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97.威嚇の理由



「レイラ……?」


私がジェイドに声をかけたのち、彼は理解しきれないと言わんばかりの表情を向けて来た。


それもそうだろう、目の前にいるのは猛獣で――いつ何が起きてもおかしくない状況なのだ。


だから私はジェイドを見つめながら、口を開いて。


「もちろん、今の状況で――悠長なことをできないのは知っているわ。けれど、目の前の……ノエルの妖精を制圧するべきではないと思っているの」

「だが……」

「私の目には――ノエルの妖精が、ノエルを守ろうと……こちらを威嚇しているように見えるわ」

「……確かにそうなのかもしれないが――レイヴンの話では、洗脳されているということだった。今、現時点で……こちらに襲い掛かろうとしている可能性だってあるだろう?」

「それは……」


私は今一度、目の前で唸り声を出すライオンに目を向ける。


ジェイドが言う通り、黒いライオンが洗脳されていて――今のように実体を伴って威嚇している可能性はある。そう、あるのだが――。


「でも……そうしたら――なぜ、未だに……私たちを襲ってこないのかしら? ジェイドの妖精の力を出して、相手を驚かしているとしても……」

「!」

「こちらをじっと――観察し続けているように思うの。洗脳されたら、こうまでも妖精の行動って掌握できるものなの?」

「いや……側に洗脳したものがいるのなら――自由自在に行動させられるのかもしれないが……ここに母上はいない」


ジェイドは私の話を聞いて、思案するような表情になった。


そしてレイヴンに、顔を向けて。


「もし――洗脳状態なら、妖精は本能のままに動くのか?」

「! ええ、そうよ!」


ジェイドから出た言葉に、レイヴンはハッと――すぐに返事をしてから。


「そう、そうよ……洗脳状態のまま今、ここにいるのなら――間違いなく……無理やり自分を引きずり出したアタシたちに攻撃をしかけてきたはずだわ。だって、妖精の感情よりも――本能に従ってしまうから……」

「それは、つまり……」

「ノエルの妖精は、まだ――洗脳状態ではないわ!」


レイヴンはそう結論を告げた。

その内容を聞いた私は――自分の感覚に、少しだけ安心を感じた。


(でもまだ、状況は変わっていないわ。ここからジェイドを説得しないと……)


依然として、ジェイドは目の前のライオンの動きを止めるために――自身の妖精の力を手で出している。


その影響で目の前のライオンは、威嚇をしているのみにとどまっているのだが……。


「レイラ……お前は、今から何をするつもりだ?」

「まず、ジェイド……手に纏わせている妖精の力をなくしてほしいの」

「! だがそれは――」

「危険ということはもちろん分かっているわ。けれど、先ほど閣下が言った通り――ノエルの妖精は正気を保っているの」


私がそう言うと、ジェイドは眉間に力を入れていた。


そんな彼を見つめながら、私はさらに口を開いて。


「だからまずは、私たちが敵じゃないことを――目の前の妖精に伝えるべきだと、私は思うわ」

「……」

「もちろん。あなたの懸念は分かるわ。でも……あなたの妖精や閣下の妖精を見て――私は妖精にも相手を想う感情が、あるように思っているの」


確かに妖精は言葉が通じない、スピリチュアルな存在だ。


けれど、私が出会った……子犬ちゃんや、子ライオン――そして、レイヴンの鳥の妖精のことを思うと、ただの本能だけではない、彼らには気持ちがあるのだと感じた。


(特に子犬ちゃんなんて、喜怒哀楽がはっきりと出ていたわ)


最初は狭い穴から身体がでなくて、悲し気にしていたし……ジェイドと共にいる時に会ったら、活発に走り回ったり――ジェイドに不満を伝えていたり。


そうした姿を見てきたから……今まさに、目の前のライオンも同じく――ノエルを想っての行動をしているのでは、と感じるのだ。


(それに、今もなお――心配しているならなおさら、私たちと牽制しあうのではなく……この子は……)


ライオンと同じく――ノエルを心配する私だって、同じ気持ちだからこそ。


「ジェイド、どうか――力をおさめてくれないかしら」

「……」

「全責任は私にあるから、あなたは……」

「側にいる」

「え?」


ジェイドに危険が降りかかるのは本意ではないので、彼には安全なところにいてもらおうと――。


そう言おうとしたら……彼が先に言葉を紡いで。


「決して――お前だけの責任にはしない」


真っ直ぐと私を見つめながら――彼はそう話した。




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