第30話 人間たらしめるモノは
強さや有用性、知名度による階級振り分け。
19日 AM8:12 自室
シュヴァルは帰ってこない、フギンも気まずい状況の続く中で1人自室のテレビのニュースを見て驚く。
「なっ、人以外から人になったモノをフェイカーと呼ぶだと......?何故差別を助長する様な名称を......アメリカの大統領が言い始めたのがキッカケか............日本より差別が激しいのは知っていたが偽者が公式名称になるとは......それにミーティアンの能力の強さに階級をつけたのか?」
老人の様にテレビの前で独り言を続ける。
そして階級は弱い順から
星屑級
彗星級
衛星級
惑星級
恒星級
日本ではそのまま日本語で読む事も英語で読む事もある。つまり、いつも通りごちゃごちゃしている日本語。
「......私は恒星に勝手に分類されているな。決め方は認知度、人気度と社会貢献度などの実績の総合評価か......いつどうやって評価してんだぁ?1番上なのは嬉しいけど何人いるんだ?それに私程度の強さで打ち止めなのか??他に代表的な恒星級は............米国の大人気ヒーロー目視不可の速度と怪力、そしてワイルドで意外にお茶目なタフガイ、ジャスティスアメリカ............大体は彼に任せれば万事解決、英国紳士のお手本のオールラウンダーなど......か。............私はなんて紹介文だ?............見た目もやる事も全部ビッグなクールな傾国の美女にて不殺のとても慈悲深きメテオブレイカー......だが元男でブツもある。............何で私だけ見た目の話なのよ、私の力も書きなさいよ2人とあんまり変わらなそうだけども。それに名指しは私含めて3人だけど代表的なって言い方なら他にもいるんだろうが、免許制度なのか?なんか得あるのかな、これじゃあ狙われやすくなるだけじゃん。もう私みたいな人間は出てきて欲しくないんだけど」
不安と怒りが漏れ出る。自分に出来る事はSNSでの反対表明程度だがフォロワーが尋常じゃない数いる貴音の影響力は大きかった。
「うへーまた殺害予告まできてるしネット記事にまでされちゃったぁ............でもよぉ、人間が人間とたらしめるのは沢山あるけどよお、芸術などあっても別に困らない人生を豊かにする無駄を楽しめるのが人間だよな。そして俺がこの前助けに行った集合仮設住宅の人達は音楽を楽しみ、家を絵で飾り付けていた。十分に人じゃないか」
自論を誰もいない部屋で熱弁。迷惑系配信者がタイマンしろと貴音に向けてZに投稿。内容は今日のAM11時頃にハチ公前で待つ、来なければお前は弱虫の何も守れないカスだと俺の力で示す。いつも高頻度でこういうのが来るので慣れていたが、貴音は今回は無視できない。最後の何も守れないというワードにほぼ事実だが怒り狂い、服を着るのがあまり好きじゃない貴音は下着姿でテレビやスマホを見ていたので動きやすいショートタンクトップに柔らかいジーパンを履いて髪をポニテにすると時間が迫り飛びだった。
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AM10:55 ハチ公付近
異常に大きな荷物を持つ迷惑系配信者が喚き散らしながら配信していた。周りはそいつのファンとBBの人間が揉めている。そして威勢よく配信者のファンが言う
「テメェらが慕っているヒーロー様はどうせ腰抜けだからまた無視するぜぇ!」
「そうだ!あいつは口だけのチンポ付き売春婦だ!!」
それに対して怒るBBの人間。
「お前ら何かに構っていられるほどメテオブレイカーは暇じゃねえんだよ!」
「付いていてお得!!」
「そうよ!あんたが暴れたら話は変わるかもしれないけどね。でもそんな度胸もないんでしょう?だってアナタアメリカに言ってジャスティスアメリカの誹謗中傷を繰り返してファンに殺されかけた途端に日本にUターンしてきたじゃないっ!」
バカにする様に笑う女に腹を立てた配信者が腰から特殊警棒を取り出して殴りかかろうとする。
「だっ黙れッ!!」
「キャー............?あ、ああ!貴音さん!!」
己のファンの頭に向けられた凶器を簡単に片手で掴むと折り曲げた。牛から九条を守った時の様に。
「ヒュ......い、いいや、今日こそ来やがったな!この偽善......ぐぼえああいあっ!!!」
(きょっ巨人......実物の威圧感が凄まじい......いつもヘラヘラしているってのに......)
話終わる前にほぼ力を込めずに裏拳で顔面を殴ると少し転がり鼻血を出す男。
「誰゛が。何゛が。守れない゛ッて???」
精神不安定な所に支えてくれる人間も減り続けた貴音は一応一般人の男にかなり怒る。
「文字じゃなくて声に出して言ってみろよッ!!言ったらテメーどうなるかわかってんのか?......そうだ、タイマンしたいんだろ?ずーーーーーっとしつこく傷心の時も私に向けて言ってきたのに無視して悪かったよ」
そう言うと浮遊して体に威嚇の様に黒い電気のエフェクトをバチバチと流して拳を構える。
BBの人間は歓声を上げ、配信者のファンは次に自分が狙われたらまずいと逃げていく。
「フェアにいこうか、好きな武器を使えよ。そのデカいの武器だろ?ミーティアンなら力を出し惜しみするな。殺す気で来い、私は......そうする」
(......あの長方形で人より大きいサイズ感......まさかな............)
あまりにも殺気が強い貴音の見慣れぬ姿にファン達は心配するも配信者は引き下がれないと大荷物を開けた。
「お、お前......それはっ............」
「そうだ、E-1だ!お前が電車で相手した奴とは性能が違うぜ!あの時の死んだ奴らみたいに手遅れにならないと良いなぁ?」
「貴様一線を超えたなァッ!!」
そう男が言うと箱にもたれかかると改造強化されたE-1が自動装着されジェットパックで浮遊すると腕のバルカン砲を市民に向けたその刹那、貴音は既に男の前に移動し武装を0.1秒も満たず全て破壊し本体も蹴落とした。格の違いを見せつける貴音は男を空から見下す。鍛錬をした貴音はもうE-1如き敵ではない。
「ぐわあぁあ!!......クッソッ!せめて1人くらい死ねよぉっ!!!」
武装を壊し外骨格だけになったと思ったら手首から30センチほどの刃を出して近くの人に切り掛かるも貴音がまた即座に立ち塞がる。
「ただの迷惑系の配信者にしちゃあ装備が潤沢で手口が邪悪過ぎないか?」
そう言いながら刃を腹筋で受け止めてへし折る。
「畜生、化け物が!恒星級だの何だの人気取りのモンでアテにならねぇと思ったのによっ」
「私の問いの答えになっていない」
そう言うと相手の薬指を無慈悲に折る貴音。
「ぎゃあ!!それでもヒーローかよ......」
「いつもアンタみたいなのにそう言われるよ、うんざりしている。......お前がヒーローとしての私を本当に終わらせたのかもね」
そう言うと手にエネルギーを込めて刃の形にする。
「不殺はやめだ。テメェの首をハチ公の首と取り替えて晒してやる..................チッ、やっぱダメだ」
(ああ、そうだ九条さんが悲しむ、そして後悔する............)
そう言いながらクロスして首を刎ねようとしたがやはり底は優しい貴音は人は殺せない。行方不明の九条を思い出し貴音は踏みとどまり男を軽く蹴り飛ばして終わらせる。
「......誰に雇われた?目的は私だけか?」
そう言いながら胸ぐらを掴み男を持ち上げる。
「ちげえよ、俺みたいに低身長でパッとしないお前が特殊能力を得て賞賛されているのが気に食わないだけだよっ。クソが」
「俺みたい?私はお前程心は醜くないぞ、昔からな。それにずっと死に怯えながらもヒーローしていたからな。あとE-1の入手経路はなんだ?」
「廃棄されたのを盗んでデッドエンドに改造と修理を依頼しただけだ。だから首を離せっ!......ぎゃっ!」
「はぁ......性善説を疑いたくなる」
パッと手を離して地面に落とすと貴音は考える。
(じゃあ九条さんの奴か?............私が来なければ......もし今回反応しなかったらこいつは絶対にここで人を殺していただろうな。しかし......これだと私も逮捕されるか?あぁ、考えているうちに警察官が来たよ)
男は手錠をかけられて救急車で連れて行かれる中で自分に何人か警察が近づいてきたので腹が立つが両手を差し出しそっぽを向いたが手錠をかけられる雰囲気ではなかった。
「............?私を逮捕しないのか?」
「取り調べはしますが逮捕しませんよ。あのテロリストのなりそこないをやっと重い罪状で逮捕できるので、逆に感謝しています。それに貴女程の人に手錠も拳銃も意味無いでしょう」
そう笑いながら言う。
「ずっと警察に貢献してくれた人を信用しない訳無いじゃないですか。お上のせいでクビになってしまったのも九条警視が行方不明なのも私にはどうしようも無くやるせなく申し訳ないです」
「......いえ、警察官の中でもまだ私の事を仲間と思ってくれている人がいて嬉しいです」
気づけば号泣している貴音。今はクビにされたが元は警官でも無いのに警視庁でヒーロー活動をしていた時の積み重ねは無駄では無いと知る。そして屈強な身体のせいで薬物治療不可能の壊れた精神による情緒不安定さは酷くなる一方だ。だが最後の禁忌を犯す程狂ってはいない。貴音はこれからもヒーローであり続けようとする。
私迷惑系大っ嫌いなんですよね。
あと主人公は馬鹿なので不殺主義を捨てれません。




