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92.方法



「ほう……原因とはなんだ?」


レイヴンの言葉に、ジェイドは促すように言葉を返した。


するとレイヴンは――難しそうな顔になってから。


「ノエルの妖精が、無理やり――洗脳されているの」

「せん……のう?」

「ええ。普通は他者の妖精をどうにかするなんてこと――不可能なのに……。アタシが、今……自分の妖精の力を使って診たら……ずっとノエルの身体の中で、ノエルを妨げるように暴走しているみたいなの」


レイヴンから言われた言葉に、私は理解が追い付かず――オウム返しのように言葉を口にしていた。


「今すぐに、ノエルがどうにかはならないけれど……時間の問題ね――徐々に妖精の暴走によって、身体が蝕まれているようだから……」


そしてレイヴンから聞いた――ノエルの状況を聞いて、ますます一般的な知識からは離れた……妖精の状況について、頭がいっぱいになる。


(妖精が洗脳されるってどういうことかしら……? そもそも、閣下が妖精の力で――ノエルを診たって……)


困惑しているのが顔に出ていたのか。

ジェイドが、説明をするように。


「レイヴンの妖精の力は――公爵家由来の特殊な力を持っているんだ。相手の妖精を、色やオーラで見分けることができる」

「!」

「ゆえに――妖精の状態こそ、その加護を受けている本人の状態に等しいから……あいつに不安や焦りは筒抜けだし……妖精による身体の異常にも、詳しいんだ」


ジェイドの言葉を聞いて私は――あらためてレイヴンの力を知ることができた。


もちろん、OLとして生きていた前世では……曖昧な知識でレイヴンの妖精の力のことは分かっているつもりではあったが――。


(ジェイドのおかげで、だいぶ――彼の力のことがよく分かったわ)


ジェイドが教えてくれたことに、私が「ありがとう」とお礼を言っていると。


「アタシは今……夢を見ているのかしら――ジェイドがこんなにも親切だなんて……」

「……文句があるのか?」

「まさか~そんなことないわよぉ」


レイヴンはジェイドに軽快にそう言葉を紡いでいた。

その内容に、ジェイドは不服そうな態度をとっていたが――レイヴンは相変わらず、しげしげとジェイドを見つめていた。


「まぁ……唯一の救いは医者も言っていた通り、身体の風邪ではないから……妖精の異常を止めてあげられたら……ノエルは治るわ」

「!」

「私の力で――妖精をノエルから引きはがすことはできるけれど……」

「けれど……?」


レイヴンの言葉を聞いて私は、ピクッと身体が反応していた。


だってノエルが今の状態から治る可能性があるのなら――すぐにでも助けてあげたい。


しかしレイヴンは少し言いにくそうにしている様子から、私は少し不安になってしまう。


「……引きはがすだけなのよ」

「……え?」

「引きはがした後は――また妖精がノエルの方へ戻ろうとするのなら……私に止める手段はないわ」


レイヴンは暗い顔で、そう話した。

つまりは、現在――ノエルの妖精が、力が暴走していて……ノエルの身体に悪い作用を起こしている状態で……。


その妖精を、ノエルから引きはがして距離を作ることで――少しでも身体の快癒につなげようとしている……ということなのだろう。


「いつもの剣の稽古で――妖精の力を借りながら、互いに妖精を出す状態であれば……私の力でやりようはあったかもしれないけれど……それは無理ね」


レイヴンが苦しそうにノエルを見つめる。

今は、ノエルがベッドの上で寝込んでしまっている状態ゆえに――きっとレイヴンができそうな方法はできない……というわけなのだろう。


「一番はノエルの妖精に、黒い靄っぽい……洗脳の力が働いているから……それさえ取ってあげられたら、良いのだけれど」

「え?」

「でもそんなのは現実的ではないわよね……剣の稽古とかで妖精の力を使い切って、悪い源を失くす方法しか――今のところ……アタシには思いつかないわ」


レイヴンは悲し気に、ノエルを見つめる中。

私はレイヴンの言葉にひっかかりを覚える。


(黒い靄っぽいものを……取ってあげれば、どうにかなる……?)


妖精にどんなものが付いているかは――まだ見えていないが。


もしそれを触って取ることで、どうにかなるのなら……。

私は、ジェイド曰く――妖精に触ることができるからこそ。


やろうと思っていることを思い浮かべて――私はジェイドの方を見た。


すると彼は私の視線に気づいて、こちらを見やってきて。


「……何か考えがあるのか?」

「ええ……その……妖精に関わることについて」


私がそう言うと――きっと彼にも、「私が妖精を触る事実」を話そうとしていることに気が付いたのだろう。ジェイドは、目を見開いてから……少し逡巡して。


「レイヴンになら、言ってもいいと――俺は思う」

「!」

「それに……お前の考えを知らずして、否定はしたくない」


彼からそう言われて、私は――。


「ありがとう……ジェイド」


こうして私のやろうとすることに、彼なりに言葉を言ってくれたことに――胸の中でポカポカと温かい気持ちが生まれた。


そして、ジェイドの言葉に背中を押されて――。


「閣下……相談したいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「え? あらたまって……なんでしょうか、王妃様」

「その……私は妖精に触れることができるのですが――それなら、ノエルを助けることが可能そうでしょうか……?」


私がそう話すと――レイヴンは目を大きく見開いて。


「よ、妖精が触れる……っ!? 他者の妖精が触れるってこと……!?」


驚きの声を上げるのだった。




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