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4/11

よんわ!

短めです

7/14,記述に矛盾を見つけました。直しました。

一方そのころ、クレブくんと雪女は逃げ回っていました。二人で合流できたのは良かったのですが、お荷物こと東電がいるせいで、精鋭たちの動きに後れを取っています。


「雪女さん、もっと安全なルート選んでよ! 今、ナイフが顔をかすめたんだけど!」

「うるさい。代案も出せずに私に頼るのなら黙って私についてくるのです。それと東電、邪魔です」

「俺、拒否権なかったよね!?」


雪女はクレブくんの手を引き、東電を背負って森を駆けます。途中で東電を投げてキャッチしたり、東電を盾に使って攻撃を防いだり。けれど、ここは敵の縄張り。サルたちに地の利がある以上、追い詰められていくのは時間の問題でした。


「雪女さん、木の上には行かないの? 下から上を攻撃するのって難しいでしょ」

「……そうですね」


雪女はクレブと東電を連れて木の上へ移動します。足場は複数あり、ところどころに小屋のような施設も見えます。サルたちのアジトなので設備が充実しており、逃げるのに使いやすそうです。


「わっ!」

「やった! 灰を撒いといたら、滑って転んだぜ!」


そう、ここはサルたちのアジトです。いくつもの罠が仕掛けられています。足元の灰に足を取られ、雪女はクレブと東電を抱えたまま転落していきます。空中で東電をためらいなく投げ捨て、雪女は姿勢を立て直しました。


二人はなんとか怪我もなく立ち上がります。


「僕の頭に灰が……! 落ちるにしても、もっとやりようがあるでしょ、雪女さん!」

「ええ、ふふっ」

「なに笑ってるのよ」


雪女は、小さく含み笑いを漏らしました。東電は地面に倒れたまま、クレブくんの頭を凝視しています。彼の体を覆う氷は、落下の衝撃でも割れていません。


「クレブの頭に花が咲いてるぜ!」

「なによ、僕は神様も理解できないほどの天才だよ?」

「そういう意味じゃないんだって!」

「クレブッ! あっ――!」


そんな声とともに、空からさらなる賑やかな存在が降ってきました。ルーネです。勢いよくクレブくんに飛びつこうとしましたが、狙いは外れ、盛大に頭突きをかましてしまいます。


「いったぁ……!」


クレブくんは思わず前につんのめり、頭を押さえました。ルーネは地面に転がりながらも、ぱっと顔を上げて言います。


「でも見て! 桜の花びらよっ!」


クレブくんがふと見れば、彼の目線の高さにほんのり淡いピンクの花びらが一枚、くるくると舞っていました。クレブくんは自分の頭を撫で、その出どころを探るように指をすべらせます。


「僕の頭に、花が咲いてた?」

「そうよ! ねえ、それより私に何か感想は?」

「ない」


クレブくんは一言、あっさり言い放ちました。その無慈悲な返事に、ルーネは肩をしょんぼりと落とします。


クレブくんは花に対する興味をすぐに失い、ぱさりと頭を振って花びらを払いました。すると――その花びらたちは、ふわりと空中を舞ったあと、一カ所にまとまり始めます。


そして、次の瞬間。


「Hello!」


不意に、小さな人型が出現しました。ピンク色の肌に、花びらでできた衣をまとった、小人のような存在です。


「なにこれ! 小人ちゃん!?」


ルーネが驚いて問いかけると、小人は誇らしげに胸を張って言います。


「I made from cherry.」

「その……英語、すごく間違ってますよ」


雪女が呆れたように指摘すると、小人は「Nhh!?」と意味の分からない悲鳴をあげ、その場をばたばたと走り回り始めました。


やがて地面にぺたんと座り込むと、手で地面を掘りはじめ――あっという間に穴を掘り、その中に体を埋めます。頭だけが、ひょこっと土の上に突き出していました。


それからまた、勢いよく飛び出し、クレブくんの手のひらの上へと跳び乗ります。


「ンー! アイムチェリー! ハロー!」

「……なにこれ。何言ってるのか、全然わかんないんだけど」


クレブくんが眉をひそめると、雪女が軽く息をはいて言いました。


「さくらんぼの小人らしいですね」

「この子、私の立場を狙ってるのよ!? ダメよ、そんなのっ!」


ルーネが声を荒げたその瞬間、小人はクレブくんの手のひらから軽やかに飛び降りました。


「シャーッ!」


奇妙な叫びと同時に、ルーネの足元の地面が突然、音もなく沈み込みます。


「きゃああああっ!」


ルーネが見る間に地中へと吸い込まれ、次の瞬間にはもう、彼女の姿は見えなくなっていました。


「アイヘイトルーネ。アイムクレブース」


小人は胸を張ってそう言いますが、クレブくんは言います。


「なに言ってるの?」

「分かりません。英語が下手なのに使いたがるらしいですね。――嫌な奴です」


雪女が呆れたように答え、小人に鋭い目線を向けます。次の瞬間、冷気が走り、小人の身体は氷の中に閉じ込められていました。


「ふんっ。なんだか、この小人はとても危ない気がします」

「キーッ!」


氷の中で小人が叫び声をあげたかと思うと――バリィッ!という激しい音とともに氷が粉々に砕け、小人が雪女に飛びかかります。


「やめろ!」


クレブくんの声が飛びます。その言葉に、小人の動きがぴたりと止まりました。


「オーケー。ソーリー」


ぺこりと頭を下げたあと、彼はちょこんとクレブくんの手の上に戻りました。雪女はあんぐりと口を開けたまま、その様子を見守っていました。そして、何を思ったのか、


「……小人さん、私に謝りなさい」

「ノー!」


と小人に命令しました。小人は首を横に振って断りました。


「私の命令は聞かないのに、クレブの命令は聞くのですね」

「イエス! ビコーズ、アイムクレブース!」

「どういう意味よ!」


クレブくんは思案顔です。と、にっこりと笑顔で言いました。


「小人、僕の奴隷になれ!」

「イエス、オールウェイズ、アイティンクソー!」

「何が言いたいのですか……」


小人はクレブくんの手の上で仁王立ちして、誇らしげに言っていました。雪女のときのように断ることもありません。クレブくんはにっこりと笑います。


「僕、雪女さんを傷つけたやつなんて大嫌いなんだ。うーん、罰として……グラウンド百周! なんてね」

「イ、イェッサー!」


小人はぶるぶる震えながらもクレブくんの手から降り立ち、次の瞬間、風のような速さで走り出しました。目では追えないほどのスピードです。


「おい、あいつらを捕まえるぞ!」

「あっ、そうだった! 捕まえるぞっ!」


一部始終をずっと見て、立ち止まっていた精鋭たちは、ようやく我に返り慌てて行動を再開しました。


「とにかく捕まえるっ!」

「クレブは私が守ります」


雪女が四方に氷の壁を展開し、周囲を防ぎます。クレブくんは雪女に宣言します。


「雪女さんが戦ってくれている間に、僕はバナナを取り返してくる!」

「まっ、何を!」


クレブくんは雪女の静止も聞かずに氷の壁から出て行ってしまいました。幸い、乱戦に乗じていたことで誰にもバレてはいないようです。しかし、それは思いもよらない三人に見られていました。


「加勢に来たぜ」

「クレブが逃げ出しているのよ」

「です……」


頭たちが躊躇せずにクレブくんを攻撃します。クレブくんは雪女の作り出した氷により、氷の壁の中へと戻されました。


「やめてください。壁の外に出られれば、さすがに助けられません」

「それなら、どうやってバナナを取ればいいの?」

「この乱戦に勝つのです。戦いに勝った者が全てをもらえるのです」


クレブくんはこの言葉で手を高く上げ、「勝つぞー!」と雄たけびを上げました。そして、氷の壁から出て精鋭と激突しようとします。


「待ちなさい。武器を。」

「ありがとっ」


雪女が即席で作った雪をまとう槍を手に、クレブくんは今度こそ氷の壁から出ました。乱戦が始まります。雪女の氷と三兄妹率いる軍団の激突です。――けれど、決着は早くつきました。多勢に無勢、雪女はついに力を使い果たし、氷を生み出せなくなってしまったのです。




クレブくんと東電は、それぞれ精鋭が二人掛かりで拘束しています。雪女は二人の精鋭と姉頭の三人がかりで拘束されています。


「お前らが俺らに勝てると思うな」

「東電という二重スパイがいた? だから何だって話なの」

「です……」

「え、俺、こいつらのスパイじゃねぇし!」


クレブと雪女はこそこそと話し合います。


「東電を人質にしようよ」

「今さらです……。仕方ありません、彼のエネルギーを借りて脱出しましょう」

「や、聞こえてるんで。」

「痛っ!」


クレブくんは蹴られました。そして、東電と二人の距離を遠くされてしまいます。


「申し訳っ、ありませんね! クレブ、私に力を!」

「えぇ……。分かった、いいよ」


雪女は決死の覚悟で精鋭たちの拘束を振り払い、クレブくんに触れます。


「うわ、なんか元気が……」

「黙って。舌を噛みますよ」

「おい、何してやがる!」


精鋭たちは雪女につかみかかり――次の瞬間、轟音とともに雪の嵐が巻き起こりました。アジト全体を吹き飛ばすほどの暴風です。精鋭たちは吹き飛ばされ、クレブ、雪女、東電の三人は、その風に乗って空へと舞い上がりました。


「わっ、高いよ!? これ、雲の上!?」

「おい、落ちたらどうなるんだよ」

「知りません!」


クレブと東電は思わず雪女を二度見します。東電の顔はすっかり青ざめていました。


「どうせ捕まるなら、降り方考えてる余裕なんてありません」

「俺は捕まってくれたほうが気が楽だったのに……」

「え、つまり僕たち、今すごく危ない!?」


雪女は静かに言いました。


「ここから自由落下です」

「やった! 僕、いつか空飛んでみたかったんだ」

「落下だけどなっ」


軽口を叩いているように見えますが、皆、目を開けていられません。風圧が容赦なく押し寄せ、地面ははるか下。距離は千メートルを超えていました。


「この感じなら、地面に着くまで時間はありますね」

「空気圧でつぶれそう」

「いやもう、途中で死ぬって!」


雪女は二人に手を伸ばします。


「力、もらって良いでしょうか」

「もう、あげたよね」

「生命維持に必要最低限以外すべてを、です」

「そうしないと死ぬんだったら、いいぜ」

「僕も別にいいけど。」


雪女は二人にふれて力を吸収します。氷と雪の力を最大限に引き出し、伸縮性のあるパラシュートを三人分、空中で生成しました。


「これで……」


その直後、三人は意識を失いました。力を使い果たした代償は、あまりにも大きかったのです。

氷と雪でパラシュートをつくる? 方法が知りたい。

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