第13話 リベンジマッチ
言うほどリベンジマッチしません。
PM8:37 爆発で荒れた道
2人は正面を見合って対峙する。緊張感を感じているのは貴音だけの様だ。
「私の肉は老いテウマくないぞ............だから生き残ってシまった」
「......前より流暢に喋るなぁ、これも豚とやらの力か?」
(老いている?年老いた故に出荷されずに飼育され続けた個体が憎しみを募らせ進化したというのか?)
「そうダ、全ての力が何倍も向上シたぞ!!雪辱をハラすッ」
そう言い放つと斧を両方とも投げ飛ばして、自身も走って貴音に向かう。
「へぇ......このサイバーパンク感ある斧もお前の手首の装置のおかげで手元に戻るとかか?ハイテクだな......ッ!?は、速いっ!うぐおおおっ......」
斧がブーメランの様に空に回り続ける事を避ける為に全てを弾き落として地面に刺す。だが想定外に牛の速度は早く腹にツノを刺され建物の壁に吹っ飛ばされた。
「ぐぅ......アニメでよく見る壁にめり込んで動けないを体感するとはっ......ハァッ!!」
壁から飛び出て浮遊する貴音。
「......3人を呼ばないと勝ち目は無いか............いや、あいつを助けるにはタイマンか......」
(クソッ!私はまだ鍛える時間がまともに取れないってのに、相手は楽々潜在能力解放でパワーアップってか?......いや、こいつの事だ鍛えたりもしただろう......)
貴音はこんなにされても牛を不憫に思い、正しい道に向かわせようとする。その為に一対一で話し合いたい。だがそれは人類にとって正しい道、本来なら牛が歩く場所では無い。
「助けルぅ?くだランプライドに溺レて死ぬぞ」
突き刺さった斧を手に戻して、上を見上げて余裕そうに言う牛。
「くだらなくないさ、お前と真剣に向き合う為だ。今からでも遅くない、私達の仲間になるべきだ。だがこれは人類に尽くせと言う意味では無い、同じく苦しんでいるミュータントを助ける為に活動するんだ、お前がセイヴァーになるんだ」
ミュータントの救世主にお前がなれと説得する貴音。
「......無駄ナ理想に綺麗ゴトばかリッ」
そう言うと跳躍だけで貴音と同じ高さまで飛び上がり、貴音を斧二つを右と左から振りハサミの様に切断しようとする。刃に触れない様にバシッと音を立てて挟んで掴み踏ん張る貴音。
「うぉおおあああ!!......綺麗事で何が悪いッ理想を語るなと誰に教わったっ。今のお前の心を縛るものを考えろッ!ハァッ!............なっ?ゆ、指が......」
貴音は斧を跳ね除けて牛の顔を蹴り上げた勢いで回転して距離を取ったが自身の指8本の指がほぼ痛みなく切断されている事に気づく。
「それは......エネルギーブレード的なやつか、本当にSFチックだったとは......こんなすんなり私の綺麗な指が取れるなんて、脚を切断された時を思い出すよ。今思えばアレもそうだったのだろうな............切断面は火傷もなく綺麗か......なんか美味そうだな」
牛の持っていた斧は本気を出していなかった。光の刃が広がり、先端は尖り、持ち手の短い戦斧の様になっていた。
「マザーが日本やアメリカの科学者を操って鹵獲しタこのヘイキは全てを断つ」
そう言うと斧の末端同士をくっつけた。
「チッ......戦うって言ったばかりなのに情けねぇ。あまりしたくなかったが......」
(指を拾わなくては......あの鋭利さを考えれば手術でくっつく筈......情けないっ......情けないが今は卑劣にお前を撃退する。対話は次の機会だ)
そう言うと親指以外無い拳で周囲の車を殴り飛ばして牛に当て始める。牛は斧を回転させながら切り刻む、だがこれが狙いだった。牛は車の構造など知らぬ故に、どこを切断したら爆発のリスクがあるかなど知らなかった。エンジンをかけたまま運転手が逃げた車のガソリンタンクやエンジンを切断し、火花が散り爆発する牛。身体は炸裂した破片が刺さり、更には炎上し苦しみ暴れる。
「ウモぉ゛お゛お!!!!」
パニックになった牛は周囲の物を乱暴に破壊して貴音がいた方向に、記憶を頼りに近づいて行く中で貴音は自分の落ちた指を探し回る。
(なんか良い匂い............んな場合では無い......声を出せば位置がバレる......クソッ見つからねぇ。夜にコンタクト落とした人はこう言う気分なんだろうなッ)
そう言いながら親指だけで5本拾ったところで牛が暴れて砕いた何かの破片が高速で飛んできて肩に刺さる。
「う゛ぐわぁっ......し、しまったっ」
「ソコぉッ!!!」
牛はそう叫ぶと武器を横に回転させて投げた。それを映画マトリックスの様に身体を逸らして避けると近くにあった看板を牛の頭目掛けて蹴り飛ばしてぶち当たり粉々になる。揺らいで膝をついた為に武器を上手く回収出来ず牛の後方に飛んで落ちて行った。
「うごおおおお......斧を......」
「させるかっ」
浮遊し空中で高速回転踵落としで手首の装置を破壊。距離を取ると瓦礫の山に隠れながら指をまた探し始める。運が良く8本全て見つけたがそれで手が埋まってしまった。
(......この辺りの人間は全員避難しちまって持っておいてもらえねぇ......遠くでは結構前からサイレンがなっているから警察は待機している筈、あの赤のライト見えるしな......だが手渡しなんてする隙が無い......仕方ない、ヒーロースーツは解除して服のポケットに入れるか......)
多少防御力のあったスーツを解除して指を持つ事以外選択肢の無い貴音。
「......キャストオフ」
「ナんだァ?モ〜〜降参かぁ〜?」
武器を拾わずこちらにジワジワと近づいて来る牛。
「違うねッ。こんな騒動になってんだ、俺の主義関係なく仲間はもう時期に来るっ!そして今の俺の役割はそれまでお前をここで食い止める事ッ」
そう言うと肩に刺さった金属片を抜き、また牛の顔に目掛けて投げた。
「仲間ァ?フンッ!それに芸の無い奴メ!......うおっ!??ぎぃあああ!!」
貴音が投げた破片は虚しくも牛に弾かれたが、それに注意していた牛は目前まで貴音が地面スレスレ飛行で来ている事がわからなかった。貴音は弾かれた破片をキャッチして右二の腕に突き刺し、残りの手首のデバイスも捻り破壊した。
「油断させる為にずっと能無しの様に頭を狙ってんだよッ!それと!破片を急所に刺さなかった事を感謝してほしいね............っ!!!」
そう言うと急に空に逃げる貴音。
「逃げるナァ!......うぐっ!な、なんだ!??し、痺れるっ......こ、これは......」
尻に鋭い痛みを感じ振り返ると音も無く近づいていたシュヴァルが居た。
「何、シュヴァルの主人をイジメてんだッ。フギンやっちまえ!」
シュヴァルはそのままケツを蹴り飛ばして、その勢いで付近から離れた瞬間、空から巨大な火球を飛ばそうと待機中のフギンがいた。
「爆ぜろっ鴉式爆裂弾!!」
約2メートルの火球を口から何発も放つフギン。その影に隠れて牛に接近する。牛は近くの壊れた装甲車のドアで防ぐが数発被弾し火傷する。
「くそッぉ!今日は燃えてばか......っ!?」
鳥の足の爪を鋭く伸ばして回転しながら飛び蹴りをするフギンを目の前にした牛は反応出来ず牛の胸の肉を抉り顎を蹴り上げて、細い鳥足を掴まれない様に距離を取る彼女。
「|鴉式回転爪斬《タイプクロウ!クロウ!レボリューションアタック》ッ!!!貴音っ!大丈夫!??」
「ああ!手の指がほぼ無くなっただけだ!ありがとう2人とも!」
まともにヒーローをしている時はスイッチが切り替わり覚悟ガンギマリ状態になる貴音。
それを聞き2人は大丈夫の基準がおかしいだろうと思いつつ、それを言おうとすると女の叫び声が後方から聞こえる。
「クソ牛がァ!!ふざけんじゃねぇわよッ!!よくもっ相棒の指をッ!!!これじゃあっ私と手が繋げないじゃないのッ!!」
そう言うと牛に向かって1人で走り出す、貴音は空から焦る様にやめる様に言う。
「や、やめろ!九条さんでは......」
「はっ!あの時のオンナァ!わざわざ殺されニキタかぁ!!屠殺再開ッ!最初の1匹目シィネぇぇえ!!!!」
牛の目の前に彼女が行くと奴は前と同じく拳を合わせて振り翳す。貴音は急いで空から降りようとするが今回の彼女は一味違った。右腕から丸いホログラムの様な盾を出して攻撃を完全に防いだ、それも衝撃までも伝わらず完封。
「私には新しい武器があるのよッ!吹っ飛べっ!!」
そのホログラムの様な盾は巨大化し前に突き出て牛を転ばす。
「ウがああっ!これは......マザーが鹵獲した装備に近いのがあるぞッ!クそっ体内にウめ込むのが怖くテ止メたが............」
「すげー......その盾の形モロにキャプテンアメ......」
「うモオオォアア゛ア゛!!!!」
そう感心して呟いていると牛が雄叫びを上げ、筋肉を膨張させ走り始めた。
「逃げ......違うっ!シュヴァル!その斧を奴に渡すな!!」
前と同じく敗走するのかと思った貴音だが、逃げるにしては明確にどこかに向かっている事に気づき、足が速いシュヴァルに声をかけた。
「にゃぁっ!!......重っ!奪ったにゃ〜これでボコす!クジョーさんは自衛隊だかなんだかに戦車とか借りて来てっ!貴音は指を繋げれるタイムリミットを考えて引いて、フギンは貴音を逃すのを手伝って!ここは全てをシュヴァルにっ」
そう言うと斧を2つに戻して、自分の身長よりある斧を装備して威嚇の様に振り回す。貴音の不殺主義を守りエネルギーブレードはオフにして。
「......すまないっ。多分、私の再生能力を考えればすぐに繋がるはず。戦線離脱するッ。シュヴァル!こいつには遠慮なく実弾を使えぇっ............って装備着て来てないじゃないかっ!!」
「それ以上喋らないで!もう貴音にはあまり力が残ってない!私が抱いて運ぶから!あと装備は急ぎすぎて......」
そう言うとフギンに掴まれて飛んで行く貴音。牛は瓦礫を何個も投げて墜落させようとするが、その全てをフギンの小型高速火球によって撃ち落とされた。
「せ、戦車は無理かもしれないけど、こいつに有効的な武器を借りて来るわっ」
九条もノーヘルでバイクに跨り戦線離脱。
「ぐぎぎぃぃ〜!!ガキ1匹何が出来るッ!」
今度はシュヴァルの方に瓦礫を投げるが全て斧で破壊すると一言言う。
「愚鈍」
ただ一言呟くだけ。勇ましく巨大な斧を構える彼女であった。
スパッと切れた傷は痛くないんですよね、ちなみに指の話は少し経験談でもあります。流石に切れ落ちてませんが。




