77.言葉の意味
ジェイドからの言葉を聞いた私は、キョトンとしてしまっていた。
だって、はじめに聞いた瞬間から。
彼の言葉の意味が……分かりきれなくて。
どうしてそういうのだと、彼を見つめれば。
ジェイドは、私を見つめながら。
「もとは……お前から、変化したのだと言われて、強引に納得していた」
「……」
「だが――お前の行動をみるうちに、過去のことなど些細なように思えてきたんだ」
「え?」
私が思わず――そう声を上げれば。
彼は私をみて面白そうに、くすっと笑ってから。
「あまりにも、お前は過去と違いすぎる」
「……」
「だから、そんな過去と比較したところで何がどう変わったなんて……キリがない」
そう話してから、彼は一歩ずつこちらへ近づいてくる。
「それよりも、今のお前から……俺は目が離せなかった」
「!」
「だから、俺にとっては過去よりも……今を大切にしようと思ったんだ」
そして私の目の前に来たジェイドは、私の髪を掬って持ち上げた。
「それでは答えになってないか?」
「……それは……」
「確かに、たまには……過去のお前の行動を思い出して、話あげてしまうが……だからと言って、別に追及したいわけではない」
私の髪を確かめるように、彼は手の中でくるくるとしてから、親指のはらでゆっくり――触れた。
彼の言葉を聞いて、私は何も言い返せなかった。そこまで、彼が私に思ってくれていたこと。
それに、こんなに寛容に言われてしまうなんて……。
(本当に……本当にそれで……)
彼の言葉を聞いて、どうしてもーー。
「私があなたに……言えないことがあっても、それでも、今の状況に問題がないの?」
そう聞かずには……いられなかった。
「ほう……?」
私がそう言うと、彼は私の髪に触れていない片方の手で、自身の顎に持っていき。
考えている様子だった。
無言で考える彼に、私は――聞いたことを後悔はしなかった。
(だってジェイドは……私に、言いにくい秘密を言ってくれた。それなのに私は……)
荒唐無稽すぎて、説明できないことを……彼に言うことが怖くて、言えていない。
そんなのは、フェアではないはずだ。
家族の関係を築きたいと――そう言ったのに、私は彼に言えないことがあるままなんて……。
そう私が思っていれば。
ジェイドはおもむろに口を開いて。
「それは、浮気や不貞に関わることか?」
「え? いえ……」
「人を害そうとする犯罪に関わることか?」
「そんなことでは……!」
そう私が答えると、ジェイドは優しく微笑んで。
「なら、構わない」
「え?」
「今の……ノエルに親バカで、俺にも……おせっかいなお前が……まぶしくて」
そう言葉を紡いでから、ジェイドは続けて。
「大切だと……そばにいて欲しいと思うから」
「……!」
「何も問題はない」
そうはっきりと、彼は言った。
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