第22話 英雄が死を招く
肉体が強靭だが精神が壊れかけているヒーローを倒すにはこれが最適だと考えました。
PM5:25 自宅
貴音は3人を抱いて空を飛び逃げて家に戻った。
「はぁ......クソッ!!あいつらはやっぱり好きで犯罪者になったんじゃない、黒幕は有名なクソ野郎だ」
握り締めた手から血が垂れる。
「......大丈夫?それに......あのさっきの暗号?は何?刺青の男は最後何を伝えたの?」
「......ごめんなさい、秘密です。今は私だけが真実を知るにとどめた方が良い......敵は強大です。本國さんに連絡をします、先に家に入っていてください。コンバットスーツは窮屈でしょう」
「ええ......わかったわ」
(強大で口外すると危険............カルト教団になりかけているアフターメテオの教祖であり神、そして強力なミーティアンとされているアカガミの化け物かしら?貴音とは見た目が対極的で敵視していると信者伝いに聞いたことあるけど............それとも貴音を会見で恥かかせられて恨んでいる首相の薬師寺?いや、まさか総理大臣がこんな事をするはずが無いわよね......?動機がそれならくだらな過ぎるわ)
そうして3人は帰宅してテレビをつけて唖然とする。どの番組も緊急放送をしていた。あの7チャンもだ。
「な、何よ......サ、サリン?あっ、あのサリンなの......?爆発にはサリンも入っていた......って事?」
「あの3人が死亡した事により潔白を証明できない私たちに疑いの目が向けられてしまうのでは......」
「............貴音の高速飛行がなければ負けても勝っても本来はダメだったの......死者数不明......サリンの負傷者だけで何千人......」
そう絶句していると部屋の外から怒りの叫び声が聞こえる。
「クソォックソックソッ!!あのナチスですら使うのを躊躇いやめた兵器を日本のテロリストはまたも日本に使ったのかっ......あの3人に濃縮されたサリンの小型カプセルがいくつもの入っていたのか?それとも爆発後に誰かが撒いたのか?............ああ、ちくしょう............俺に救えない方法で人を殺しやがってッ!時間でも戻せたら............」
自分の無力さに家の壁にもたれ泣き始める、女々しいヒーロー。
(............そういう事ができる、あなたの心労を癒せるようなミーティアンだったら良かったんだけどね、ごめんね)
九条は心苦しく思いながらも右腕の装置を使おうとする。
「とにかく連絡を......ああ!腕の装置が外れてるッ無力化じゃなくて鏡に入る時外に弾き出されていたの......かなり恐ろしい能力だったのね......」
(困ったわ、E-1もおそらく汚染されている......いや貴音の戦いに巻き込まれて壊れているかも............これじゃあ私だけただの人間じゃない。これじゃあ貴音を守れない............これじゃあ............!!)
九条は九条で別の理由で絶望し、その間に残り2人が代わりに警察に連絡を済ませていた。
「連絡は終わったにゃ......流石にサリンをばら撒いたのはシュヴァル達とは言わなかったよ」
「そんな事を言わせたら私は許しませんよ」
「ああ、ありがとうよ。私たちは警視庁に行かなくて良いのか?」
「私が説明を終えた!これ以上の情報は無いと言ったら引き下がったよ、休もう。......ね?」
フギンは貴音と九条にそう言うと冷蔵庫からジュースを出して飲み始めた。
「2人も甘いの摂った方が良いよ、貴音の身体には必要か微妙だけども、これは心の休息だよ」
そう言いながらリンゴジュースをコップに注いで渡した。
「ありがとうな」 「ごめんなさいね、年長者なのに......」
そう言いながら受け取り飲む。
「ああ......金があるから値段が高い瓶のリンゴジュースが飲めるのは幸せだなぁ。......ふぅ、休んだよ。私はまた外に出る」
ソファの隠し収納を軽く蹴って開け、内部にある弾薬箱から拳銃に弾を詰めながら貴音はそう言うと九条がその手を掴み止める。
「あなたの心は既にヒビが入っているのよ、これ以上己を酷使するべきじゃない。だって毒物が効かない弊害で薬までも効かないじゃないの、今あなたの心を治す手段は友に家族や時間よ。それに今サリンの現場に行ってあなたに出来る事はある?自分は無事でもヒーロースーツがサリンでお釈迦になるだけよ......ねぇ、あなたが人助けをしなければいけない義務は無いの、そんなに人を助けたいなら休んでほしいと思う私達の気持ちを汲んで............」
「............分かりました、思いやりに感謝します」
そう言った瞬間に九条が抱きしめた。貴音は面を食らった顔になりフリーズする。
「この温もりを忘れないで、あなたの事を大切に思う人はしっかりいるからね」
「あ、ありがとう......ございます......」
この不意打ちに照れよりも自分なんかに抱き付かせてしまわせた罪悪感が襲う。抱き返せなかった。
「じゃあ、ちょっとシャワー浴びてくるから2人は貴音がどっかに行かない様に見ておいてね」
そういうとリビングを去る。貴音は休む為に友人に電話をするも出ない、では実家に少し帰ろうと電話をするも出ず。じゃあ久しぶりに自分から祖父母に連絡でもと母方も父方も連絡したが出なかった、何度誰に電話をかけても出ないのでスマホがおかしいのかと思い家電でするも出ず頭を抱える。
「ああ〜......今通信がおかしくなっているのか?通信局が壊れたか?どうなってんだよ......もうアポ無しで実家に帰るかぁ、2人は九条さんと一緒に居てね。ボディーガード頼んだよ」
そう2人に言うと飛び立ち約10分で実家に到着するが空中から見ていると異変に気づく。
「あ......?家の扉壊れて前に落ちてる??ちょっと待って、誰の家に強盗しているのかわかってんのか?マジで勘弁してくれよ」
そう言いながら降り立ち、私服で武器無しの貴音は青狸の様に少し浮遊して足音立てずに家に入る。
(......血が、誰の血だ。............なっ覆面の男が倒れているぞ、父さんの毛針で腹を刺されて動けなくなっているのか......)
その男の胸ぐらを掴み持ち上げ覆面を剥ぎ話しかける。
「おい、この家に住んでいた人はどうした?おい起きろっ............答えろっ」
「あ、ああ!!メテオブレイカーが来ちまったっ。に、任務に失敗したから殺さ......」
そう言う途中に男の頭が後ろから破裂して貴音は肉片と血塗れになる。
「ぺっ......慈日会だな。この慈悲の無さ、この手口。襲撃したこいつ......クソ野郎とは言え使い捨てとは可哀想だな。さっき失敗と言っていたから家族は無事か............おいどうせこの男の体に盗聴器つけてんだろ?聞いているかクソ会長共?シンプルな事を一つ伝えるが絶対に俺はお前を赦さないからな、覚えておけ」
会長が誰か気づいてないフリで怒りをぶつける。近距離で浴びた返り血を吐き捨て、肉片を拭う。そして男の遺体を地面にゆっくり置く。貴音は大声で家族に呼びかける。
「おーい、私だよ!帰ってきた!大丈夫ー?」
そうすると上から物音がしたので浮遊して階段からではなく外の2階の窓から入り確認。
「慎重になりすぎたな、階段には何も仕掛けられてない............そう言えば奏音の部屋には鍵がついていたな............おっ!かかっているって事はいるのか、おい!私だ、貴音だ!襲撃した奴は勝手に頭が破裂して死んだ、もう出てきて......まさか中で殺されているんじゃあ............」
不安になった貴音は扉を殴ろうと振りかぶると同時に扉が開き前に倒れた。
「うぎゃあ!......ちょっと、返事が遅いよ。怪我は?無事そうで良かったよ」
顔を上げると家族3人が無傷で居た。
「悪いな、声なんていくらでも帰れるから疑っていたんだよ。それより血塗れだなぁ......奏音の部屋には入らないでやってくれ。リフォームに金がかかる............下はもっと酷い事になっているのか............」
「血塗れで臭いのにあんまり衝撃受けないのね、まあ良いや。警察は呼んだ?なんで私を呼ばなかったの」
そう聞くと母が答える。
「気づいたらもう覆面の男が1人リビングに居たのよ、そんな暇が無い勢いだったからお父さんがミーティアンで助かったわ......今から通報するわ」
「もうしたよ母さん。次を考えたら兄ちゃんの家にボタン一つでSOSを送れるモノとか作った方がいいね。兄ちゃんそういうの得意でしょ?」
「いやまあ出来るけど小型化とかはなぁ............待った、嫌な予感がする、そういえばこの男は目的を話した?」
「いやあ銃を直ぐに向けてきたから毛を発射して急いで上に逃げたからなぁ......」
「............そう。今考えた最悪な事態がある、ここに来る前に両方の爺ちゃんの家に電話を何度しても出なかった、友人に電話しても出なかった............つまり、私の身の回りの親しい人や身内を標的にした攻撃をされている可能性がある。爺ちゃんの家は東北だし、もう片方は関西の方だから私の飛ぶ速度では数時間かかるから見に行けない。だから警察を動かして確認をさせる、親戚もね。そして近場の友人は私自身が見に行く。ここに警察が到着して、それが本物だと分かったら飛び立つからね」
そうして血塗れの貴音は血を流したら証拠隠滅だの言われそうな為に家族の近くでずっと居た。警察が到着すると警察手帳を見てから、その名前の人物が警察に所属しているか出動しているか確認すると安心し、警察から血は落として良いと言われたので洗い適当なピチピチのシャツを着て友人達の家に飛び行く。
「速く早く疾く......友人って言ったって私は大人になっても、まだありがたいことに友人が何十人もいるから確認しきるのは骨が折れる、一部は警察に頼んだとは言え............ついた、最初は幼稚園からの付き合いの奴だ............ダメだインターホンに反応しない、だからと言って叩き割るわけにもいけないし............ん?なんか臭い?工作中にプラスチックを焦がした時みたいな臭いがする、......?」
周りをキョロキョロするもわからずとりあえず空から見ることにしたら直ぐにどこがわかる。
「け、煙がダチの家から!?は、早くっ」
そのまま貴音は屋根を突き破り中に入り一階に急いで降りた。
「おい!......熱いな............おーい!拓郎!いねぇのか!......はっ、嘘だろ......息をしてねぇ......クソックソッ............それにドアの向こうにも誰か倒れている......ああ、畜生。俺に恨みがあるなら俺にだけ挑めよクソがよ......周りはクソ熱いってのにもう冷たい、蘇生は無理か......っ!?危なっ、テメェか放火して一家を絞殺したのは」
燃える家の中で光線の不意打ちをくらいかけたが回避した貴音は、撃ってきた方を向くと全身真っ黒で機械のアーマーを身に纏っていた。
「運が悪かったな、メテオブレイカー。勝てんぜ、テメェは......」
そう言うと腕の形状を変えブレード状にすると刃が発光した。
「......それ噂のE-2かE-3だな、お前。国の秘密兵器を出すとはもう隠す気も無いか。それに私は復讐には否定的なんだが......これは仕事なんでねッ」
そう叫ぶと拳から衝撃波を放つ、家の壁が吹っ飛ぶ中で男は全く動かず効かない。そうすると男は胸からエネルギー弾を放ちながらブレードを向け走り寄る。
「くっ、加減を考えろよっ。私もビームが出せたら......」
貴音はなんとか回避したがエネルギー弾が通った後方は抉れ道が出来ていた。
「バカも休み休みに言え、ちょこまかと避けやがって」
男が貴音の逃げの姿勢に腹が立っている中で、貴音がビームについて考えていると腕に黒い電気が流れるエフェクトが出る。
「......!!シュヴァルの電気を受けた時に身体に変化を感じたがっ......ここまで変化しているとは。喰らえっエネルギー弾ッ」
そう言うと手のひらに光り輝く黒い球体が出てくるとすごい速度で男に向けて発射、それに対抗する為に胸の中心部からのエネルギー弾を発射するも押し負けて家を貫通して外の道路に吹っ飛び転がる。
「ぐおおおおっ!!?このアオガミはどこまで進化すると言うのだ、データにはこんな事が出来るなんて無かったぞっ!」
「そりゃあそうよ、今日初めて一か八か試したんだから。......シュヴァルにはあとでもっともっと撫でてあげないとな」
そう言うと右手にエネルギーを纏い男の顔面を殴り上げようとする。
「エネルギーブレードは無駄だァ!ライジングアッパーカットッ!!」
「その拳を焼き切ってやるわっ!......なっ!ぐおおおおううっ!!!............ぐふっぐあああいあいああ......」
貴音の拳に向けて刃を向けてガードをした男、だが貴音のパンチのエネルギーに反発し刃が押され、手の装甲が吹っ飛び壊れた。そのまま顎を殴り空に吹っ飛ばすと貴音は追撃に自分も空に浮き空中で殴りまくる。
「よくもッ!よくもォォオ!!!地に堕ちろクソ野郎ッ!!」
最後に踵落としを喰らわせ男は地面に叩きつけられると道路が陥没した。そして警察や消防も到着し、貴音も中の友人とその家族の遺体を運びに行こうとした途端に大爆発。貴音は何が起きたかもわからずに吹っ飛ばされ目を開けると辺り一帯が抉れ円状に最深部は5メートル近く陥没していた。
「っ!??な、なんで......なんでっ!俺はただ人を助けたいだけなのにっ......あ、あぁ......あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!!!!」
爆発は爆心地から半径50メートル近くを吹き飛ばし、辺りには焦げた肉片が落ちていた。まるで旅客機墜落事故現場の様な惨状。その肉が駆けつけた警察らの物と理解した貴音は、隕石が落ちる前より強くなったのにも関わらず、前以上な何も守れない己に絶望し叫ぶ。貴音はポニーテールのゴムも吹き飛び髪型が崩れ、服も吹き飛び胸が露出などしている上に、破片が身体に刺さり肌が変色し硬くなる程の火傷も顔などに負っているが、それよりも心が痛かったのだ。数十秒動けずにいたが立ち上がり周囲に生存者がいないか探し始める。
「クソッ落ち着け私。だから救えないんだ、周りに誰か生きていないか探さないと......」
浮遊しながら辺りを見て回るが二の腕や下半身だけ、人体のパーツが焼け焦げて落ちているだけであった。貴音に本来の人間なら広範囲の火傷な上に深度IIIという死んでいる程のダメージを与える爆弾、それをアーキアンが喰らえば即死は回避不能であった。貴音は酷い空気の中深呼吸し徐々に皮膚が再生しつつある中、暫くするとフギンが空を飛び貴音に近寄る。
「貴音っ、胸出てるよ??それに、その傷大丈夫?な、なんだこの惨状は......うぅ......おぇえええっ......う、うげぇええ......」
焼け焦げた肉の臭いに目が飛び出て火が通った頭部や身体の部品を見て吐いてしまうフギン。
「見るなっ、人になったお前には辛いだろう......すまない、倒した敵が自爆......いや、爆破されたみたいだ。少し離れよう......と言っても私も衝撃で足が変な方向に曲がってしまってな。......うがぁっ............これで向きは治ったから勝手に治る行こう」
貴音はただの人の身の頃からの歴戦のヒーロー、それ故にもっと酷い遺体を見慣れている為に大丈夫であった。だが見た目は完全に小学生、中身も子供寄りのフギンには辛かった、例の3人の部下のチンピラに殺された自衛官達よりも遥かに損傷が酷い遺体ばかりなのだから。
2人はなんとか爆心地から離れ新しく来た警察に報告をした。そうすると今東京都で同様の殺人放火事件が起きている事を聞かされた貴音。絶望の海に呑まれ狂いそうになるが、まだ間に合う筈だと少しの希望で再度立ち上がり着替えずにフギンと共に火災騒ぎが起きてない地域に一人暮らししている友人の一軒家に向かう。
「その友人はどこに?まだ無事なのだろうか......あと片方の胸が出たままだよ」
空を飛ぶ中フギンは貴音に聞く。
「名前は犬貝人だ。あいつは私と同い年だってのにもう持ち家がある、だが比較的安い家......と言ってもバカクソ高いがそれを現金一括で買った為に東京の外れにいる。命1番だが火をつけられていないなら家も守ってやりたい......あと私の胸なんてどうでも良い、着替える時間すら惜しい」
「敵が居ても私の火球は極力控えましょうかね、これでも九条さんに格闘技を教わったからね」
「頼りにしている............ふぅ、燃えては無いか。だが、電話も出なかったからなぁ......それもその時間からだいぶ経っている......インターホンは押さずドアを開けるぞ」
そういうと手を伸ばし引くと開いてしまった。
「......チッ、フギンは空から見張っていて。私は中に入る」
「うん、自分の身を1番にね」
そういうと羽ばたいていく。貴音は最悪の事態を備え無言で音も立てず入る。
(こいつの家は何度も来たし泊まった事もあるから部屋は把握している。......よく俺らは負け犬同士だと小学の高学年くらいの時から言い合っていたな、まあ今は互いに脱負け犬はしていると思うが............)
昔を思い出しながら一階を全て見たが血痕も物の乱れも無かった為に2階に上がる。
(平家じゃないってすごいよな、2階は趣味の部屋だとか言っていたが......ここは寝室か。私はリビングで寝たからなぁ。なら趣味の部屋はこっちか、ここに居てもらわないと困るぞ......)
そう思いながらドアノブを掴み下げるが下がらない。
「鍵か、ならいるのだろう?犬!悪いが勝手に上がったぞ、緊急事態でな!......おーい?」
(......返事が無い、いないのか?弁償しても良いし壊すか?)
そう考えドアノブだけ破壊して侵入するもいない。だが何故か窓が割れていた。
「っ!?フギンに見張らせていた事を考えると私達が到着前にかっ」
そう言いながら自分も窓から降り立つと庭の土に足跡と塀に泥がついているのを見た。
「フギーン!犬は襲撃から逃げているっ!痕跡がある!私は追うからそっちは警察に通報するのと家を守ってくれぇえ!」
そう言うと返事を待たずに浮遊し泥の足跡を追うが途中で無くなる。
「......街中で逃げ回るって事はEシリーズを装備した奴では無く、実家に来たアーキアンなのかミーティアンなのかわからん普通の見た目の人って事だよな?............ここ、人通りは少ない方だけども無人って訳じゃない、なのに騒ぎにならんのか?」
疑問に思いつつも付近の人の目を隠せそうな場所を探すと、たまに街中にある所有者がいるのかすらよくわからない林を発見し降り立つと中から揉めている声が聞こえた。その声は聞き馴染みがあった。
「焦るな私。黙って浮遊して迅速に排除を」
そう呟き声の方に行くと貴音の友人と男が掴み合いをしていた。足元にはエネルギーブレードっぽいモノが落ちていた為に敵である事は明白、貴音は躊躇い無く男を殴り上げてから掴み空に飛ぶ。
「ひっひひぃ......」
怯える男に貴音は片手でスマホのメモ帳に私とでは無く先程の男と戦っているフリをしろと書き見せた。
「......?っ!この野郎っ!......さっきは............」
男は意図を察して演技で誤魔化しつつ貴音はまたメモを見せた。貴方に自爆装置が入っていて盗聴されているなら私の顔を殴れと、男は見た瞬間に殴ってきた。殴らせた理由は誤魔化しに臨場感を足す為、友を殺そうとした人間とは言え同情故にこいつを殺したく無い為であった。再度自爆装置がどこにあるか罵倒を止めずジェスチャーで答えろとメモを見せると首の後ろを必死に指差す為に男を持ち替えて首の裏を見ると変な装置があった。だが幸いにも貴音は機械に詳しい、仕組みの大体を理解すると高速で引き剥がし自分の拳の中だけで爆発を収めると男は泣いて喜んでいた。その様子から大丈夫と判断し地に降ろしたら犬が殴りかかってきたので抑えて事情を説明した。あとドアノブをぶち壊した事も。
「かじ......俺の家のドアノブ壊したのかよ。あと胸隠せよ............ってそれよりも、そういう事ってならお前はやりたくも無い事をやらされていた訳か?」
と犬が聞くと彼は泣きながら謝罪する。
「すみません、すみません......理由は使い捨ての鉄砲玉になのか、ヤクザにかなり前から捕まってとうとう自分の番が来てしまって襲う事に......」
「なら仕方ないな、それにしてもあんたもラッキーだったな〜。それに気にすんな、俺のダチは強えから誰彼構わず平等に困っている奴は守ってくれるだろうよっ」
笑いながら彼を許すと貴音が言う。
「まあ、そう言う事っすよ!取り敢えず安全な場所まで護衛するんで、さっきのエネルギーブレードみたいなナイフは私が頂いても良いですか?やっと仕組みを知れるチャンスなんすよ〜ちょっといつも見るのより小さいけど」
「い、いくらでもどうぞ!ほ、ほっ本当にありがとうございます......」
と貴音達より少し歳上くらいの男はまだ号泣しながら答える。その姿を見て貴音は黒幕に対しての怒りが更に募る。そして貴音は自爆装置が作動した事は奴らに知らされていると判断し表向きは男を死亡扱いで、男自体は本國のコネで安全な田舎の警察署の留置所に入れておく事に。都内であれば薬師寺とその周りの奴の息のかかった警察が即座に始末に来ると判断した為だ。なんせ3人を倒した当日に友人や身内が襲撃に遭っているからだ。犬も本國が信頼できる警察を用意し護衛する事になり、フギンと共に帰宅したボロボロの貴音。だが真っ青な顔で九条がドアを開けるなり言う。
「亡くなったか行方不明って......あなたの親戚の殆どが............あ、あと......あなたが警察に渡した友人リストも犬さん以外全員......全員こちらも亡くなったもしくは行方不明って............」
ある程度ダメなのはわかっていた、だが実質全員で身内まで自分と関わりがあると言う理由で殺された事にヒーローはその場で崩れて泣き叫ぶ気力もなく動けなくなる。
「あ......ああ、そうか。ある程度ある程度は覚悟していたけど............これじゃあまるで俺がヒーローなのが悪いみたいじゃない............もう......もう、もうッ赦せない............俺の信念は死んだ、次は俺が敵を皆死なす番だ」
そう言うと立ち上がり家を出て行こうとするがフギンとシュヴァルに本気で捕まれる。何をするか誰がみてもわかる、貴音は疑惑止まりの薬師寺とその周りの連中を皆殺しに行こうとする。
「誰が犯人か知らないけど教えてもらった人も疑惑に過ぎないのでしょ?ならば耐えるべき、シュヴァルは貴音がただの鬼になってほしくない」
「そうだよ、本國さんが色々しているんでしょう?あなたは法で裁くのかモットーなんでしょう!?ここでヒーローが死んで良い訳がないっ!」
「でもよ......私のせいでっ私がスーパーヒーローごっこなんてしたからみんな死んじゃったんだよっ。これは私の罪でもある......ならば償わなければ筋が通らない」
「ごっこでは無いし、あなたが償う必要はないわ。人を助けているのに、そのヒーローの身内や友人を殺す謂れは全くないっ。敵は本物の外道よ、あなたの心が弱っているのをわかっているから強靭な肉体ではなく心を打ち砕きに来るなんてっ......私にもあなたの悲しみを背負わせて、いつかその心のヒビを治す手助けをするから、だから突発的に行動するのはやめてっ」
全員から止められ冷静になるが、その冷静さで友人や祖父母や従兄弟達の思い出を思い出してしまい静かに涙を垂らす。
「......うぅ......だってよぉ、死んだダチのワッチーは高校で同じ剣道部だった、俺の学年はそいつと2人しかいないモンだから部長押し付けられたり大変だったけど楽しかった。あっ、あと拓郎は良い奴だったんだぜ。俺の心の病気で働けない中で遊びに誘ってくれてしかも頼んでもねぇのに頻繁に奢ってくれたりよ......なのに金は返さなくて良いって言うんだあいつ、それも気を使わせない様に出世払いでなんて言い方しやがる。でもあいつの......死に顔が脳裏にべったりくっついて離れねぇ............ああ、父方の祖父は寡黙だが優しいし工具の使い方も教えてくれたっ。母方の祖父ちゃんだって小さい頃から行きたい所を言えば海だって山だってテーマパークだって文句言わず連れて行ってくれてよぉ。祖父ちゃん、祖母ちゃん............チクショウッ!まだ4人とも平均寿命まで生きてねぇんだよ!なんで俺から大切なモノばかり奪って行くんだよぉお!!もう会えねえなんてっうぐ......ひっく............全部全部全部全部ッいきなり過ぎんだよぉおっ!!ただでさえぁ足切断してから会えてないのに......うわあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛............必ず、必ずだ薬師寺の連中をぶっ飛ばしてムショに入れてやる......うぅ..................みんなと会いたいよぉ......こんなになるなら力はいらなかった............」
2メーター超えの立派な大人が辛さに耐えきれず最初は呟く程度だが最後は隠していた黒幕の名前も叫んで玄関で蹲ってしまう。3人はかける言葉が見当たらず自分が泣いている場合ではない事はわかっていても貴音の姿を見ていると泣いてしまうのであった。その夜寝れない貴音は自室で延々と泣き続ける、3人は心配であまり眠れなかったが出動命令も無く朝を迎えた。
アメコミのヒーローが身元を隠す理由がこれです、貴音は自己顕示欲や承認欲求が強い為に身内や友を失いました。
ちなみに最後のラストの思い出を話すのはラ⚪︎ボーのラストシーンを少しオマージュした物です。




