜とす力があるからなぁ............すぐに私も弱い部類になるんだろうな、巡り巡る世代交代で。......あぁ、クソ」
と勝手に予測して勝手に萎えている情緒不安定な貴音。だが自身が日本を征服出来るほどの力があるとはあまり自覚していない、何故なら体内にエネルギー炉が出来てから本気を出した事が無いから。
「謙遜が過ぎると失礼になるよ!だから、それはあんまり人に言わない方が良いよ!!あと......ありがと............。ま、まあ!それよりケーキ食べよう!ケーキ!!アイスのケーキとかタルトとかミルクレープとかパイ............」
人間が作る味の濃い食べ物が大好きなフギンが興奮しながら言う。
「そりゃあ勿論!飲食、排泄不要の訳分からん身体だが食べれない訳ではないしな!でも、そんなに用意してないし追加で買う為にさっさと帰るか。雨も降るらしいし、あと始末はポリスメン達に任せ............っ!?フッ、フギンッ!気をつけろっ!!」
(九条さん......シュヴァル..................っ!何か来るぞッ!)
顔だけ笑顔で行方不明の仲間を考えながら、フギンの言う通りに帰ろうとすると風を切りこちらに謎の何かが向かってくる気配を感じた貴音はそちらの方に向く。
「メインターゲット捕捉。対象、メテオブレイカー本名梶原貴音。殲滅ミッションスタート」
そう機械音声を発する、あの死神が現れた。
「くっ!こいつかッ!フギンは逃げろ、そして警察や協力者の例の人に連絡を!」
(薬師寺......!!入ってんのか入ってないのか知らねえが他に選択肢の無い人間を使い捨てにして、俺の家族!そして友人の大半を殺したクソ野郎の傀儡......遂に現れやがったか............)
本國の名前を出すのはマズいと思い直接は言わなかった。
「わかったっ!任せて!」
その返答に無機質な声で反応する死神。
「優先順位変更、対象フギンの抹消を開始」
「はぁ!?させる訳ねえだろォッ!!!」
怒る貴音。そして音声が流れると両手から緑のエネルギーがチャージされ放たれる、そしてほぼ同時に横から貴音が焦りながら黒いビームで相殺を図った。だがそれが本来の狙いであった、E4はビームを発射すると同時に背中からGSを複数射出し貴音の方向に飛ばすと四角形のバリアを展開。
「なっ......バッ、バリアの檻かっ!畜生。簡単に壊せないっ。それにジャマーがあるのかチョーカーで変身出来ないっ......フギィーンッ!!逃げろっ!頼む、逃げてくれッ」
余裕が無い為に、いとも容易く無力化される日本最強候補のヒーロー。それも当然、貴音を殺す事に日本の科学力を全てを注いだ兵器。このままでは頗る程に相性が悪すぎるのである。
「メテオブレイカー捕縛完了。フギン抹殺の続行」
そう言うとフギンの方に彼女は両手を刃にして襲いかかる。
「うわぁっ!は、速い......喰らえ!」
何とか最初の攻撃はひらりと回避すると同時に火球を吐くも死神は防ぐ素振りも見せず受け切り煙が立ち込める。その中から全くもって汚れも傷も一つない死神が飛び出してフギンの腹を背中に手を添えて思い切り殴る。
「ぎぃやあっ!!......ぐぅあぇいぅっ......!......ぅ............」
わざわざ即死させないという余裕。そこから片手で首を絞め、もう片手で腹部を何度も殴る。そしてソレを見せつけられる貴音は絶叫。
「フギンッ!!ふざけるなっ俺が目的なんだろ!俺だけを狙え!もうこれ以上俺から奪うなァ!!」
怒り狂いながらもバリアに両手の指を差し込みこじ開ける寸前までいくも出力が強化され無慈悲にも指は切断され地にパラパラ落ちていく。
「あ゛あ゛あ゛っ!!......畜生ッ!畜生っ!何で俺の力が効かないッ!」
バリアに手のひらからビームを撃ち更にがむしゃらに殴りそれが血塗れになるも抜け出せそうにない。その間もフギンは死なない程度に苦しめられるが貴音を気遣ってか呻き声一つあげないで耐え忍ぶ。そして貴音の姿に異変が起こり始めた、何故だか青く髪が煌めき始めたのである。
だが貴音が動く前にこの静寂に響く半狂乱の貴音の声を切り裂く様に黒い稲妻が目の前に現れた。
「フルチャージ。よくも家族を......。許さない、爆ぜろニャァ!」
そう言いながらバリアを発生させていたGS4個全てに黒い電気を帯びた棘の様なモノが正確に着弾すると爆発、そして死神の腕に5本当て機械の手元が狂う事によってフギンはその隙を見て距離をとれた、それと同時に解放される貴音。そして貴音は下の声の方を見た。
「その声に......その黒い電撃............!お前は......シュヴァルっ!!!!」
細い指がほぼ再生されつつある貴音。その指を気にも留めず泣くのを堪え喜ぶ。そして髪は元に戻り本人も誰も気づく事なく治った。
「子供相手なのにニュースでは新しい情報を流さないから心配して来たら死神が相手になっていて驚き。あと今までごめん。これまで鍛えていたから絶ッ対挽回する」
フギン、シュヴァルの2人とも貴音の強さを信頼しているからこその心配でこの場に来た。
「もう十分だよ!お前とまた会えて嬉しいぞ......」
そう貴音は話していると電気を流され回路が少し狂っていた死神が動き始めた。
その一方でその死神を制御する研究所の秘密の部屋では怒る薬師寺とホッとしている本國が居た。
「クソッタレッ!バリアは奴のエネルギー攻撃を吸収し強まるからと......慢心したッ!あとッ!あの薄汚い猫まだ生きていたのか、それに!GSを破壊だなんて畜生がそんな力を......。それに!あのカラスを嬲り殺そうとしなければ勝てた筈だった......奴を苦しめる事を考えすぎたか、それに目的は殺害か下僕にするのだからな」
薬師寺はタブレット端末でE-4本来のAIに指示をしていた。嬲り殺そうとしたのは実は本國の提案だった、理由は時間稼ぎと言うフギンからしたら無責任とも言える賭けである。だが目的は果たされた。
「............」
(マズい、この前確認したのが最終段階と聞かされていたが、こんなエネルギー吸収なんて芸当が出来るのは知らないぞ......早く変身するんだ、梶原君......さもなければ相性不利を強いられ続けられるぞ............)
そう考え込んでいると薬師寺が着替え始めた。近未来的な全身にセンサーがついたスーツを着て、更に身体にデバイスを複数付けた。
「これでは腹の虫が治らん、AIの補助はあるが私直々に操作して始末してやる。あの会見で恥をかかせた怨み晴らす時よ」
薬師寺の最後の言葉に強く反応する本國。
「会見......?会見ですか?それはいつの......」
「忘れたかっ!奴に超能力者だと言うことを隠せと言ったというのに生放送を良い事に従わず暴露しただろ!あの時は私の機転を効かせて何とかなったが多少は恥をかいたのは確実、万死に値する」
「そうです......か......他に理由は?」
「他ァ?強いて言うなら飼い慣らせないくらいだ、集中する。お前はこのまま殺戮ショーを見ていても、業務に戻ってもいいぞ」
と本國の方を向かず言う薬師寺、そして発言内容に対して絶句する本國。
(何を言っているんだ?まさかそんなそんな理由だけで彼と彼の周りの人間ほぼ全てを殺害したのか?元から赦せない所業だとは思っていたが............国にとって危険だとか......もっとまともな理由かと思えば私怨の割合が想定以上だ。世間に告発するだけではこの巨悪を抑え切れるのか......最悪、技術を持って亡命する可能性もあるぞ......)
そう悩みながら自分に出来ることは今は無い為、戦場の現地に行く時の脳内シミュレーションをする事にした。
そして死神と貴音は空中で向かい合い睨みを利かせる。
「......シュヴァル!フギンに説明とやって欲しい事を聞きながら逃げろっ!」
敵から目を外さずに大声で言う。
「......わかった。死なないで」
少し不服だが爪弾が残弾1発な為に前線から離脱する事に納得し、想いを告げる。
「猫になって!私が持って飛ぶよ!」
そうして取り敢えず戦線離脱をしようとする2人。その方向に進もうとする死神に立ち塞がり殴り飛ばして距離を取る。
「だからッ......もうこれ以上は奪わせねえよ」
そう言いながら本國の言う通り頭で念じた事で、チョーカーが光りノーモーションでアーマーを纏うが、この前とは違い片耳を機械が覆い片目にバイザーの様な透明な板が眼の前に生成された。
「何だこりゃあ?周りをスキャンしているのか?この目の前にあるディスプレイに情報が映し出されている......?」
(アメコミの鉄男みたいだな!......喜んでいられないが)
そう驚いていると耳に音声が流れる。
「初めまして、梶原貴音。私はバースデー、サポートAIです。ハッキング完全防止の為にオフラインモードですが事前に挿入されたデータに基づいて、あなたの戦闘をサポートします」
「なっ、そんな機能があ......っ!危ねっ!!」
若い女性に聞こえる機械音声に気を取られていると死神が動き始め、貴音の顔目掛けて何発も連続で殴りかかったが割と余裕のある回避し空振り、そこにカウンターでアッパーからの空中回転踵落とし。空に上げて地に落とす。
「......で?サポート頼むよ。奴に何をすればいい?」
「承知しました。死神を必ず救いましょう。対象、通称白緑の死神もしくは死神の本来の名前はエボリューションという兵器の第四世代E-4(E4でもよい)は戦いと言う名の殺戮で進化を......」
そう長々と解説していると下からGSが複数接近と共にレーザーが襲いかかる。
「ちょいとAI!端的に話してくれよ!あいつの攻撃速えんだよ......」
(救う......?聞き間違いか?やはり中身がいる?そして............)
そう言いながら追尾しつつエネルギー弾を発射するGSを飛行しながら避けて進む、だがその後方にピッタリ付き纏う死神。
「なるべく端的に説明ですね。現状のE-4はあなたを殺害する事だけに特化した調整がされています、なので逆にあなたが今まで公に見せていない力をお持ちなら有利になります。そして、こちらのエネルギー攻撃は奴のエネルギーに変換され吸収しパワー増幅を招く為、相手の思う壺です。あなたの選択肢は死神に接近戦を挑み殴り掴みしがみつくのです、その短い接触時間で相手のアーマーにナノマシンを通じて頑張っている私がどんどんと蓄積して入りハックしてセーフティーモードに強制移行させます」
と先ほどより文字数が多いがかなり早口で説明し切ったバースデー。飛行中の貴音はアレに近づかないと勝ち目が無い事に気が滅入る。
「だからか、私が使えない電撃の攻撃が普通に効いたのはっ!それと私がバリアを開けようとしても開かなかったのも。はぁ......にしても嫌だな、こちとら誕生日だぞ............そんでAIの名前はバースデー......」
(熱耐性は十分あるのはフギンが来るのを見越してか、ただ耐久性を上げたからなのか。シュヴァルはそこそこな期間行方不明だからこちらの味方の数に入れなかったんだな)
「命名されたのは本國文記です、ですが確かにタイミングは最悪ですね。お詫びします」
「いや、別に問題ない。こいつをさっさと倒して一緒に私の誕生パーティと洒落込もう」
そう言うと地面にかなりめり込んだ死神が立ち上がり見上げたところで空からのミサイルキックをして更にめり込ませた。
「ウオラァッ!さっきより少しトロいなぁ!中身はいるのかなッ!」
首根っこを掴んで最後の言葉を言い切る瞬間に地面に叩きつけた。
「そのまま押さえつけて、接触面を増やして拘束してください」
「ぐうぅ......があっ!脳が揺れる......簡単に言ってくれるぜ......」
抵抗し顔面を殴ったりしている死神、だが貴音はアホなので気を取られ忘れていたGSの存在を。
「上空に高エネルギー検知、中断し右横に回避を推奨」
「クソッ!ロボットアニメの兵器が現実にあるとこんなにウザいんだなッ」
すぐさま回避するも取り囲む様に常に浮遊しており、いつ次が来るかわからない中で地面から巨大ビームを撃つ死神。それを回避した先に予測して放たれたレーザーが貴音を襲う。
「オールレンジ攻撃なんて反則だろッ!うわっ、ぎゃっ......?このアーマーはレーザー耐性あるのか?早く言ってくれよ!」
空を飛び回避していたがGSに囲まれた貴音は被弾してしまうも無傷。本國達はレーザー攻撃の対策をしていたのである。
「耐性はありますが無敵ではありません。お伝えしたら無理矢理回避もせずに攻撃する可能性を考慮してお伝えしていませんでした」
「んん......否定できないや............仕切り直しだ、殴って殴ってやる、鉄拳制裁祭りだ!」
そうアメコミのキャラのセリフを真似て言うとレーザーを放つGSを無視して掴み他の物に当てて爆発させ数を減らす。手の痛みをも無視し遂に死神に一撃お見舞いする。
「ウラァッ!!首を捻り切ってやるッ」
ストレートパンチから左右に高速で複数回殴り首を絞める。その間もバースデーは侵食を進めている。
「警告。対象の処理は私に任せてください、あなたは仕留める攻撃よりも対象に触れる面積を増やす事に努めてください」
計算上では現在の貴音程度の力ではフェムテクアーマーの首を捻じ切る事は不可能だが仮に、もし仮にそんな事をして取れた首の中の人間が誰かを知った時の収集がつかないのでストップをかける。
この間も死神の反撃のレーザーや殴打を喰らうも喰らいつく貴音。重ねて警告するバースデー。
「先程もお伝えした通り無敵ではありません、回避行動をしてください。現在の侵蝕進捗は約27%です、ただし相手のフルスペックは不明の為目安程度に留めておいてください」
機械的なイントネーションだったバースデーはキレ気味に貴音に警告する。
「わ、悪いな。たださ......ホントに憎くて............ぶえっ!......振り解かれたかっ」
復讐、殺害反対派でヒーローの筈の貴音も親族や友人の8割程を殺されてはヒーロー?も復讐の鬼になりかける。その隙に肘で顔を殴り、そして離れ際に脇腹キックをする死神。更にGSからレーザーを出すもその間をすり抜けて反撃しつつ退避した貴音。だが回避され互いに避け合う無駄な時間が少し続いてから貴音が口を開く。
「......あんた、いるんだろ?中身。いなきゃさっきの俺の絞技から形を変えてすり抜けてチャンチャンだもんな?ナノマシン系統の機械の癖にわざわざ振り解いたんならいるんだろッ。時間の無駄だよ、自ら名乗れ」
急に大雨が降り始めた、だがその騒音に掻き消されないほど明確に死神が答えた。
「いつまでも......本当に生意気なガキだ。私の邪魔ばかりで」
機械音声では無い憎たらしいその声を聞いた貴音は怒りに顔を歪めた。
あのバリアに封じられた時に助けが来ない且つ奴隷になる事を拒絶した場合は圧死するまで縮小させる予定でした。




