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第23話 恋は盲目

恋は盲目だよねぇ、俺もそれ。

 31日 AM9:58 自宅

 

 リビングでネット記事を見て憤慨している九条。そしてその近くにいるフギン、シュヴァル。貴音は泣いていても諸悪の根源を断てないと自室で兵器を分解と解析をしている。


「何が『朗報!メテオブレイカーの爆乳ドタプン!ポロリ!!』よ。こんなにボロボロで痛々しい火傷を負った貴音に欲情すんじゃないわよ。しかも、この直前に人が大量に死んでるのよッ。それにサリンも各地の爆発と火事は貴音が悪いみたいに色々とネットの人間は無責任に発言するなんて......!あとホレホレだか何だか知らないけど動画配信者は陰謀論を広める始末............なんで日本に尽くしてきた人間に対してこんな仕打ちが出来るのよ」


「そんな人間を守る為に貴音は戦っている......今もあんなに非道な目に遭っても平等に民を守る為に再起を図ろうとする。意味はあるのだろうか......いいや、こんなのは間違いだっ。私達で反旗を翻し現体制に終止符を......」


 とやたら過激に静かに怒るフギン。


「フギン、貴女って見た目も声も可愛いのに、その真っ黒な瞳みたいに結構怖い事を言うのね。ただ昨日貴音がポロッと発言してくれたおかげで黒幕はわかったのだから、今は待ちの時間よ......悔しいけど」


「まあまあ、()()は絶対にするんだから落ち着きなよ」


 シュヴァルは今度はバニラアイスを渡して食べ始める。貴音の趣味で甘味と肉ばかりである為にストックが多い。


「こんな頻度で甘いモノを摂取しても貴女達は太らないかもしれないけど私は太るのよ......まあ食べるけど」


 フギンはそもそも家系ラーメンや脂っこい物が大好物の人が何を言っているのだと思ったが言わなかった。そうしていると貴音が部屋から出てリビングに来る。


「はぁ......何とか解体して再度組み立て直せたけど、私の技術と工具ではこれ以上はどうしようもないや。まあ最初からそんな気はしていたけど......でも前より頭が冴えている気がするし、リミッター解除をしてエネルギーの刃がかなり伸びる様にできた......ちょっとミスって手のひらに刺さりかけたけど私の肉体強度が前より増しているのかほぼ無傷だったよ。これで更に無辜の民達を守れる」


 そういうとナイフくらいの刃渡りが刀並みに伸びるのを見せた。ネット記事を見ていないのか貴音はまだやる気満々だが、頬に涙の跡があり目も赤い上に未だとても不安定である。


「かじ......本当にすごいわね......でも休みなさいよ」


「ゲームも遊びに行くにもダチがほぼ全員死んじまったから無理っすよ......まあネッ友は多分生きているけど............そうだ、1人でカラオケにでも行ってこようかな。あとこのナイフは不安定なのでまだ九条さんには渡せないっすけど調整したら装備してください」


「ありがとうね......いつもいつも、本当にね............ちょっと屈んで、ほら」


「?」


 疑問に思いつつも立膝で九条の前になる。


「私は絶対に......正義のヒーロー、梶原貴音の味方。しつこい様だけど忘れないで......それと私をもっと頼ってよ。それにこれに罪悪感を抱く必要は無いわ、私が好きでこれをやっているのよ。大切な......人............仲間だから。2人もそう思っているに違いないわ。......くさすぎたかしら、まあ良いでしょ本音なんだから」


 2メートルの貴音は完全に座ってない為九条の身長とあまり変わらなかったが気にせず思い切り抱きしめた。


「勝手に無理矢理させたと思っていたのもバレていましたか......へへっ............ありがとう......私の大切な相棒の九条未来。あ、あい............いや、優しさに甘えて......これで心置きなく抱きしめ返せる」


 つい愛していると言いそうになるがやめた貴音。そしてここで割れ物を扱う様に抱き返す貴音、温もりと優しさに涙を少し流す。烏と猫は流石に空気を読んで見ていたが貴音が手招きをして全員で抱き合った。そして貴音はカラオケよりも実家にある友人や身内の写真のデータを取りに行くと出かけた。遺影の用意やら問題もあるからだ。フギンとシュヴァルは2人揃って暴れるミュータントの説得に駆り出された。


「この家に住んでから1人は久しぶりかしら......余程の事が無い限りアーキアンの私だけが呼び出される事は無いわよね......?なら貴音が勧めてくれた映画でも見ようかしら、この未来から殺人ロボットが来るやつ」


 そうしてソファに座って見ようとすると自分の携帯に電話。番号に覚えは無いが仕事が仕事の為に渋々出てみる。


「......もしもし?どちら様でしょうか?」


「こちら、九条未来様のお電話でお間違い無いでしょうか?」


 知らない女の声だった。


「……あのー申し訳ないのですが先に名乗って頂けますか?最近詐欺の電話が多いモノで」


 仕事的にも番号と自分の名前が知らない人間に紐付いて覚えられると困るのでほんの少し強気に質問する。


「............こちらもお伝えする相手を間違えると困るのです」


「......はぁ、仕方ないですね。そうです、私は九条です、私たちに仕事ですか?今は私しか出れません。それと今度から知らない番号で電話をかけてくる時の合言葉を決めるべきですね」


 相手の口調的に仕事の話と察して答えた。その為アホみたいなやり取りはすぐに終わった。


「丁度、貴女だけに用事がありましたので問題は無いです。先日のE-1の件についてのお話です」


 それを聞いた九条は弁償させられるのかとヒヤッとしたが関係無かった。


「E-1は大型で装着型故に持ち運びも困難、その上今回の九条さんの戦闘からミーティアンには完全無力な事を考慮し常時装着型の新兵器を作りました。それを貴女に使って頂きたいのです。あのミーティアンの中でも目を引く梶原貴音の力に匹敵、いや超越する可能性もあります」


「そんなものをただの警察の私にですか?よ、良いのですか私で......?それに一体どんなモノなのですか?」


(貴音の隣に居ても劣らない力......今の私に決定的に欠けたモノが手に入る......?)


 貴音の誕生日に告白をしたいとずっと思っていた彼女は、己の非力さに貴音とは釣り合わないと苦悩し愛を伝える事を躊躇っていた。だがそこに転がり込んできた幸運、九条は是が非でも手に入れたかった。


「詳しい話は他者に聞かれると困りますので、車にてお迎えにあがりますのでお待ち下さい。それとこの事はメテオブレイカー含め味方であっても秘密でお願いします。外に出る理由も適当に誤魔化してください」


 このあまりの秘密秘密秘密の連続に流石に怪しむ九条は質問する。


「従いましょう、ただ質問をさせてください。どこの誰が私にその新兵器を提供してくれるのですか?」


「......国です。これ以上はここでは言えません、待機をしていてください。15分程でそちらに車が到着します」


「分かりました、では待機します。それでは失礼します」


 そう言うと電話を切った彼女の顔は千載一遇の好機に対する期待と、本当にそんなモノを渡してくれるのか本当に政府なのかという不安が入り混じり複雑な顔をしていた。


「私は............私は......やっと!やっとよ!あなたの横に居てもお荷物にならないっ。プレゼントも用意してある。強くなったこの私が6/24にあなたに伝えるわ、この気持ち!」


 己の不安を消す様に空元気。


 人間は不安や心配を軽減、無くす為に何かに縋る。それが神であれ仏であれ、ただの人間から好機など多岐に渡る。そして自分に言い聞かせると言う名の目潰しをして盲目的に信じようとする。



 そしてこの日から九条は貴音の前から姿を消した。

哀れだね。

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