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ろくわ!

短めです。

なんとかネネたち三人を起こすことができたわ。よく見れば傷だらけで、髪も砂まみれで、すっかり戦い疲れてる感じ。でも、私を見るなり開口一番こう言ったのよ。


「ルーネ、いたのか。忘れてたな」

「ってことじゃないわ。ルーネは大切だから、安全な場所に隔離しておくのが良いと思ったの」

「です……」


……うん。ちょっとは許してあげなくもないわよ。ちょっとだけね。ほんのちょっと。ちょっとすぎて見えないレベルだけど。本気で忘れてたってことよね。だって、絶対ネネの言ったことは嘘よ。


「ま、ありがと」


私が許したということを知らせる意味もこめてそう言ったのよ。その瞬間だった。


「アイムバック!」


また来た、小人ちゃん。いや、来るの早すぎね。クレブの言葉に従ったとしたら、もうグラウンド百周が終わったってことだもんね! そもそもグラウンドってどこよ! 探すとこから始めたわけ?


「ウェアイズクレブ!」


そして小人ちゃん、また勝手に暴れ始めたのよ。小人ちゃんの周りの地面、ひび割れまくり。地鳴りと共に地面がブクブク盛り上がるし、パワーが桁違い。これが超自然的な力ってわけね。おお怖い。


けど、ネネたちは絡むのよね。勇敢というより縄張り意識の塊って感じで。


「やめろっ!」

「ここは私たちの縄張りなのよ」

「です……」


当然のように小人ちゃんはブチ切れた。


「アイヘイトモンキーズ!」


ネネたちと小人ちゃんの戦争が、ここに開戦したわ。私はというと、傍観してるつもりだったけど……うーん、どうしよう。だって、小人ちゃんが私を穴に落としたんだし。でもネネたちも私を放置してたし。悩ましいわね。


「あっ」


その時、小人ちゃんがネネたちに突進――したかと思えば、もうネネたちが消えてた。え、瞬間移動!? 違う違う、見えないだけ!?


次の瞬間、ネネが小人ちゃんの背後に現れて――


「ベー!」


避けたわ、小人ちゃん! しかも挑発のように舌を出して! で、また二人とも消えた! 高速すぎてまったく目で追えないわ。


ドドドド、ババババ、ズドドド――効果音だけ派手に鳴り響いて、私だけ置いてけぼりよ。いや、効果音とかいいから。いらないから。あと、攻撃の余波なのかしら。風圧がすごいわ。


「つか、私を仲間外れにすんな!」


叫んでみたけど、空気を切るだけだった。返事なんてなかった。ええ、完全無視よ。惨めすぎる。


……もういい。私はどっちの味方もしない。両方、成敗してやる!


とはいえ、私ができるのってせいぜい風を集めて……そう、風力を電力に変換して、それで感電させる! 完璧! 問題は発電機がないことね。それ、詰んでない?


いや、発電機を買いに行こう!




「発電機ってどこで売ってるのよ……!」


もう5件目のスーパーだけど、どこにも売っていないわ。どこにあるんだろ……。


「発電機でございますか?」


すると、定員さんが声をかけてくれた。急いで頷く。


「ええ、このスーパーにもないのね」

「そうですね、スーパーには……。ホームセンターに行かれたらどうでしょうか」

「ほーむせんたー?」


未知の単語ね。首を傾げるしかないわ。


「ホームセンターというのは、主に住宅設備や生活用品に関わる商品を販売する店でございます。よろしければご案内いたしましょうか?」

「ええ、お願いするわ」


断るわけがないわ。店員さんはやさしく、()()()()()()()までの道を教えてくれたのよ。


「こちらでございます」

「ありがと。えっと、発電機コーナー? そんなのないわ……」

「――よろしければ、発電機のある場所までご案内いたしましょうか?」

「ええ、お願いするわ」


断るわけがないわ。店員さんは私がほしいものを聞き取りながら、きちんと風力発電機のところまで案内してくれたのよ。


「風力発電機って売ってるんだ……」


6件目にしてやっと見つけたわ。風力発電機をっ! 堂々と「個人宅でも設置できる」「屋外イベントに最適」とか書いてあるわね。誰が使うのよそんなもの。いや、私が使うんだけど。


「どれが一番強そうかしら。これ【火力王V(ブイ)】って書いてある。名前が一番強そう!」

「その、よろしければ商品選びのお手伝いをいたしましょうか?」

「ええ、お願いするわ」


断るわけがないわ。店員さんは私の要望を聞きながら、一番良いものを案内してくれたのよ。


「風速20m/sにまで対応。本格的なのに設置は1分で完了! ね。いいわね。これにするわ」


値札を見た私はちょっと震えたわ。


「桁、ふたつ多くない……?」


財布の中身を確認。ギリギリ足りたわ。命より重いお金が飛んでいくのね。


「よろしければお会計いたしましょうか?」

「ええ、お願いするわ」


断るわけがないわ。だって会計しないと買えないもの。店員さんは会計までその場でしてくれた。近頃の店員さんって天才ね。そして店員さんは帰っていったわ。


そして、見ちゃったの。店員さん、私があげたお金をポケットに隠してたわ。詐欺だったのかしら……。でも捕まえるなんて悠長なこと言ってられないから、ダンボールのまま担いで走り出すわ! 風車を持って、街を、全力疾走よ。


「間に合えー! 戦い続けろー!」


ていうかこれ、普通に考えてヤバいわよね? 通報されてもおかしくない光景よね? でも私は走った。だって――これしか、戦える手段がなかったから。




ついた……。もうヘトヘトだわ。額からは汗じゃなくて風が吹き出してる感じ。いや、暴風が吹いてただけなんだけど。そう、まだ戦いは続いている!


設置1分の言葉に嘘はなかったわ。すぐに発電機が回り始めてる。私はこれであいつらを全員成敗してやる!


「これなら使えるわよ!」


あとは定点に設置するだけ。でも、それがほんとに難しい。だって、立ち上がるのがやっとの風なんだもの。よし、ここを刺して――って、飛んだーっ!?


「待ってよ、発電機さんっ!」


まさに暴走よ。飛んだ風力発電機が強風の中で発電しすぎて、まさかの発火。20m/sまで耐えられるはずなんだけどなー。そして、熱をもったまま――


「ギャアッ!」


小人ちゃんに命中したわ。くっきりと見えた。それはもう見事に小人ちゃんは吹っ飛んで、炎をまといながら私の前に落ちてきたのよ。炎に焼かれてる。怖いわ。思わず後ずさっちゃったのも仕方がないわね。


「アチッ! アチッ!」


地面に倒れ、転がり回る小人ちゃん。対処方法が正解すぎる……。これで罪悪感が少ないわねっ! いやいや、私のせいじゃなくて風のせいよ。いや、違うな、買ったお店のせい。そしてあの詐欺男のせい!


とにかく、小人ちゃんは大ダメージを受けたみたいで、ついにその場にぺたんと座り込んだ。と思ったら、私の前に片膝をついたのよ。


「ソーリー! アイドロップドユーイントゥアトラップ」


謝ってる? よくわかんないけど……。敵意とか感じないし、逆に尊敬と畏怖みたいなのを感じるわ。なんかとっても嫌な予感ね。


「アイリスペクトユウ。アイオベイユー」


やっぱり敬意を感じるわ。なんで? あの発電機が私の能力だと思ってる? 私が意図してやったって思ってるの?


「――ドントキルミー、プリーズ。プリーズ……」


震えながら、土下座まで始めたわよ。額こすりつけて、なんかもう、見るに耐えないレベルの恐怖と従順っぷり。


「ほんとに意味が分からないわ」

「――ごめんなさい、殺さないでください。私はあなたに従います。私はあなたの子分になります」


……えっ、小人ちゃん、共通語話せたんだ。そうまでして私に土下座するなんて、もしかして本気で?


「私はあなたを何と呼べば良いですか?」

「え? 今までルーネって……」

「それは難しいです。私はあなたのしもべです」

「えぇ……」


困るんだけど、そういうの。急に私に従順になってさー。クレブへの忠誠はやめたのかしら。――でも、これは気持ちが良いものではあるわね。


「わかりました。では私はあなたをプリンセス・ルーネと呼びます」

「やめてっ!」

「了解しました、プリンセス・ルーネ様」


もう、わけがわからない。プリンセス・ルーネだってね。気持ちがいいものではあるわね、ほんとに。否定はしてみたものの。小人ちゃんは私の子分になったのよ。あれよあれよという間に。


勝手に震えながら、忠誠を誓って、命令まで聞いて、私に呼び名をつけて、土下座して、従って――って、もうなんなの?


「まずはグラウンド百周! それと、話し方はもとに戻しなさい」

「い、いえっさー!」


ちゃんと走って行った。しかも震えながら。……演技が上手いだけ? 本当に従ってるの? でも、まあいいわ。様子を見てやる。何にしても私の子分ということには変わりはないのよ!


「おい、あいつほんとにルーネを怖がってたよな」

「そうなのよ」

「です……」

ルーネの「成敗」とか、予想外の方向に行き過ぎ。

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